出版社で働くデジタル事業・オンライン事業にかかわる人は会社全体でみるとかなり少数派なのではないでしょうか。
誰もが知る有名企業なら大規模な組織となっていることも多いですが、中堅出版社などではいまだにひとりマーケター体制であったり、オンライン・デジタル部門を営業部と兼務しているケースも珍しくありません。
今回はそんな出版社で働くマーケターのためにメルマガ運用の重要性と活用法をまとめました。
業界特有のビジネスモデルにも触れているので、新入社員や業界に新しく転職してきた人も是非読んでみてください。
目次
出版社のビジネスの特徴
メルマガ活用術の前に、まずは出版社特有のビジネスモデルと収益構造について紹介します。
利益率が低い
出版ビジネスは分業かつ薄利多売ビジネスなので原価率が高く、利益率が低いことが特徴です。
まず日本の出版業界は「出版社」「取次」「書店」の3社による分業制で成り立っています。
- 取次:7~8%
- 書店22%程度
- 出版社:70%程度
これだけ見ると「7割も出版社に入るのか」、と思ってしまいますが実際にはここから「印税(7~15%)」「印刷や製本などの原価(20~25%)」「製作人件費」などの原価が差し引かれるので、本体価格2000円の本を1冊売った場合、出版社の利益は約300円程度です。
そこからさらに広告や販促物といった販管費をかけなければならず、資金面では常に苦しい状態が続きます。
下記は主要業界の平均粗利率です。同じくくりに分類される情報通信業と比較しても粗利率がかなり低いことがわかります。
業界 | 平均粗利率 |
---|---|
全産業 | 25.44% |
建設業 | 23.14% |
製造業 | 20.31% |
情報通信業 | 47.56% |
運輸業・郵便業 | 23.33% |
卸売業 | 15.06% |
小売業 | 30.03% |
不動産業・物品賃貸業 | 45.18% |
専門・技術サービス業 | 49.40% |
宿泊業・飲食サービス業 | 63.79% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 37.93% |
その他サービス業 | 41.20% |
※中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)より
再販委託制度
また、再販委託制度という特殊な制度もあります。
- 売れ残った書籍は出版社に定価で返品されるという独特の商慣習。情報の公平性を目的に導入されている。
再販委託制は書店が利益以外の社会的意義、地域の文化振興などの役割を果たすために重要なルールです。一方で出版社がすべての販売責任を持つことになるので、出版社の利益を圧迫する原因にもなっています。
出版社の主な収益源
出版社には書籍の販売金額以外にも以下のような収益源があります。
- 書籍・雑誌の販売
- 電子書籍の販売(読み放題・オーディオブック含む)
- 雑誌(WEBメディア)の広告収入
- キャラクターのライセンス販売ビジネス(IP)
- 有料セミナーの主催
- オンライン媒体(WEBメディア)の有料会員
メインとなる書籍や雑誌の販売のほかに、その情報網やブランド力を生かした多岐にわたるマネタイズが可能なのが出版社の強みです。
これをうまく生かすためには、どこか一つでつながった顧客に別の商品を提案、購入してもらうことが不可欠です。
ステークホルダーが多い
出版社はそのビジネスモデル上、事業の規模や従業員数に対してステークホルダーが非常に多い傾向にあります。
全国に書店は約1万店舗、プレスリリース等で連絡を取り合う新聞やテレビ局といったメディア、もちろん読者の数はさらにその何倍もいます。
製作にかかわる印刷所や製本所、デザイナーなどの交流も大切ですし、もし仮に3000冊の本を出していたら単純に3000人の著者がいることになります。
また、各出版社の社員同士での交流といった横のつながりも大切になります。
これらのつながりを強く確保しておくことが、出版ビジネスの成功のカギになります。
とにかく忙しい
冒頭にも記載した通り、出版社の業務は多岐にわたる上に、マーケティングやメルマガの担当者は他業務を兼任しているケースも多いため、とにかく時間がありません。
メルマガ配信業務は主務ではない場合も多いです。
多忙を極める中、メルマガ配信にかけられる時間は長くて1日数時間程度。そんな中でメルマガの作成、配信リスト管理、振り返りと分析を行わなければなりません。
出版社におけるメルマガの活用方法
出版社が各事業領域でメルマガを活用する方法を紹介します。
toCのメールマガジン
言わずもがな、メルマガのリストが最も多いのは一般読者でしょう。読者のアドレス取得方法は以下のようなものがあります。
- イベントを開催する(申し込みフォームにアドレス入力)
- HPにメルマガ東独フォームを用意する
- 書籍にDL特典を付ける
- 読者はがきや感想投稿フォームを使う
- 雑誌の定期購読申込みフォームを使う
メルマガはエンゲージメントの高い読者に対して無料でコミュニケーションをとれる非常に貴重な施策です。
新刊情報やイベント告知など、読者の興味を引く情報はどんどん送りましょう。送りすぎはリストの減少につながるので注意が必要ですが、配信停止が新規登録を上回らない限り配信頻度は上げていいでしょう。
書店向けのニュース配信
現在、日本国内だけで毎日約200点の新刊が発売されています。
全国の書店員はそれらの中から自分のエリアや店舗に合った書籍を仕入れる必要があります。営業からの連絡なども有効ですが、それだけでは自社の情報は届きません。
新刊の案内や今週のベストセラーなど、仕入れの役に立つ情報を発信することで、展開改善や発注につながります。
対メディアのニュースリリース配信
プレスリリースやニュースレターなどで、とにかく新規の情報を送り続けましょう。
メディア担当者にはとにかく大量の情報が毎日のように届くので、1通のメールを送っただけでは開封すらしてもらえません。
個別最適化されたメールが送れれば一番ですが、時間がなければ一斉送信でも構わないので、とにかく情報提供をし続けましょう。
参考記事:アーンドメディアとは?オウンドメディア・ペイドメディアとの違いや関係、効果的な活用法まで徹底解説
広告媒体として活用する
メルマガは、読者層を絞った広告配信が可能なため、効果的な広告媒体としても活用できます。特に出版社はその事業規模に対してとてつもなく多いステークホルダーの数を保有しているため、広告媒体としての価値が高いです。
メルマガは、出版社にとって、新たな収益源となる可能性を秘めた広告媒体であると言えるでしょう。
広告活用時の注意点
メルマガ広告を配信する際は、読者の購読意欲を損なわないよう注意が必要です。
過度な広告配信は避け、読者の興味関心に合わせた広告を配信することを心がけましょう。
アンケート調査
メルマガ読者向けのアンケートを実施することで、読者の興味関心やニーズを把握できます。
試し読みで感想を事前に集めたり、価格決定の参考に使うこともできます。また、読者のインサイトを発掘できれば書籍企画の立案にも役立ちます。
さらに踏み込んだ施策として、インタビューの募集も可能です。読者に対してインセンティブを用意してインタビューの募集をすれば、普段の読書週間や触れている媒体などのより解像度の高い情報が手に入ります。
出版社がメルマガを活用するメリット
出版社のメルマガ活用には多くのメリットがあります。
配信可能なリストが多い
出版社はそのステークホルダーの多さから、情報提供可能な「配信可能リスト」が非常に多いです。
実際、ブラストメールのユーザーの業界別リスト数を分析したところ、出版社を含むメディア業界は全業種・業界の中で3位でした。
一方で、膨大なリストであるがゆえに、メール配信システムの選定を間違えると非常に大きなコストがかかってしまうので注意しましょう。
関連記事:メルマガツールにいくらかけている?メルマガ配信に必要なシステムの料金相場と選び方を徹底解説
無料・もしくは低価格で顧客とコミュニケーションが可能
メールマガジンは一度アドレスを取得してしまえば原則無料で顧客に対して広告を配信できます。
メール配信システムは通数課金ではなくアドレス数課金のものがおすすめです。
メルマガ配信する際の注意点
メルマガの配信は出版社にとって上記のように多くのメリットをもたらしますが、活用には注意も必要です。
特定電子メール法に準拠する
「特定電子メール法」は、迷惑メール対策を目的とした法律で、商業目的のメールに適用されます。
主に以下のようなルールが定められています。
- オプトインの原則:メール配信には受信者の同意が必要です。未承諾者への配信は禁止されています。
- 送信者情報の明示:メール内に、送信者の氏名や住所、連絡先を明記する必要があります。
- 配信停止の案内:受信者が簡単に配信停止できるリンクや方法をメールに含める必要があります。
違反が発覚した場合、最大100万円の罰金が科せられることがあります。
参考記事:「特定電子メール法」とは?違法にならないためのポイントを理解しましょう!
配信停止に気を付ける
メルマガの基本は「役に立つ情報を配信する」ことです。
もちろん最終的に購入やマネタイズにつながらなければなりませんが、そのためにも読者との関係性を長期的に構築できるメールマガジンの運用は慎重に行いましょう。
「売り感」の強い配信や、明らかに広告と分かってしまうメール、単純に不要な情報だと受け取り手が判断すると「配信停止」されてしまって顧客との貴重な関係性が絶たれてしまうので注意が必要です。
出版社のメルマガ活用事例
アルク様の事例
導入のきっかけ | 費用を抑えるため、MAツールのメール配信基盤を安価なメール配信システムに置き換えようと考えた。 |
導入の決め手 | 他のメール配信システムと比較してシンプルでわかりやすい操作感で、MAツールからの移行もスムーズに行えた。 |
導入の効果 | 大規模配信を維持しながら、120万円以上費用削減できた。 |
語学教育を中心とした多岐にわたる事業を展開しているアルクさまでは、商品のプロモーションと自社メディアの更新情報のお届けにブラストメールを利用されています。
リスト数も多く週2回配信と配信頻度も高かったため、月間の配信通数が約470万通にもなっていました。その結果メール配信費用が大きな負担となっていました。
当社のように配信頻度が高い場合、アドレス数に応じた課金で通数無制限で配信できるブラストメールを導入することで、大きく費用削減ができるとわかり導入を決めました。
また、シンプルな操作画面も好評でした。
メールの件名を様々なパターンで試行錯誤し19〜20%まで改善できました。これにより、メールからのサイト流入が増加し、コンテンツ閲覧やサービス利用が促進されました。
このように現在メール配信サービスを使っている企業でも、サービスの再検討をすることでコストの削減や成果の向上が見込めるでしょう。
その際は、金額はもちろん「導入に際してサポートが充実しているか」「移行作業がスムーズに行えるか」を確認するようにしましょう。
参考記事:導入事例「アルク様」
ブラストメールには充実したサポートはもちろん、無料トライアルがあるので、操作性については実際に触ってみて試してみることが可能です。ぜひ試してみてください。
メルマガ配信にはメール配信システムがおすすめ
メルマガのような大規模なメール送信を行う際は「メール配信システム」の利用をおすすめします。ここでは、メール配信システムのメリットについて説明します。
スパムフィルタ対策が充実している
メール配信システムにはドメイン認証などセキュリティに特化した機能が備わっています。また、信頼度の高いIPアドレスを保有していることも多く、通常のメーラーで配信を行うよりも到達率が高くなります。
宛先リストの管理が容易
メール配信システムにはセグメント配信機能がついていることが多く、送信先を容易に調整できます。Gmailなどのメーラーでも可能ではありますが、誤送信等のリスクがあるので、あまりおすすめのやり方ではありません。
特に出版社のビジネスモデルでは宛先リストが多岐にわたるので「読者」「リリース」「書店」などとフラグ立てを行い、誤配信のない管理に役立ちます。
セキュリティ上のリスクを抑えられる
誤送信やCC/BCC間違いといった人的エラーから生じる情報漏洩といったリスクも最小限に抑えられます。
大量のメールを一度に効率的に送信できる
メール配信システムは多くの場合、大量送信に適したサーバーを使用しているので、一度に大量のメールを送ることができます。また、有料サービスの場合、送信通数やアドレス数に応じて料金が設定されているので、自分に合ったシステムを導入すれば、低価格で大量のメール配信が可能です。
特にブラストメールは、アドレス数に応じた料金プランなので、配信数の少ないメルマガ初心者にもお得に使えるサービスです。
配信の分析ができる
メール配信システムは多くの場合、到達率や開封率、クリック率といった指標の分析が可能です。
特にメルマガを送りたい場合、施策の効果測定は必須です。通常のメーラーを使った一斉送信ではどれだけ届いたか、何人が開封したか、といったデータが全く取れません。
メルマガを送りたい人にはメール配信システムの利用を強くお勧めします。
参考記事:メール配信システムおすすめ比較20選!専門家が図解とランキング形式で解説
メール配信システムの選び方
メール配信システムには多様なサービスがあるので、自分に合ったサービスを選ぶことが大切です。
ここでは、メール配信システムを選ぶ時のポイントについて解説します。
配信速度
見逃されがちですが、メール配信システムにおいて配信速度は最重要項目といっても過言ではありません。
サポートや機能が各社の戦略次第で変更可能なのに対し、配信速度は長年蓄積された技術に裏付けされているので、一朝一夕にまねできるものではないからです。
メール配信システムを選ぶ際はその信頼度の指標としいて必ず配信速度を確認しましょう。
特に出版社は日替わりセールや新刊情報などの速報性の高い情報を送る必要性があるので、必ず配信速度を確認しましょう。
配信先の安全性と到達率
到達率も非常に重要です。SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)といった、メールの正当性を保証するための認証プロトコルに対応していないと、メールがスパム扱いされる可能性が高くなります。
特にGmailは送信者ガイドラインもアップデートされているので、これらの対策がなされているシステムを選ぶのは必須といえるでしょう。
関連記事:【解決策】2024年2月よりGmailガイドラインが変更!1日5000件以上の配信は対応必須!
サポート体制
メールの一斉送信は個人情報を扱う非常にデリケートな領域なので、万が一の際のサポート体制は非常に重要です。特にチャットサポートや電話サポートといった、リアルタイムのサポートが提供されているか、日本語でのサポートがあるかは重要なチェックポイントになりえるでしょう。
配信規模と料金プラン
メール配信システムは、配信規模によって最適な料金プランが異なります。少量のメールであれば無料プランでも十分ですが、配信リストが増えたり、頻繁にメールを送信する場合は有料プランをお勧めします。
機能の充実度
メール配信システムには、セグメント機能や効果測定など、様々な付加機能が用意されています。必要な機能が揃っているか確認しましょう。
また、不必要な機能がついていることで、金額が高くなっているケースもあります。本当に自社で必要な機能は何かを考えたうえで、必要最低限のプランを選ぶことをおすすめします。
使いやすさ
メルマガ初心者の場合、いきなり高度なデザインの入ったメールを0から作成するのは非常に難易度が高いです。また、管理画面の見やすさも、メルマガの運用をしていく上では非常に大切です。
無料トライアルやFreeプランを提供しているサービスは、実際に使ってみることができるので、自分に合ったサービスを探すのに役立つでしょう。
メルマガ配信するならブラストメール(blastmail)
ブラストメールは、14年連続で顧客導入シェア1位を獲得している信頼性の高いメール配信システムです。さまざまな業種や官公庁でも利用されており、定番のメール配信システムとして広く知られています。
迷惑メール判定対策機能はもちろん、セグメント配信や豊富なテンプレート、HTMLメールエディタなど、メルマガに必要な基本的な機能はすべて揃っています。最も安いプランなら、月額4,000円で導入することができます。
また、配信速度が高く、到達率が非常に高い点も魅力です。
「メルマガの到達率を上げたい」「たくさん機能があっても使いこなせない」といった方にはブラストメールがおすすめです。
無料トライアルも用意されているので、まずは試してみることをお勧めします。
まとめ
メルマガは、出版社にとって読者とのコミュニケーションを深めるための強力なツールです。
一方で、配信システムの選び方を間違えると思ったような配信が行えなかったり、非常に高額になってしまう可能性もあります。
金額感や必要なスペックを鑑みて、最も適しためーえる配信システムをえらびましょう。
読者ニーズに合わせたコンテンツ配信や、アンケート機能の活用を通じて、効果的なメルマガ運用を目指しましょう。