
ビジネスメールの書き出しは相手に与える印象を左右する重要な要素です。「いつもお世話になっております」という定番の挨拶は便利ですが、「初めての相手にもこれで良いのか?」「お詫びのメールの書き出しは?」「社内メールでも使うべき?」など、TPOに合わせた表現に迷う場面も多いのではないでしょうか。
書き出しでつまずいてしまい、メール作成に時間がかかってしまうこともあるかもしれません。この記事では、ビジネスメールの書き出しにおける基本ルールから、社外・社内、相手との関係性、さまざまなシチュエーション別に、そのまま使えるフレーズ集までを網羅的に解説します。
ビジネスメールの書き出しの構成とマナー
始めにビジネスメールの書き出しの構成とマナーについて解説します。以下の構成と順序に則れば失礼のないメールを作成することができます。
書き出しの拝啓・敬具は省略
ビジネスメールの書き出しでは、拝啓や敬具は省略するのが通例です。メールの場合、用件を相手に分かりやすく伝えることが重要なので、周りくどい表現はなるべく避ける方が良しとされています。
拝啓・敬具を使わない代わりに、「お世話になっております」や「お疲れ様です」などの簡略化した挨拶がよく使われます。
宛名を挿入する
ビジネスメールの場合、個人で使用しているアドレスとは限りません。受け取る相手に確実に伝わるように、必ず宛名を入れます。
「会社名→部署→役職名→名前」という構成が基本となります。敬称は、「様」を使用しましょう。「殿」は自分と同等または目下のものに使用されるため、使わないのが無難ですが、役職名の後であれば使用されるケースもあります。
件名
個人宛の例
本文
田中 様
山田 太郎 部長殿
株式会社鈴木商事 人事部 佐藤 太 様
件名
複数宛の例
本文
人材育成担当者各位
人材育成担当者の皆様
挨拶と自己紹介
ビジネスメールでは宛名の後に一言挨拶が入ります。以前からやり取りしている場合でも、用件が変わるごとに挨拶と自己紹介を行うのが基本とされています。
社内メールの場合は「お疲れ様です」や「おはようございます」、社外メールであれば「いつもお世話になっております」が良く使われており定型分のようになっています。
より丁寧な挨拶の例文としては以下のようなものがあります。
- 平素より大変お世話になっております。
- いつもお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。
- 平素は格別のご高配を賜り心より感謝申し上げます。
- 先日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
このように変化をつけることでより丁寧な印象になります。
書き出し以外のビジネスメールのマナーについては「社会人必見!ビジネスメールの正しいマナーと書き方を解説します」の記事で解説しています。
ビジネスメール書き出しの例文
それでは、シチュエーションごとのビジネスメールの書き出しの例文を紹介していきます。
ビジネスメールでは相手や状況によって書き出しの挨拶を臨機応変に書き分けることが大切です。これから紹介するフレーズを上手く使いこなしてくださいね。
初めて連絡する相手への書き出し
初めてメールを送る相手に「お世話になっております」は使用しません。初めてであることを認識してもらえるような書き出しが良いでしょう。
- 突然のご連絡失礼いたします。
- 突然のメールでのご連絡失礼いたします。
- 初めてご連絡を差し上げます。〇〇会社〇〇部の××と申します。
- 〇〇様からご紹介いただき、ご連絡させていただきました。
また、面識のない相手からのメールは、不信感を与える可能性があります。メールを送ることになった経緯を書くと相手も安心出来ます。
久しぶりに連絡する相手への書き出し
次に、久しぶりに連絡する場合のビジネスメールの書き出しです。
- お久しぶりです。その後いかがお過ごしでしょうか。
- 長らくご無沙汰しております。久々の連絡になり申し訳ございません。
「お久しぶりです。」はカジュアルな印象、「ご無沙汰しております。」は丁寧な印象を与えます。相手との関係性で使い分けましょう。
何度もやり取りしている相手への書き出し
相手と1日に何度もメールをやり取りすることもあるでしょう。毎回「いつもお世話になっております」とするのではなく、適切なフレーズを使いましょう。
- 度々失礼いたします。
- 何度も申し訳ございません。
- 重ねての連絡大変申し訳ございません。
- 先ほどご送付したメールに追加でご連絡です。
返信する場合の書き出し
相手からのメールに返信する際は、書き出しで返信に対するお礼を述べましょう。
「早々」や「迅速」などの言葉があると、相手にも良い印象を与えることができるでしょう。
- ご連絡いただきありがとうございます。
- 早々のご返信、誠にありがとうございます。
- 迅速なご返信、大変感謝いたします。
ビジネスメールに対する返信のマナーや例文は「ビジネスメールの返信用、マナー・例文まとめ」の記事でも詳しくまとめています。
お詫び・謝罪する場合の書き出し
謝罪メールの場合は、まず冒頭でその旨をきっちりと伝えましょう。
先に理由や経緯を長々と述べると言い訳のように受け取られかねないので、書き出しの挨拶で先に謝罪することがポイントとなります。
- この度は〇〇の件で多大なるご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
- この度は私の不手際により、ご不快・ご不便な思いをさせてしまい、心よりお詫び申し上げます。
- 先日はご来社いただいたにも関わらず、行き違いでお目にかかれず大変失礼いたしました。
強く反省するという意味の「猛省」を使うなど、状況にあったフレーズを心がけましょう。
また、謝罪メールの場合は、内容以上にメールを送るまでの対応の速さが大切です。問題が起こった時には、まずは直接謝罪の電話を行い、すぐにメールでも謝罪の旨を伝えるように動きましょう。
お願い・確認をする場合の書き出し
前述したように、ビジネスメールでは対応してほしい依頼を冒頭に明示することがマナーです。始めにメール内容の大まかな概要を伝え、相手が書き出しで用件を把握できるようにしましょう。
- 先日の〇〇の件でご相談させていただきたく、ご連絡をいたしました。
- 本日は〇〇の件で確認させていただきたいことがあり、メールさせていただきました。
- 先日ご送付いただいた資料がいまだ届いておりませんので確認をお願い致します。
- 〇日にお送りいただいたお見積もりの内容に関して、確認したい点がございます。
- 先程口頭でお伝えした件につきまして、確認のためメールを差し上げております。
- 先日お送りしましたスケジュール表はご確認いただけたでしょうか。
- 〇〇プロジェクトの件で、折り入ってご相談がございます。お忙しいのは承知の上ですがよろしいでしょうか。
確認したい内容が正確に伝わるように、具体的かつ簡潔な書き出しにしましょう。
多忙な相手に問い合わせや質問をする際には、用件を明確にすることが非常に大切になります。
催促する場合の書き出し
- 〇〇の件につきまして、納期が既に一週間ほど過ぎておりますが、いかがされたものかと案じております。
- 〇〇についてのご回答をお待ちしておりますが、どのような状況かお聞かせ願えますか。
「どのように」「いかが」を使って相手の状況に探りを入れることで、遠回しに催促します。遠回しすぎると、本来の催促の意図が伝わらない可能性もあるので、具体的に聞きたい内容は明記しましょう。
電話でやり取りした後のメールの書き出し
電話した後にメールを送る際の書き出しの例文です。
- 先程は貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。
- 先ほどお電話させていただいた件につきまして、補足のご連絡です。
- 先ほどお電話いたしましたが、ご不在のようでしたのでメールにて失礼いたします。
直前の電話に対するお礼や、関連する内容であることを伝えましょう。電話で伝えても、相手が必要な情報を聞き逃している可能性もあるので、改めてメールを送り、重要事項は書面で残しておくことも大切です。
新年・年末の挨拶を含む書き出し
仕事始めの直後や仕事納めの直前には、メールの書き出しでも、年末年始の挨拶を送るのが一般的です。1年間の感謝や今後の発展を願う内容を添えましょう。
- 新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。
- 本年も変わらずよろしくお願い申し上げます。
- 貴社(〇〇様)には、本年も大変お世話になり感謝いたしております。
- 〇〇様もよいお年をお迎えくださいませ。〜さて
こうした、季節の挨拶をビジネスメールでも使うことができれば、「できるビジネスマン」として一味違う印象を相手に与えることができるかもしれません。
季節ごとに使える書き出しの挨拶や、結びの言葉の例文を以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
「返信」と「お礼」メールの書き出しのポイント
ビジネスメールでは、新規作成時だけでなく、相手からの連絡に対する「返信」や、何かをしてもらった後の「お礼」の際にも書き出しのマナーが問われます。
特に返信やお礼のメールは、相手との関係性を深め、スムーズなコミュニケーションを維持するために重要です。「いつも通り」の挨拶で良いのか、迷う場面も多いでしょう。ここでは、返信時とお礼時の具体的な書き出し方と注意点を解説します。
返信メールの基本:「お世話になっております」は毎回必要?
社外の相手への返信メールでは、基本的に「お世話になっております。」の挨拶文は毎回記載するのがビジネスマナーです。ただし、短時間のうちに何度もメールのやり取り(ラリー)が続く場合は、この限りではありません。
例えば、プロジェクトの調整などで1日に何度もやり取りする場合、毎回「お世話になっております。株式会社〇〇です。」と記載すると、かえって堅苦しく、本題が読みにくくなる可能性があります。2回目以降の返信では、「ご連絡ありがとうございます。」や「承知いたしました。」といった、本題へのクッション言葉を挨拶の代わりに使用するとスムーズです。
大切なのは相手との関係性ややり取りの頻度に応じて、形式的な挨拶と効率的なコミュニケーションのバランスを取ることです。
「取り急ぎ」の使い方と感謝の伝え方
相手から依頼や質問を受けた際、回答や対応に時間がかかるものの、まずは「メールを受け取った」ことを伝えたい場面があります。このような場合に「取り急ぎ」という言葉が使われます。
「取り急ぎ」は、「ひとまず急いで」という意味を持つため、使用には注意が必要です。「取り急ぎ」を使う際のポイントは以下の通りです。
- 「取り急ぎ御礼まで」など単体で使わない 「取り急ぎ、〇〇のご連絡まで。」「取り急ぎ、受領のご報告まで。」のように、何についての連絡なのかを明記します。
- 感謝の言葉とセットで使う 「ご連絡ありがとうございます。取り急ぎ、確認の旨ご連絡いたしました。」のように、感謝を添えると丁寧です。
- 後で正式な連絡が必要 「取り急ぎ」はあくまで「応急処置」の連絡です。「詳細は後ほど改めてご連絡いたします。」と一言添え、必ず後で正式な対応や連絡を行いましょう。
- 目上の人には使用を避ける 「取り急ぎ」は「十分な対応ができていない」という意味合いを含むため、目上の人やお客様に対しては失礼にあたる可能性があります。その場合は「まずは、御礼かたがたご挨拶まで。」「まずは、受領のご連絡を申し上げます。」といった表現を選ぶのが賢明です。
「取り急ぎ」を使う際は、スピードを優先しつつも、相手への配慮と感謝の気持ちを忘れないことが重要です。
感謝を伝えるお礼メールの書き出し例文(訪問後・会食後など)
訪問や会食、または何かサポートしてもらった際のお礼メールはできるだけ早く送ることがマナーです。書き出しで何に対する感謝なのかを明確に伝えましょう。
【訪問後・打ち合わせ後】
「本日はご多忙のところ、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。」 「本日は〇〇(サービス名など)に関して、有益なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。」
【会食後】
「昨晩は心のこもったおもてなしをいただき、誠にありがとうございました。」 「昨日は素晴らしいお席にご招待いただき、厚く御礼申し上げます。」
【サポートや対応をしてもらった後】
「この度は、〇〇の件で迅速にご対応いただき、心より感謝申し上げます。」 「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。」
お礼メールの書き出しでは、「いつ」「何について」感謝しているのかを具体的に記載することで、相手に感謝の気持ちがより深く伝わります。
チャットツールとメールの使い分け(書き出しの違い)
近年、ビジネスシーンではSlackやTeamsといったチャットツールが普及し、メールと併用されることが一般的になりました。これらはコミュニケーションの速度や形式が異なるため、書き出しのマナーも使い分ける必要があります。
メールの書き出し
「お世話になっております。株式会社〇〇です。」 「お疲れ様です。〇〇です。」 上記のように、定型的な挨拶と名乗りが必須です。メールはチャット感覚で送るべきではなく、特に社外や目上の方には、礼儀を欠いた短い文章は失礼にあたります。
チャットツールの書き出し
「お疲れ様です。」 「(相手からの連絡に対し)ありがとうございます。」 チャットは、迅速な情報共有や確認を目的としています。そのため、特に社内での頻繁なやり取りにおいては、メールのような「お世話になっております。〇〇です。」といった挨拶は省略されることがほとんどです。
ただし、初めて連絡する相手や、チャット上でも相手がお客様や目上の方である場合は、「お世話になっております。〇〇です。この度は〇〇の件で失礼いたします。」のように、メールに近い丁寧な書き出しを心がけましょう。
ツールごとの特性を理解し、相手との関係性や状況に応じて適切な書き出しを選ぶことが、現代のビジネスコミュニケーションでは求められます。
ビジネスメールを書く時の注意点
ビジネスメールを作成する際は、書き出しに注意することはもちろん、以下のポイントに注意する必要があります。
送信する前に、落ち着いて確認しましょう。
言葉遣いに注意する
ビジネスシーンですので正しい敬語を使うのは大前提です。相手に不信感を与えないようにしましょう。
誤った日本語は、それだけで相手からの信用を失いかねません。メールは書面上のやりとりとなるので、一つの間違いが大きく目立ちます。正しい敬語が使えているか、話し言葉は使用しないかチェックするように気をつけましょう。
ビジネスメールにはある程度決まったフレーズがあります。そうしたフレーズを使い慣れてくれば、素早く確実に行えるようになるので、今回紹介した例文を参考にメールを作成してみてください。
クッションフレーズを用いる
「恐れ入りますが」「ご迷惑をおかけしますが」「お手数ではございますが」など、文章を柔らかくすることのできる「クッションフレーズ」はビジネスメールにおいて多様な場面で使われます。
これらのフレーズを使いこなすことができれば、言葉の印象がやわらかくなるので非常に便利です。お互いの顔が見えないからこそ、言葉遣いにはより気をつけるようにしましょう。
FAQ
- Q:ビジネスメールの書き出しで、社外向けの基本的な挨拶は何ですか?
- A:社外向けのメールでは、まず「会社名・部署名・氏名」を名乗り、続いて「いつもお世話になっております。」という感謝の言葉を述べるのが基本です。初めての相手の場合は「初めてメールをお送りいたします。」といった枕詞を使います。
- Q:社内メールの書き出しは、社外向けと同じでよいですか?
- A:いいえ、社内メールでは社外向けほど形式張った挨拶は不要です。「お疲れ様です。〇〇(自分の名前)です。」という簡潔な挨拶が一般的です。ただし、上司や他部署への依頼など、内容に応じて丁寧さを調整します。
- Q:メールを返信する際の書き出しは、どのようにすればよいですか?
- A:相手から届いたメールに返信する際は、「ご連絡(ご返信)いただきありがとうございます。」や「承知いたしました。」など、まずは相手のアクションに対する反応を示します。その上で「〇〇の件ですが、」と本題に入るとスムーズです。
- Q:お詫びメールの書き出しで気をつけることは何ですか?
- A:お詫びメールの場合は、挨拶よりも先に謝罪の意を明確に伝えることが重要です。「〇〇の件で多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。」のように、何についての謝罪かを具体的に記します。
まとめ
以上、ビジネスメールの書き出しのマナーと例文について解説しました。
書き出しは、様々なシチュエーションに合わせ、臨機応変に変えることが大切です。「お世話になっております」だけでなく、季節の挨拶や気の利いた挨拶を行い、相手に良い印象を残せるように、書き出しも工夫していきましょう。
また、ビジネスシーンではメールのやりとり一つのミスでも相手からの信用を失いかねません。
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