ステップメールはメールマーケティングの一手法として、近年注目を浴びている施策です。しかし「なんかステップメールが良いらしい」という考えでステップメールを取り入れても、十分な効果を見込めないでしょう。
なぜなら、ステップメールにはメリットもあればデメリットもあるためです。ステップメールが持つポテンシャルを100%引き出すためにも、あらかじめ特徴を理解してから実践に入りましょう。
そこで本記事ではステップメールの特徴や実践方法など、基礎的な知識を解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
ステップメールとは?
ステップメール(ステップ配信)とは、顧客の流入や何らかの行動を起点に順序よく配信されるメールのことです。「何らかの行動」というのは、例えば会員登録、資料請求、セミナー申込み、商品購入などが挙げられます。
- 資料請求直後:サンクスメール
- 3日後:補足資料や導入事例など関連資料の案内
- 1週間後:無料トライアルの案内
また、ステップメール配信中の顧客行動によってシナリオを分岐させることも可能です。上記例の場合、以下のような分岐が考えられます。
- 関連資料の配信にアクションがあった場合のみ、無料トライアルの案内を送る
- 無料トライアルの案内があれば、無料トライアルを行った顧客専用のシナリオに移行する
このようにステップメールはメールマーケティング施策の中でも複雑なアプローチが可能で、より上級者向けの方法といえます。その分、使いこなせれば大きな成果を獲得することも可能です。
ステップメールと「メルマガ」の違い
代表的なメール配信の方法に「メルマガ(メールマガジン)」もあります。ステップメールよりこちらの方が認知度は高いでしょう。
メルマガはステップメールと異なり、すべての顧客(あるいは特定のセグメント)に対して一斉にメールを送る配信方法となります。
ステップメールが「アクションがあった日付のn日後に配信する」というイメージなら、メルマガは「2021年9月30日に一斉配信」といったように、絶対的な日付を狙うイメージです。
このため、メルマガはキャンペーンや新商品と言った時事性のある情報を伝えるのが得意で、ステップメールとは用途や目的が大きく異なります。
参考記事:「メルマガ」と「ステップメール」の違いとは? 両者の違いを正しく理解しよう
ステップメールのメリット
ステップメールによって得られるメリットは、主に以下の3つです。
- 温度感の高いタイミングを狙ってメール配信できる
- 育成・販売を自動化できる
- 短期間で大きな態度変容が期待できる
メリット1. 温度感の高いタイミングを狙ってメール配信できる
ステップメールは顧客のアクションを起点に送るメール配信です。そのため、メルマガよりも顧客の温度感が高いタイミングを狙ってアプローチでき、その温度感を維持、あるいは高めていきながら次なるアクションへとつなげられます。
このため、資料請求や会員登録といった一つひとつのアクションをより活かしながら、自社サービスの想起率向上が期待できます。
メリット2. 育成・販売を自動化できる
メルマガの場合、運用中はつねに新しい配信ネタを考える必要があります。一方ステップメールは、一度シナリオを作ってしまえば育成・販売を自動化できるのが強みです。
例えば資料請求から無料トライアルの案内を行い、無料トライアルを終えた顧客にはそのまま継続利用の案内というシナリオの流れを作ることで、一連の販売活動を自動化できます。
メリット3. 短期間で大きな態度変容が期待できる
メルマガにないステップメールのメリットとして、顧客のアクションと関連性の高い情報を伝達できる点が挙げられます。そのため顧客育成(ナーチャリング)の効率が上がり、結果的により短い期間で多くの見込み客を創出できるのです。
本来、メールマーケティングはメルマガやセグメント配信(ターゲット配信)だけでも十分な育成効果が得られます。しかし、それらの方法も煮詰まってきたという場合、ステップメールを取り入れる価値はあるでしょう。
ステップメールのデメリット
育成の自動化や短期間での効果的なナーチャリングなど、非常に魅力的なメリットがあるステップメールですが、その一方で以下のようなデメリットも存在します。
- シナリオ設計の手間がかかる
- ツールの費用が高め
デメリット1. シナリオ設計の手間がかかる
ステップメールというのはスタートとゴールが明確に決まっているメール配信方法で、作成時には、各配信の連続性を意識する必要があります。つまり、ステップメールは個別の配信を作る手間だけでなく、シナリオを設計する手間もかかるのです。
例えば、どのようなアクションに対してステップメールを適用するのが効果的か、ステップメールの配信が終了した顧客には次に何を配信すべきかなど、数多の要素を考慮しなければなりません。より顧客のアクションに最適化するならば、いくつものシナリオ分岐を作る必要もあります。
また、ステップメールを配信中の顧客には、余計な情報で気を散らせないよう、通常のメルマガを送らないようにする必要もあります。
様々な観点から、ステップメールを効果的に運用するには、メールマーケティングの知見がある程度ないと難しいといえるでしょう。
デメリット2. ツールの費用が高め
ステップメールを行うには高機能なメール配信システムや、マーケティングオートメーション(MA)の導入がほぼ必須です。そうしたツールは比較的、価格が高めに設定されているため、マーケティングにかかる予算がかさんできます。
そのため配信先となる顧客リストが少ない場合や、単価の低い商材を扱っている場合などは、ステップメールを運用してもツールの費用を回収できない恐れがあります。
ステップメールの活用シーン
ステップメールはマーケティングにおける様々な場面で活用できますが、その中でもよく使われる場面も3つ紹介します。
- コンバージョン後のフォローアップ
- 学習コンテンツの配信
- 販売の自動化
コンバージョン後のフォローアップ
ステップメールをもっとも活用しやすい場面は、コンバージョン後のフォローアップです。以下のようなアクションの後にステップメールを配信すれば、顧客の温度感が高いうちに訴求できるため、よりスムーズな検討を促せます。
- 資料請求
- 無料体験
- 問い合わせ
- セミナー申込み
- 会員登録
- 有料プラン登録・商品購入
コンバージョン後のステップメールにおけるポイントは、ゴールを設定することです。例えば資料請求であれば、次に問い合わせやセミナー申込みにつなげる、セミナー申込みであれば、確実な参加を促すために期待感を高めるステップメールを配信する、のような形です。
ゴールが適切に設定されていなければ、ステップメールの効果を十分発揮することはできません。シナリオ設計時は注意しましょう。
学習コンテンツの配信
ステップメールはその性質上、学習コンテンツの配信とも相性が良いです。事例としては、プログラミング言語や英会話のオンライン学習などが真っ先に挙げられます。
また、海外では犬のしつけ方やテニスの上達方法といったコンテンツをステップメールで無料配信し、その後有料コンテンツの販売で数千万円という売上創出に成功した、という個人ビジネスの事例がいくつがかあります。
学習コンテンツの内容が良質であれば、良好な顧客エンゲージメントを獲得できるだけでなく、そのまま商品販売にもつなげられるのです。
販売の自動化
ステップメールは顧客の育成を得意としますが、販売に活用して、売上に直接役立てることもできます。この場合、学習コンテンツの項でも紹介したように「無料コンテンツのあとに、有料コンテンツ販売へとつなげる」という、フリーミアム的な手法が有効です。
また、購買直後の顧客に向けて関連商品やアップセルを案内し、さらなる購買へとつなげるためのステップメールも効果的でしょう。
ステップメールの実施手順
ステップメールを実施する際は、以下のような手順を踏んでいきましょう。
- ゴールを決める
- シナリオ作成
- コンテンツ(メール)作成
- 配信テストを行い、問題なければリリースする
- PDCAを回す
手順1. スタートとゴールを決める
まずは、どのような顧客にステップメールを配信するか(スタート地点)と、それによってどのような成果を得たいか(ゴール)を定めます。
例えば自社サービスを契約した直後の顧客に対して、サービスの使い方やおすすめコンテンツをステップメールで配信して短期解約を予防する、といった具合です。このとき仮に1か月契約を保たせたいのであれば、ステップメールの配信期間も1か月ほど必要と考えられます。
手順2. シナリオ作成
ステップメールをどのように適用するか決めたら、シナリオを作成しましょう。シナリオとは、「顧客のコンバージョンにどのようなメール配信が必要か?」を時系列にまとめたものです。
例として、ステップメールによって資料請求から問い合わせへとつなげる場合のシナリオは、以下のようになるでしょう。
- 1通目:自社サービスの特徴・機能が具体的にどのような形で現われるかを知ってもらうため、導入事例をいくつか紹介する
- 2通目:他社との比較資料を送付し、自社サービスの競争優位性をアピールする
- 3通目:無料トライアルや導入前のPoC(概念実証)を案内することで「実際に上手くいくのか?」という不安を払拭し、行動を後押しする
このとき、配信の順番だけでなく「資料請求○日後」のようなスケジュールも決めるようにすると、メール作成がスムーズになります。
本手順でのポイントは、ステップメールによって顧客の思考・心情がどのように変化するかをイメージすることです。自社が伝えたいことを伝えるというより、「このタイミングで顧客が欲する情報はなにか」を軸にしてシナリオ作成しましょう。
手順3. コンテンツ(メール)作成
次にシナリオの内容に沿って実際にメールを作成します。ステップメールということで、各配信には次回配信への期待感を高める内容を入れても良いでしょう。
ただし、次回予告は良くも悪くも、そのメール配信がシナリオ形式であることを顧客に認識させることとなります。場合によっては次回予告が顧客に売込み感を覚えさせる可能性もあるため、状況に応じて使い分けましょう。
メール作成時のポイントは開封率やクリック率といった指標を意識することですが、これについてはメルマガを作るときも同様ですね。そのためメルマガ作成に慣れているのであれば、さほど困ることは無いでしょう。
なお、開封率やクリック率の高いメール配信の作り方は、以下の記事が参考になります。
参考:メールマーケティングの例文を紹介!開封率・クリック率を上げる方法 | メール配信システム「blastmail」Offical Blog
手順4. 配信テストを行い、問題なければリリースする
メール作成まで完了したら、検証用のメールアドレスなどを使ってステップメールの配信テストを行いましょう。特に分岐が複数あるなどのシナリオの構造が複雑なときは、意図しない配信が行われたり、逆に配信されなかったりといったトラブルが起きがちです。
そのようなトラブルを未然に防ぐため、以下のような項目をテスト時にチェックしましょう。
- 配信開始トリガーは正常に動くか
- 各メールの誘導先URLは間違っていないか
- 各メールは正しいスケジュールに配信されるか
- シナリオ分岐は正常に行われるか
- シナリオ終了後もしっかり別の配信が行われるか
上記はあくまでステップメールにおけるチェック項目です。そのため件名が長すぎて重要な部分が見切れていないかや、本文のレイアウトが崩れていないかなど、コンテンツとして問題ないかどうかも同時にチェックしてください。
手順5. PDCAを回す
ステップメールのリリース後は、PDCAサイクルを回すステップに入ります。開封率やクリック率を定期的にチェックし、数値に問題が見られれば適宜改善を行いましょう。
また、ステップメールの各配信がどれだけ顧客を維持できているか評価するためにも、各指標の推移にも着目してください。
例えば「1通目のクリック率は3%だが、2通目は1%以下まで落ち込んでいる」という状況。素直に考えるなら、2通目の件名や本文が魅力的ではない可能性があるでしょう。
しかし、各配信に連続性があるというステップメールの特徴を考慮すると「1通目で顧客の興味付けができていない」という仮説も立てられますよね。
この仮説に基づくなら、2通目の効果が悪くとも改善すべき対象は1通目の配信ということになります。
ステップメール実施時の注意点
ステップメールを配信するには、MAツールやより高機能なメール配信システムの導入が前提となる点に注意しましょう。そのため、まだ自社にそうしたツールが導入されていない場合、サービス選定から始める必要が出てきます。
また、すでに何らかのメール配信システムを導入している場合、乗り換えのコストがかかってくるのが難点です。
ステップメール機能がないツールでも、アクションタグ付与をトリガーにメール配信するシステムを使えば、擬似的にステップメールを再現できるかもしれません。しかし、そのようなやり方は余計な手間がかかります。
ステップメールを快適に運用したいなら、やはりMAツールや高機能なメール配信システムを導入するのがおすすめです。
ステップメールとは? まとめ
ステップメールとは、顧客のコンバージョン直後のアプローチや、学習コンテンツの配信に活用されるメールの配信方法です。各配信に連続性がある、短期間で効果的な育成が行えるなど、メルマガとは異なった特徴があります。
ステップメールを行う際のポイントはシナリオ設計です。「どのような顧客を対象にし、一連の配信によってどのようなアクションを期待するか」といった点を明確にしなければ、ステップメールで十分な効果を得るのは難しくなります。
ステップメールの成果は、シナリオ設計の質によって8割方きまるといっても過言ではありません。そのためステップメールの効果が芳しくないときは、個々のメール内容だけでなく、配信の順序やスケジュールなどといった、シナリオの構造にも目を向けましょう。