顧客の属性情報や過去のアクションをマーケティング・販促に活用するためのシステムが「CRM」です。CRM上のデータをもとに顧客分析を行うことで、アンケートやセミナー開催など様々なアプローチにつなげられます。
しかしながら、CRMを利用したマーケティングというと、もっぱらメールを利用することがほとんどでしょう。アンケートやセミナーはあまり実施していないが、メールマーケティングは継続している、という企業は多いはずです。
参考:メールマーケティングとは?流行の背景や成功事例も合わせて徹底解説
それと同時に「CRMがあるから何となくメールを送っているが、イマイチ成果につながらない」と感じている担当者も少なくないでしょう。
そこで本記事では、よりCRMを活用するために、メールマーケティングを効果的に運用するためのポイントについて解説します。メールマーケティングについてお悩みの方は参考にしてください。
目次
CRMがメールマーケティングに活用される2つの理由
CRMを利用していない方のために、まずはCRMの概要やメールマーケティングに効果的な理由を解説します。
そもそもCRMは「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の頭文字を取った言葉です。よく顧客管理システムを指して呼ばれるCRMですが、広義では顧客との関係性を軸としたマーケティングの概念を指します。
さて、CRMがメールマーケティングに活用されている理由は、主に「メール配信の送り分けが簡単に行える」ことと、「より適切なタイミングに自動でメール配信できる」ことの2つが挙げられます。各理由について詳しく解説します。
メール配信の送り分けが簡単に行える
メールマーケティングといえばメルマガが代表的な手法ですが、メルマガは一斉配信が基本となり、顧客ごとに配信を送り分けるのが難しいという特徴があります。
しかし、CRMを利用したメール配信なら、顧客データベースをもとにした配信の送り分けが容易に行えます。例えば年齢や性別など属性によってレコメンド商品を切り替える、メール開封や問い合わせといった行動をもとに顧客の検討段階に適したアプローチをするなどです。
このようにメールを送り分けることはセグメント配信(ターゲット配信)と呼ばれています。CRMを使っていなくてもセグメント配信は実践できますが、その場合ごく単純なセグメンテーションしかできません。
参考:セグメント配信とは?メールマーケティングの基礎知識をわかりやすく解説
複雑な条件でセグメントを切り分ける、よりリアルタイムで顧客の変化に対応するといったセグメント配信はCRMだからこそ可能です。
より適切なタイミングに自動でメール配信できる
CRMは顧客のアクションをトリガーに、メールを自動で送る「シナリオメール」が配信可能です。そのため問い合わせや資料請求といったアクションを起こした直後の、温度感が高いタイミングを狙って顧客にアプローチできます。
また、より上級的な手法として「ステップメール」もあります。ステップメールとは、「アクション翌日に配信A、2日後に配信B、5日後に配信C…」といったように、顧客のアクションを起点に順序よく送られる複数のメールのことです。
参考:ステップメールとは?メルマガとの違いや活用シーンを解説します
ステップメールはリードナーチャリングによく活用されますが、顧客の温度感を維持して休眠化を防ぐという効果もあります。個々の配信作成だけでなく各配信の順序も設計する必要がある分、難易度は高いですが、上手く利用できれば非常に効果的なメールマーケティング手法です。
CRMを利用してメールマーケティングを自動化する方法
ここからはCRMを利用したメールマーケティングの自動化について解説します。自動化の大まかな手順としては、下記の通りです。
- 顧客データを収集する
- 顧客データの分析・セグメント
- 各顧客セグメントに応じてメール配信をセットする
1. 顧客データの収集
セグメント配信やシナリオメールを送るには、まず顧客データを集めてCRMに登録する必要があります。手動登録には限界があるため、APIなどを用いて既存のデータベースとCRMを連携し、できる限り自動化することが重要です。
2. 顧客データを分析する
CRMに顧客データが登録される仕組みが整ったら、集まった顧客データを分析します。分析の過程で、どのようなセグメントにアプローチするか、どのような配信を行うのが効果的かなどについて具体的に検討しましょう。
3. メール配信をセットする
配信したいメールやセグメントが定まったら、順次メール配信をセットしていきましょう。シナリオメールやステップメールはメールマーケティングを自動化する配信方法であるため、優先的にセットするのがおすすめです。
シナリオメール
シナリオメールは何らかの顧客アクションをトリガーにして自動配信するメールです。シナリオメールを利用すれば、下記例のように、顧客の意欲が高まったタイミングに合わせてメール配信できます。
- 資料請求して1時間後の顧客に、説明会・セミナー案内のメールを配信する
- 展示会やセミナーに参加した顧客に、次回イベントの開催情報や商品の無料トライアルを案内する
- 商品購入から数日後の顧客に、商品の活用法や次回購入に使えるクーポンを配信する
メールマーケティングが十分実践できていない企業には、上記のようなフォローが営業担当者頼みになってしまっているケースは多いでしょう。しかし、シナリオメールを利用すれば様々な状況に対して漏れなくアプローチできるようになります。
シナリオメールは成果獲得の機会を最大化できるだけでなく、営業担当者がより重要な業務に集中できるというメリットも得られるのです。
ステップメール
ステップメールもシナリオメールと同様、顧客のアクションや状況に応じて自動配信するメールです。シナリオメールとは異なるのは、複数の配信が順番に配信される点にあります。
参考例として、下記に化粧品の無料サンプル1か月分を申し込んだ顧客に対するステップメールの配信例を示します。
- 申込み当日:サンクスメール
- サンプル到着当日:商品の使い方の案内
- 到着1か月分:商品購入に利用できるクーポンの配布
このように、ステップメールを利用すれば顧客の状況に応じたアプローチが取れます。また、より複雑にはなりますが、顧客の行動によってステップメールのシナリオを分岐させるといった活用法も可能です。
化粧品の例でいうと、1か月後に配布するクーポンの利用履歴があったかどうかで分岐させる方法が考えられます。
- クーポンが利用された場合:商品購入に至った理由についてアンケート
- クーポンが利用されなかった場合:商品の使用感や今後の購入予定などについてアンケート
ここからさらに、アンケートに回答があったかどうかで分岐させることも可能でしょう。ステップメールは使い方次第で、メールマーケティングの自動化を高いレベルで実現するのです。CRMを使っているならぜひ、積極的にステップメールに取り組んでみましょう。
CRMを活用したメールマーケティングのポイント
CRMを活用してメール配信を行う際には、「One to Oneなメール配信を意識する」、「価値提供に重きを置く」ことの2点が重要です。それぞれについて詳しく解説します。
One to Oneなメール配信を意識する
One to Oneとは、顧客一人ひとりに合わせて最適なコミュニケーションを取るマーケティングの在り方を指します。
本記事ですでに解説した手法でいうと、セグメント配信はOne to Oneを実現するのにもっとも基本的な方法です。また、シナリオメールも配信タイミングが顧客によってバラバラになる、One to Oneメールの手法のひとつです。
CRMならではの手法として、データベースに登録されている情報を呼び出すことで、本文冒頭の挨拶に顧客の固有名を自動挿入することもOne to Oneなメール配信といえます。
メールマーケティングというとメルマガのような画一的なアプローチがイメージされがちですが、One to Oneマーケティングが実現できることはCRM最大の強みです。
CRMがそもそも顧客関係管理を意味することを思いだし、顧客ごとによりパーソナライズされたメッセージを届けることに意識を傾けましょう。
価値提供に重きを置く
メールマーケティング初心者がついやってしまいがちなのが、配信内容が商品・サービスの売込みに偏り過ぎてしまうことです。
売込みがあまりにも多いと、「この会社のメールは売込みばかりで役に立たない」と思われてしまい、離脱の可能性を高めてしまいます。売込みばかりではなく、顧客にとって役に立つ情報を中心に配信することを意識しましょう。
これはあくまで目安ですが、メールマーケティングにおける価値提供と売込みの比率は「8:2」程度がちょうど良いとされています。価値提供を日頃行うことで顧客とのエンゲージメントが高まり、いざというタイミングで売込みがきちんと機能するのです。
CRMを活用したメールマーケティングまとめ
CRMを活用したメールマーケティングの強みは、顧客データベースを利用することで、顧客ごとにコンテンツやタイミングをパーソナライズできる点です。CRMなら顧客の検討段階や状況の変化にも柔軟に対応でき、以下のような効果的なメール配信が実践できます。
- 豊富な属性・アクションデータを元にしたセグメント配信により、コンテンツを顧客ごとに最適化できる
- アクションをトリガーにしたシナリオメール・ステップメールによって、顧客の購買意欲の高まりを狙って自動でメール配信できる
特にシナリオメールとステップメールは、メールマーケティングの自動化に不可欠な配信方法です。メールマーケティングに不慣れな方はまずシナリオメールから始め、徐々に複雑なステップメールにも挑戦していきましょう。