
複数の質問が含まれるメールへの返信で、「>」の記号を使って相手の文章を引用する「インライン返信」。 一つひとつの質問に漏れなく回答できる便利な方法ですが、一方で「手抜きに見えないか?」「失礼だと思われないか?」と不安に感じることはありませんか。
結論から言うと、メールの引用はマナーを守れば決して失礼ではありません。むしろ、ビジネスの現場では誤解を防ぐために推奨されるテクニックです。しかし、ただ引用するだけでは「冷たい印象」を与えてしまうのも事実。 そこでこの記事では、メール配信システムのプロであるブラストメールが、以下のポイントを解説します。
- 「失礼な引用」と「親切な引用」の決定的な違い
- 角を立てずにインライン返信をするための「魔法の一文(クッション言葉)」
- 全文引用と部分引用の正しい使い分け
この記事を読めば相手に好印象を与えつつ、サクサク仕事を進める「引用テクニック」が身につきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
メールの引用とは
メールの引用とは、過去にやりとりをした内容を自分が返信するメールに記載する手法です。引用をすることで、受信者が文章の詳細を確認するために、過去のメールを開く手間を省くことができるので、ビジネスのマナーとしても覚えておくと良いでしょう。
また、メールの引用には、過去のメールの文章を全て引用する「全文引用」と、必要な所だけを引用する「一部引用」があります。詳しくは後述していますが、相手の質問に答えるような形のメールでは、部分引用をすることでスッキリしたメールを作成できるでしょう。
メール引用の種類と特徴
ここからは先述した「全文引用」と「一部引用」の特徴をご紹介します。
全文引用
全文引用とは、相手のメールを全て引用して返信する方法です。また、返信するメールだけでなく、今までの一連のやり取りが引用される方法も全文引用です。
使用しているメールソフトやメーラーによっては、全文引用がデフォルトで設定されているものもあります。Gmailの場合は、以下の画像のようにグレーの線で返信元の文章が引用されています。

全文引用は、契約などの齟齬や認識の食い違いがあってはいけないやり取りで便利です。
一方で、全文引用をすることでメールが長くなってしまうデメリットもあります。
また、返信する内容が複数ある場合などは、全体引用をすることで返答が分かりにくくなってしまう可能性もあります。
返信しなければいけない内容がいくつかある場合などは、後述する一部引用を活用しましょう。
引用をする際は相手の文章に誤字を見つけても、そのまま引用しなければいけないというルールがあるのも覚えておきましょう。
一部引用
一部引用は、返信するメールの文章の一部を自分のメールに記載する方法です。引用する際は全文引用と同じく、相手の文章を修正して使うのはマナー違反です。
各メールソフトによって引用を表す記載の方法は異なりますが、一般的には「>」や「>>」を使って、引用した文章と自分の文章を区別します。送信するメールに相手の文章を引用し回答する形式のことを「インライン形式」と呼び、「>」などの記号はインデント記号と言います。
全文引用と比較して、メールが短くなることや、視覚的に分かりやすいメールを作成できるのが一部引用を使うメリットです。ただし、引用部分の切り取り方によっては、相手が返信して欲しい部分への返信ができない場合もあるので注意が必要です。
また、ビジネスで一部引用やインライン形式の返信をする場合は、相手に一言お詫びをしておくのがマナーなので、後述する例文を参考にしましょう。インラインに関する情報は「メールの「インライン」の正しい使い方と注意点を解説します」の記事にもまとめてあるので、ぜひご確認ください。
メール引用の例
ここからは、例にあげたメールに引用を使って返信する際の例文をご紹介したいと思います。
全文引用の例
件名
Re:新商品開発の打ち合わせ
本文
△△株式会社 高橋様
お世話になります。佐藤です。
開発に関する打ち合わせの調整をしていただき、ありがとうございます。
誠に勝手ではありますが、ご提案いただいた日時ですと、全て別件での予定が入ってしまっており、開催が難しい状況です。
つきましては、以下の日程での開催をご検討していただくことは可能でしょうか。
(1) 12月◯日 11:00~15:30
(2) 12月◆日 15:00~18:30
(3) 12月◇日 16:00~終日
上記の日程ですと、ご都合のよろしい時間帯をお選びいただいた上で、打ち合わせを開催することができます。
開催場所はご提案いただきました所にお伺いいたしますので、お手数ですがご検討ください。
(署名)
>〇〇株式会社 企画開発部 佐藤様
>お世話になっております。△△株式会社の高橋です。
>先日、お電話にてご提案させていただきました、新商品開発の打ち合わせに関してご連絡差し上げます。
>以下の日程・場所での開催はいかがでしょうか。
>【開催場所】〇〇
>【開催日時】 ① 12月◯日 13:00〜14:30
② 12月◆日 10:00〜12:00
③ 12月◇日 15:00〜16:30
>ぜひご検討くださいます様、よろしくお願いいたします。
(署名)
相手への挨拶を兼ねた最初の返信などでは全文を引用すると、スムーズにやりとりをすることができるでしょう。
ビジネスメールの日程調整に関しては、以下の記事にもまとめてあるので、ぜひご参考ください。
関連記事:日程調整メールのマナーと例文!ビジネスで役立つ候補日の伝え方
一部引用の例
リスケジュールを依頼するメールに返信する形で一部引用の例をご紹介します。
件名
Re:Re新商品開発の打ち合わせ
本文
△△株式会社 高橋様
〇〇株式会社 企画開発部 佐藤です。
ご返信ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いします。
以降、インラインでの返信を失礼いたします。
>つきましては、以下の日程での開催をご検討していただくことは可能でしょうか。
>(1) 12月◯日 11:00~15:30
>(2) 12月◆日 15:00~18:30
>(3) 12月◇日 16:00~終日
日程調整の件、かしこまりました。
ご提案いただきました日程で開催ができるよう、調整いたします。
明日中には再度、連絡を差し上げますので、少々お待ちください。
(署名)
一部引用をすることで、このようにスッキリとしたメールを作成することができます。
iPhoneのメール引用設定
ここからは、各メールソフトで行う引用設定の方法を解説します。
最初に、iPhoneに入っているメールソフトでできる引用設定をご紹介します。

上記の画像にあるようなメールに返信をしてみましょう。

iPhoneにデフォルトでインストールされているメールアプリでは、全文引用が設定されているため、上の画像のように引用部分に縦の線が入ります。
iPhoneのアプリでは、この設定をオフにすることはできないので、引用文を消す場合は手動で作業をする必要があります。
一部引用をする場合は、必要な部分だけを選択し、メニューをスクロールすると引用に関する設定ができます。

iPhoneのメールアプリで一部引用をする小技
上記のような方法で一部引用をする以外にも、iPhoneではもっと簡単に一部引用をする方法があるのでご紹介します。
- 受信したメールを開く
- 一部引用したい文章を選択する
- 返信ボタンをタップする
上記の手順で返信をすると、以下の画像のような状態で作成することができます。

複数箇所を一部引用の形にすることはできませんが、一箇所であればこの方法で簡単に一部引用のメールを作成することができるのでご活用ください。
PC版Gmailのメール引用設定
Gmailの返信は基本設定で全文引用がされるようになっています。
引用されないように設定をするには、Gmailの初期設定であるHTML形式から「簡易HTML」と言う形式に変更する必要があります。
簡易HTML形式への変更は以下のURLから設定することができます。
Gmailを標準HTML形式または簡易HTML形式で表示する
引用の設定は可能になりますが、スペルチェックをはじめとするいくつかの機能が使えなくなってしまうので注意しましょう。
Gmailで一部引用をする場合は以下の手順で行います。
- 引用したい部分をコピー&ペーストする
- 下部の書式設定ボタンをクリック
- 引用ボタンをクリック

一部引用の形で返信する場合は、見づらくならないようにデフォルトで設定されている全体引用を削除しておきましょう。
PC版Outlookのメール引用設定
Outlook、Gmailと同じく全体引用が初期設定されていますが、元のメッセージに縦線などの目印は入っていません。
デフォルトで引用部分にインデント記号を入れるには、以下のような手順で設定します。
- Outlook上部の「ファイル」から「オプション」をクリック
- 「メール」を選択し「返信/転送」の「メッセージに返信する時」をクリック
- 〔元のメッセージを残す〕を〔元のメッセージの行頭にインデント記号を挿入する〕に変更する
- ウインドウ下部のOKをクリック
上記の設定を行うと、返信ボタンをクリックした際に記載されている相手のメッセージにインデント記号が表示されるようになり、引用部と本文が区別されます。
一部引用などでインライン形式の返信をする場合は、必要な部分をコピー&ペーストしてメールを作成しましょう。
引用の「インライン返信」は失礼?角を立てないための3つの鉄則
相手のメール文章を引用して、その直下に回答を記載する「インライン返信」は、どの質問に対する答えなのかが一目瞭然になるため、ビジネスシーンでは推奨される効率的な手法です。
しかし、通常の文章形式での返信に比べて事務的な見た目になるため「手抜きだ」「冷たい」といった印象を相手に与えてしまうリスクも孕んでいます。相手に不快感を与えず、効率的にやり取りを進めるためには、以下の3つの鉄則を守ることが重要です。
冒頭に「断り書き」を入れる
いきなり引用と回答から書き始めるのは、唐突で失礼な印象を与えかねません。本文の冒頭、挨拶の直後に「なぜインライン返信をするのか」という理由とお断りを一言添えるだけで、相手への配慮が伝わる丁寧なメールに変わります。これを「クッション言葉」と呼びます。以下の例文のような一文を、定型句として辞書登録しておくことをおすすめします。
- 基本のフレーズ 「ご質問事項が多岐にわたるため、引用返信にて失礼いたします。」
- 確認事項が多い場合 「確実な回答をさせていただくため、いただいたメールを引用する形で回答いたします。」
- 急いでいる場合 「迅速に確認させていただくため、インライン形式にて失礼いたします。」
このワンクッションがあるだけで、読み手は「効率化のためにあえてこの形式にしてくれているのだな」と納得感を持って読み進めることができます。
引用元の文章は改変しない
引用する際は相手の文章を一言一句変えずにそのまま使用するのがマナーです。「長すぎるから」といって勝手に要約したり、語尾を変えたりすることは避けましょう。
もし相手の文章に誤字脱字があったとしても、修正せずにそのまま引用します。下手に修正すると「間違いを指摘された」と相手が不快に感じる可能性があるほか、ニュアンスが変わってしまい「言った、言わない」のトラブルに発展する恐れがあるためです。
あくまで「あなたの発言に対して回答しています」というスタンスを崩さないことが、インライン返信の鉄則です。
回答は「Yes/No」だけでなく補足を添える
引用の直下に回答を書く際、「承知いたしました」「NGです」といった単語だけの回答は避けましょう。機械的で突き放したような冷たさを感じさせてしまいます。効率重視のインライン返信であっても、相手とのコミュニケーションであることを忘れず、感情や背景などの補足情報を添えるよう意識してください。
例えば、「参加可能です」だけでなく「参加可能です。当日の講演を楽しみにしております」と添えたり、「対応できません」だけでなく「現状のリソースでは対応が難しく、来週以降であれば調整可能です」と理由を加えたりすることで、丁寧で温かみのある返信になります。
読みやすさ重視!スマホ・チャット時代の引用ポイント
近年では外出先からスマートフォンでメールを確認したり、SlackやTeamsなどのビジネスチャットツールを併用したりする働き方が一般的になりました。PCでの閲覧を前提とした従来の引用マナーだけでは、かえって読みづらくなってしまうケースも増えています。
ここでは現代のビジネス環境に合わせた、相手にとって「読みやすい」引用の工夫について解説します。
長すぎる引用はNG!要約して引用するテクニック
PCの大画面なら気にならなくてもスマートフォンの狭い画面で長文の全文引用が表示されると、スクロールの手間が増え、どこからが新しい返信なのか判別しにくくなります。返信履歴が積み重なってメール全体が長くなってきた場合や特定のポイントにだけ回答したい場合は「全文引用」ではなく、必要な箇所だけを抜粋する「部分引用」を活用しましょう。
相手の文章の要点だけを「>」で引用し、それ以外をカットすることで、スッキリと読みやすいメールになります。ただし、文脈が分からなくなるほどの過度な切り取りは避け、前後の流れが分かる程度に留めるのがコツです。
SlackやTeamsでの引用はどうする?メールとの違い
ビジネスチャットツール(Slack、Teams、Chatworkなど)では、メールのように「>」記号を手入力しなくても、特定のメッセージに対して返信できる「スレッド機能」や、ワンクリックで引用形式を作れる機能が備わっています。(引用できるケースもあります。)
チャットツールにおいては、メールのような冒頭の「断り書き」は基本的に不要です。スピード感が重視されるチャットでは、形式的な挨拶よりも、即座にレスポンスを返すことの方が価値が高いとされるためです。
ただし、議論が活発に行われているチャンネルなどでは、どの発言に対する返信なのかが埋もれてしまいがちです。その場合は、ツールの引用機能を積極的に使い「どの話題への反応か」を明確に紐づけることが、チャットにおける重要なマナーと言えます。
FAQ
- Q:メールの「引用返信」は失礼にあたりますか?
- A:いいえ、失礼にはあたりません。むしろ過去のやり取りを確認する手間を省けるため、ビジネス上のマナーとしても推奨される手法であり、内容の誤認識を避ける効果もあります。
- Q:「全文引用」と「一部引用」はどのように使い分けるべきですか?
- A:契約内容の確認など認識の齟齬があってはいけない重要なやり取りでは「全文引用」が適しています。一方で、相手からの複数の質問に個別に回答する場合などは、必要な箇所だけを抜き出す「一部引用(インライン形式)」を使うとスッキリして伝わりやすくなります。
- Q:引用部分の文章を修正しても良いですか?
- A:いいえ、マナー違反となります。たとえ引用元の文章に誤字や脱字があったとしても、相手の文章を勝手に書き換えたり修正したりせず、そのまま引用するのが基本的なルールです。
- Q:「インライン形式」で返信する際のマナーはありますか?
- A:相手の文章の間に回答を挟む「インライン形式」で返信する場合は、メールの冒頭や返信箇所の直前に「インラインにて失礼いたします」といった断り書きを一言添えるのが丁寧なマナーとされています。
まとめ
メールの引用には2つの種類があります。
全文引用は、返信するメールを全て引用し返信する方法で、契約などの誤認識を避けたいメールのやり取りでは便利ですが、文章が長くなってしまうデメリットがあります。一方の一部引用は、質問の回答をする場合などに使われます。このような形の返信はインライン形式とも呼ばれており、引用部分に使われる記号や線はインデント記号と言います。
ビジネスでインライン形式を使う時は、相手に一言添えるのがマナーなので注意しましょう。引用の設定は使用しているメールソフト・メーラーによって異なっており、最初から全文引用の形になっているものが多いです。
また、メールで引用をする場合は全文、一部引用に関わらず、引用元の文章を変えてはいけません。
誤字やミスと思われる文を見つけたとしても、引用の際は直さずに記載しましょう。メールの内容によって全文引用と一部引用を使い分け、スマートかつ誤認識のないやり取りを心がけましょう。



