
取引先や上司から複数の質問が含まれたメールを受け取ったとき、一つひとつに「〇〇の件ですが〜」と書き出すのは大変だし読み手にとっても分かりにくいですよね。
そんな時に便利なのが相手の文章を引用して回答する「インライン返信」です。 しかし、便利な一方で「手抜きに見えないか?」「目上の人に使って失礼じゃないか?」と不安を感じる方も多いはず。結論から言うと、インライン返信はマナー違反ではありません。むしろ、正しい作法で使えば互いの認識ズレを防ぐ最も確実なコミュニケーション手段となります。
この記事を読めば、相手に「仕事が早い・丁寧」という印象を与えつつ、効率的にメールを返信できるようになります。
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目次
インラインの意味は?
ビジネスメールにおけるインラインは相手に返信する際に「相手の文章を引用し、質問に対するこちらからの回答文を引用の間に挟んでいく返信形式」を意味します。
インラインとは元々、IT用語で「直列の」「一列に並んだ」などを語源とするカタカナ語です。ここから派生し「その場に埋め込む」という意味で使われるようになりました。
インラインの例文
インラインは以下のようなメールのことを指します。
件名
お問い合わせいただいた〇〇に関する件について
本文
〇〇株式会社 営業部
〇〇様
平素より大変お世話になっております。
△△株式会社の△△です。
お問い合わせいただいた〇〇に関する回答になります。
インラインによる回答で失礼致します。
>製品の見積もりは、〇〇で良いでしょうか?
はい。お送りした資料の通り〇〇で間違いありません。
その他の製品や、用途に合わせた方法もご提案できますので是非ご相談ください。
>合同ミーティングの日程は〇月〇日でよろしいでしょうか?
はい。問題ありません。
>以下、ご都合の良い時間をお知らせください。
>9:00〜11:00
>14:00〜16:00
>15:00〜17:00
14:00〜16:00でよろしくお願い致します。
以上になります。
ご不明点、変更等あればご連絡ください。
相手から送られてきたメール文を引用し、それに対する回答を挟んでいく形をとっています。
インラインを使う際の注意点
インラインを使う際にもいくつか注意点があります。
失礼なくインラインを使えるように覚えておきましょう。
インラインでの返信であることを詫びる
インラインでの返信を失礼と感じる人はほとんどいなくなりましたが、文章を引用してメールを返信することを良く思わない人も中にはいるかもしれません。
いらぬトラブルを防ぐためにも、文頭に「インラインでの返信失礼します」といった文章を入れておいた方が無難です。
インラインの返信には「>」を使う
先ほどの例文を見れば分かる通り、インライン返信の際は引用文の頭に「>(不等号)」をつけるのが通例です。
引用した文とこちらからの回答を分ける目印があることで、相手も読みやすくなるので親切です。
インラインは長文にならないように注意
相手の文をそのまま引用すると、長文になってしまうこともあるでしょう。
引用する文が長文になってしまう場合には、わかりやすく省略した形にするか、インラインではない別の形式で返信するようにしましょう。
インラインの目的
インラインを使用する目的は「相手からの質問に対して分かりやすく漏れがないように返信すること」です。
特に、質問が複数ある場合にはこちらも回答しやすく、相手も内容を確認しやすくなるので非常に便利です。
インラインのメリット
先ほども少し触れましたが、相手の文章を引用してそれに対して一つずつ返信していくので、返答を受ける側は回答が分かりやすく、返信する側も質問を見落としにくいというメリットがあります。ビジネスメールでは、できる限りやりとりの回数を減らすために、一通のメールに複数の質問が書かれていることがあります。
また、後日メールを確認する際や、他の人にメール共有する際にもインライン形式の方が経緯が分かるので伝わりやすいというメリットもあります。インラインを使用することで、質問の見落としで再度、先方から確認のメールが届くということもなくなるので、インラインは非常に有用な返信方法です。
インラインのデメリット
冒頭で説明したように、インラインの返信を良く思わない人もいるかもしれません。そのため冒頭に一言添えておくことは必須です。
また、相手の文を引用することでメールが長文になったり、インラインを使ってのやりとりが続くと、かえって返答の内容が分かりづらく、混乱の原因になってしまうかもしれません。
そうなってしまうと本末転倒なので、引用文を短くしたり、違う形式で返信するようにしましょう。
「インラインにて失礼いたします」は必須?使えるクッション言葉集
インライン返信は効率的な手法ですが、何の断りもなくいきなり「> 質問本文」の下に回答を書き始めると、相手によっては「唐突だ」「事務的すぎる」と感じさせてしまうリスクがあります。
これを防ぐために不可欠なのが、本文の冒頭(挨拶の直後)に添える「断り書き(クッション言葉)」です。「効率化のためにあえてこの形式をとらせていただきます」という配慮を一言添えるだけで、印象は劇的に良くなります。
定番フレーズ:「ご質問事項が多いので、インラインにて失礼いたします」
汎用的で、どのような相手にも使える基本のフレーズです。
「ご質問内容が多岐にわたるため」「確実に回答させていただくため」といった理由を枕詞にすることで、相手も「こちらの質問に漏れなく答えるためにやってくれているんだな」と納得感を持って読み進めることができます。
より丁寧な表現:「引用返信にて回答申し上げます」
目上の方や取引先に対して「失礼いたします」という言葉を使うことに抵抗がある場合は、事実を丁寧に伝える表現を使います。
- 「いただいたメールを引用する形で回答申し上げます。」
- 「本メールの引用返信にて回答させていただきます。」
このように宣言することで、礼儀正しさを保ちつつ、スムーズに回答に入ることができます。
親しい間柄なら:「(引用にて失礼します)」と文末に添えるだけでもOK
社内のチームメンバーや頻繁にやり取りをしている親しい取引先であれば、冒頭の挨拶で堅苦しく宣言する必要はありません。
要件に入り文末の結びの言葉の近くに「(引用返信にて失礼します)」と括弧書きで軽く添える程度でも十分マナーとして機能します。スピード感を重視するチャット的なやり取りの中で活用してください。
引用返信を「見やすく」するためのひと工夫
インライン返信の最大の目的は「分かりやすさ」です。しかし、引用文と回答文が同じ黒文字で、かつ行間が詰まっていると、どこからが自分の回答なのか判別しにくく、かえって相手を混乱させてしまうことがあります。
視認性を高め相手にストレスを与えないための小さな工夫を取り入れましょう。
回答部分の文字色を変える(青色などがおすすめ)
HTML形式のメール(リッチテキスト)を使用している場合、回答部分の文字色を変更するのが最も効果的です。おすすめの色は「青」や「濃い紺色」です。黒文字の中に青色の回答が入ることで、パッと見ただけで会話の流れ(質問と答え)が理解できるようになります。
一方で、「赤色」は目立ちますが、テストの採点や修正指示のような圧迫感を与えてしまうため、通常の返信では避けた方が無難です。
引用文と回答の間には必ず「空白行」を入れる
文字色を変えられないテキスト形式のメールやスマホからの返信であっても有効なのが「空白行(改行)」の活用です。
引用文(> 〇〇ですか?)の直後にすぐ回答を書くのではなく、必ず1行〜2行の空白を空けてから回答を書き始めましょう。余白があることで視線の移動がスムーズになり、誤読を防ぐことができます。
自動で「>」をつける!OutlookとGmailの設定方法
インライン返信をする際、手動で一行ずつ「>」記号を入力したりコピペしたりしていませんか? 主要なメールソフトには、返信ボタンを押すだけで自動的に引用記号を付与してくれる便利な設定があります。
Outlook:返信時に元のメッセージに行頭記号を入れる手順
ビジネスで利用者の多いOutlook(デスクトップ版)では、初期設定だと返信時に引用記号がつかないケースがあります。以下の手順で設定を変更しましょう。
- 画面左上の「ファイル」タブをクリックし、「オプション」を選択します。
- 左メニューの「メール」をクリックします。
- 「返信/転送」セクションまでスクロールします。
- 「メッセージに返信するとき」のプルダウンメニューから、**「元のメッセージの行頭にインデント記号を含める」**を選択します。
- 「OK」をクリックして設定を保存します。
これで、次回から「返信」ボタンを押すだけで元のメールの全行に自動的に「>」がついた状態で作成画面が開きます。
Gmail:引用返信の基本操作と表示されない時の対処法
Gmailではデフォルトで引用返信機能が備わっています。「返信」ボタンを押すと、自動的に相手のメッセージが含まれますが、画面上では省略されて見えないことがあります。
- 基本操作 返信画面の左下にある「...(三点リーダー)」アイコンをクリックすると、引用された元のメッセージが展開されます。
- 部分引用の方法 返信したい箇所をマウスでドラッグして選択した状態で「返信」ボタンを押すと、選択した部分だけが引用された状態でメール作成画面が開きます。
なお、GmailにはOutlookのように「全行に > をつける」という厳密な設定項目はありませんが、相手がテキスト形式でメールを受信した際には標準的な引用として処理されます。確実に記号をつけたい場合は「テキストモード」に切り替えて返信することで、編集画面上でも「>」を確認しながら作成可能です。
FAQ
- Q:メールの「インライン」とはどのような返信形式ですか?
- A:相手からのメール本文を引用し、質問に対する回答をその引用文の間に挟んで記述する形式のことです。どの質問に対する回答かが一目で分かるため、誤解や回答漏れを防ぎやすいメリットがあります。
- Q:インライン形式で返信する際のマナーはありますか?
- A:はい、冒頭に「インラインにて失礼いたします」といった断り書きを入れるのがマナーです。引用返信を略儀と捉える相手もいるため、一言添えることで無用なトラブルや不快感を与えるリスクを防げます。
- Q:引用部分だと分かるようにするにはどうすれば良いですか?
- A:引用する文章の行頭に「>(不等号)」の記号を付けるのが通例です。これにより、相手の文章(引用)と自分の文章(回答)が視覚的に明確に区別され、読みやすくなります。
- Q:インライン返信を使うべきではない場面はありますか?
- A:引用文が極端に長くなりすぎる場合や、やり取りが何往復も続き引用が重なりすぎる場合は避けたほうが無難です。かえってメール全体が読みづらくなる可能性があるため、適宜引用を省略するか、別の形式で返信するなどの配慮が必要です。
まとめ
以上、インラインの意味とビジネスシーンで使う際の注意点を解説しました。ビジネスメールでは、送信時のマナーや言葉遣いなど気を付けることが多くありますが「読みやすさ」も非常に重要な要素です。
敬語を丁寧に使おうとしすぎて、回りくどく結論が分かりにくい文章よりも、簡潔な文章の方が、受け手にとっては読みやすく印象が良いでしょう。インラインを正しく使えれば、簡潔で読みやすい返答メールを作ることが可能です。今回紹介した注意点を意識して是非使ってみてください。



