
「失念しておりました」は、メールの返信やミーティングの予定などをうっかり忘れてしまった時に使う言葉です。
日常生活の中では聞き慣れない言葉かもしれませんが、ビジネス用語としては頻繁に使われる言葉と言えるでしょう。「失念しておりました」が使われるのは、基本的には謝意を伝えるシーンになるので、失礼がないように正しい使い方を把握しておかなければなりません。
特に、失念しておりましたを使わない方が良いケースがあることを認識していない方は要注意です。この記事では「失念」の意味を例文と共に解説し、後半では使用が望ましくないケースについてもご紹介しています。
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目次
「失念しておりました」の意味
「失念」は「忘れる」の謙譲語です。
- 約束していた行事を忘れた時
- やるべき業務をすることを忘れた時
- メールの返信を忘れた時
- 郵送物の送付を忘れた時
上記のようなケースで「〜を失念しておりました」と表現します。
日常生活ではあまり使われない言葉ですが、ビジネスシーンのようなフォーマルな場では「忘れた」という言葉はやや軽い表現という印象を与えてしまいます。例に挙げたようなケースでは「大変申し訳ありません、〜を失念してしまっておりました。」とすることで、謝意や敬意を表現しつつ「忘れた」ことを伝えられるでしょう。
「失念しておりました」の例文
「失念しておりました」を使った例文を、ケース別にご紹介します。
会議・ミーティングへの参加を忘れていた時
会議やミーティングのような行事ごとへの参加を忘れてしまった時の例文です。
- 大変申し訳ございません。本日ミーティングが開催されることを失念しておりました。
- ミーティングルームへの参加パスワードを失念してしまい、入室できておりません。ご迷惑をお掛け致しますが、再度パスワードをご送付ください。申し訳ありません。
メールでは、以下のような文面で「失念しておりました」を使います。
件名
件名が入ります
本文
株式会社〇〇 - -部 佐藤様
お世話になっております。
株式会社〇〇の高橋です。
スケジュール帳への記載を失念していたために、〇〇のミーティングに参加することができませんでした。
お忙しい中、時間を作ってくださった佐藤様におかれましては、大変なご迷惑をお掛けすることになり、心よりお詫び申し上げます。
本来であれば口頭で謝罪をさせていただくところですが、夜分の連絡になってしまったため、このような形を取らせていただきました。
今後、このようなことが起きないよう、自身のスケジュール管理を徹底して参りますので、何卒、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
本日は、大変申し訳ありませんでした。
(署名)
先述したように「忘れる(た)」ことを表現するケースの多くは、謝意を伝える場面でもあります。
謝罪メールでは「失念しておりました」を正しく使うことはもちろんですが、ビジネスメールのルールを守りつつ謝意を伝える必要があります。
上記のようなケースでメールを送信する場合は以下の記事を参考に、失礼のない謝罪メールを作成しましょう。
関連記事:【ビジネス向け】誠意が伝わる謝罪文を書くためのポイントと例文
また、本記事のまとめではビジネスメールでよく使われるビジネス用語をケース別にまとめた例文集もご紹介しています。
ぜひ、こちらも併せてご覧ください。
頼まれていた業務を忘れた時
自身が行うべき業務を忘れてしまった時も「失念」を使います。
- 〇〇銀行への振り込みを失念しており、明日付での入金になってしまいました。大変申し訳ございませんでした。
- 〜は〇〇さんから依頼されていた業務でしたが、失念しておりました。今すぐに取り掛かります。
- 私がミーティングの報告を失念していたために、大変なご迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ございません。
「失念しておりました」は文末表現ですが「失念しており、」や「失念していたために、」とすることで、その後も文章を繋げることができます。
「失念しておりました」で終わる文章が失礼という訳ではありませんが、やや突き放した表現のように感じさせてしまう可能性もあります。
謙譲語・敬語を使いつつ、簡潔に内容を伝えるのがビジネスメールの基本ではありますが、相手との距離感は常に意識しなければなりません。
相手との関係性も踏まえ、文章を作るようにしましょう。
メールの返信を忘れていた時
返信する必要があるメールを忘れていた時には、以下のような使い方をします。
件名
件名が入ります
本文
株式会社〇〇 - -部 佐藤様
お世話になっております。
株式会社〇〇の高橋です。
大変申し訳ありません。頂戴したメールへの返信を失念しておりました。
添付していただいた資料に記載されている内容で問題ありません。
引き続き作業の方をよろしくお願いいたします。
(署名)
上記のメールは、比較的フランクな間柄でのコミュニケーションを想定したメールです。
取引先やお客様だけでなく、社内のコミュニケーションでも使うことができる内容ですが、先述の通り、相手との距離感を考慮した上で文章を作る意識は忘れないようにしましょう。
忘れ物をしてしまった時
忘れ物をしてしまった時は、以下のように「失念」を使います。
- 図面を持ってくることを失念してしまい、本日お見せできるのはこの資料しかございません。
- 店舗から事務所の鍵を持ち出すことを失念したため、事務所の解錠ができない状況です。
注意しなければならないのは、このケースで「失念」を使う場合、忘れ物そのものを失念したという表現にしてはいけないという点です。
- 図面を失念しておりました。
- 店舗にある鍵を失念しておりました。
上記のような表現だと「失念しておりました」が、図面や鍵と対応しているため誤用になります。
「〇〇を持ってくること」を「失念しておりました」と記載するようにしましょう。
「失念しておりました」を使わない方が良いケース
「失念しておりました」は先述した例以外にも誤用のパターンがあります。
ここからは「失念しておりました」の誤用について、解説します。
知らなかった時
「失念しました」は「うっかり忘れてしまいました」を、フォーマルに言い換えた表現です。
そのため、初めから知らなかった行事や業務については使用しないようにしましょう。
最初から知らなかったものに対しては、以下のような表現を使います。
- 存じ上げませんでした。
- 把握しておりませんでした。
「忘れていた」と「知らなかった」では、意味が全く異なるため注意しましょう。
主語が自分以外の場合は使わない
「失念」をはじめとする謙譲語は、自分の立場を下げることで相手への敬意を表現する言葉です。
そのため、解説してきたようなケースが相手に発生した場合は使用してはいけません。
- 先方が、会議への参加を失念していたそうです。
- 〇〇さんが作業を失念していらっしゃったようなので、私が代理で行います。
上記の例文は、主語が自分以外なのでどちらも誤用です。
一見すると丁寧な表現のように感じられますが、謙譲語の主語を自分以外にしてしまうと失礼な表現になります。
上記の例文は、正しくは以下のような文章になります。
- 先方が、会議への参加をお忘れになっていたようです。
- 〇〇さんが作業を忘れてしまっていたようなので、私が引き継ぎます。
丁寧な表現をするつもりでも、正しい使い方を知らないと逆効果になってしまうケースがあることを覚えておきましょう。
「失念しておりました」と似た言葉
ビジネス用語の中には「失念しておりました」と間違われやすい「ご放念ください」という言葉があります。
「ご放念ください」は「気にしないでください」「お忘れください」といった意味で使われる敬語表現で、以下の例文のように使われます。
- 新型コロナウイルスの蔓延により、御年賀の送付を控えさせていただくこととなりました。毎年の弊社へのお気遣い、厚く御礼申し上げます。今年度より、御年賀の送付はご放念くださいますようお願い申し上げます。
- 〇〇に関する資料をご送付いただけますと幸いです。もしすでにご送付いただいておりましたら、大変恐縮ですがご放念ください。
「失念」と同じく「忘れる」ことを表現する言葉ですが、例文をご覧になっていただくと分かるように、主語を自分ではなく相手にして使わなければなりません。
そのため、自分が何かを忘れた時に、以下のように「放念」を使うと誤用になります。
- 図面を持ってくるのを放念してしまいました。
- 放念しますので、気にせずお過ごしください。
「失念」は主語となる自分の立場を下げる謙譲語ですが「放念」は主語となる方の立場を敬う敬語表現に分類されます。似た意味を持つビジネス用語なので、区別をつけておきましょう。
以下の記事では「ご放念ください」の意味や、正しい使い方の詳細を解説しています。
関連記事:「ご放念ください」ってどんな意味?ビジネス上での使い方や注意点を例文つきでまとめました
チャットでは堅すぎる?ツールや相手に合わせた「失念」の言い換え
ビジネスコミュニケーションの手段がメールだけでなくチャットツールへも広がっている現在では「失念しておりました」という言葉が場面によっては堅苦しく響くことがあります。相手との関係性や使用するツールに合わせて表現を使い分けることで、よりスムーズに誠意を伝えることが可能です。
メール・公式文書:「失念しておりました」「不徳の致すところです」
クライアントへのメールや公式な謝罪文においては、やはり「失念しておりました」が最も適した表現です。自分の非を認めつつ相手を敬う姿勢を崩さずに伝えられます。
もしミスによって多大な迷惑をかけてしまった場合や事態が深刻なケースでは「私の不徳の致すところです」や「不注意により」といった表現を用いて反省の深さを強調しましょう。
チャット・社内:「抜けておりました」「漏れておりました」「失念しておりました」
SlackやTeamsなどのビジネスチャットや社内メンバーとのやり取りでは、スピード感や親しみやすさが重視される傾向にあります。
「失念しておりました」を使っても間違いではありませんが、少し柔らかく「対応が抜けておりました」や「確認が漏れておりました」と伝えると自然です。相手との距離が近い上司や先輩であれば、堅くなりすぎずに状況を素早く報告することを優先してください。
口頭:「ど忘れしてしまい」「うっかりしており」
対面や電話での会話で「失念しておりました」と言うと、どうしても準備された台本を読んでいるようなよそよそしい印象を与えがちです。
口頭でのコミュニケーションでは「すみません、すっかりど忘れしてしまいまして」や「うっかりしておりました」といった話し言葉に近い表現を選ぶほうが、人間味があり素直な謝罪として相手の心に届きやすくなります。
ビジネスで使える「失念しておりました」の英語表記
ビジネスシーンで「忘れた」ことを英語で表現する場合は、以下のようなフレーズを使うのが一般的です。
- I apologize. It must have slipped my mind.
「忘れる」といえば「forget」が思い浮かぶかもしれませんが、例文に記載されている「slipped my mind」は「うっかり抜け落ちてしまった」のニュアンスを伝えられます。そのため、日本語の「失念」とかなり近い表現として使われています。
文頭では、失念してしまったことに対する謝意を表現する「I apologize」を使っています。日本でも馴染みがある「sorry」は、かなりカジュアルな表現のためビジネスシーンではよほど親しい相手でない限り使われません。
もう「失念」と言いたくない!対応漏れを防ぐ3つのメール管理術
謝罪の言葉を覚えることも大切ですが、何よりも重要なのは「失念」という事態を二度と起こさないことです。記憶力や気合いに頼るのではなく、物理的にミスが起きない仕組みを普段の業務に組み込んでしまいましょう。
個人の対策:メーラーの「未読」「フラグ」機能を活用する
個人のメール管理において最も多い失敗パターンは、移動中などにスマホで一度メールを開き「あとで返信しよう」と思ってそのまま忘れるケースです。これを防ぐには「返信が完了するまでは既読にしない」というルールを徹底しましょう。
一度開いてしまったメールも手動で「未読にする」機能を使うか、対応が必要なメールには必ず「フラグ(スター)」を付ける習慣を持つだけで見落としは劇的に減ります。
チームの対策:CCに入ったメールも「誰が返すか」ルール化する
複数人が関わるプロジェクトでCCに多くのメンバーが入っていると「誰かが返信するだろう」という心理が働き、結果として誰も返信しない「お見合い事故」が発生します。これを防ぐには「宛先(To)に入っている人が必ず一次返信をする」あるいは「主担当者が不在の場合は副担当者が〇時間以内に返す」といった明確なチーム内ルールを設けることが効果的です。
根本解決:システム導入で「対応状況」を見える化する
メールの量が増えてくると個人の注意やルール作りだけでは限界が来ます。その場合はメール共有システムや管理ツールを導入し、チーム全体で対応状況を可視化することをおすすめします。システム化することで以下のようなメリットが生まれ、対応漏れを根本から断つことができます。
- 受信したメールごとに「未対応」「対応中」「完了」といったステータスが一目でわかる
- 誰がどのメールを担当しているかがアイコンなどで表示され重複対応も防げる
- 返信が遅れているメールを自動で検知してアラートを出してくれる
- 過去の対応履歴がすべて残るため引継ぎや経緯確認がスムーズになる
人間である以上ミスをゼロにすることは困難ですが、ツールに頼ることで限りなくゼロに近づけることは可能です。「失念」を繰り返して信用を失う前に、管理体制そのものを見直してみましょう。
対応状況を見える化するには「楽楽自動応対」を使う

メールの量が増えてくると、個人の注意やルール作りだけでは限界が来ます。その場合はメールディーラーのようなメール共有システムを導入し、チーム全体で対応状況を可視化することをおすすめします。こうしたシステム導入することで以下のようなメリットが生まれ、対応漏れを根本から断つことができます。
- ステータス管理機能: 受信したメールごとに「未対応」「対応中」「完了」といった状態が一目でわかるため、「誰かがやっていると思った」というミスがなくなる
- 重複対応の防止: 誰がどのメールを開いているか(返信を作成しているか)がリアルタイムで分かるため、二重返信を防げる
- アラート機能: 返信が遅れているメールを自動で検知して警告を出してくれるため、古いメールが埋もれて「失念」することを防げる
人間である以上ミスをゼロにすることは困難ですが、ツールに頼ることで限りなくゼロに近づけることは可能です。「失念」を繰り返して信用を失う前に、管理体制そのものを見直してみましょう。
公式サイト:メール共有管理システム「楽楽自動応対」
FAQ
- Q:「失念」の正確な意味と、ビジネスにおける適切な使用場面を教えてください。
- A:「失念(しつねん)」とは、うっかり忘れてしまうことや、思い出せないことを意味する言葉で、「忘れる」の丁寧語表現にあたります。ビジネスでは、自分のミスでタスクや連絡を失念した際に使いますが、基本的に謝罪を伴う表現です。
- Q:「失念しておりました」という表現は、なぜ不適切とされることがあるのですか?
- A:「失念」は「忘れる」の謙譲語・丁寧語に近い表現であり、「〜しておりました」と付けると、過剰な二重表現(二重敬語に近い)となり、誤用と見なされることがあります。特に丁寧さを求められる場面では避けるのが無難です。
- Q:「忘れていた」ことを伝える際の、正しい敬語表現は何ですか?
- A:「失念」を使う場合は、シンプルに「失念いたしました」とするか、「大変申し訳ございません。失念しておりました」のように簡潔な謝罪の言葉を付け加えるのが適切です。また、「確認が漏れておりました」なども使用できます。
- Q:「失念」を使って謝罪メールを作成する際の例文を教えてください。
- A:謝罪の際は、まず謝罪の意を伝え、次に失念した事実を述べ、最後に今後の対応策を示すことが重要です。「〇〇の件、私の失念により確認が遅れ、大変申し訳ございません。今すぐ確認し、〇〇時までにご連絡いたします」といった構成が適切です。
まとめ
「失念しておりました」は「忘れる」の謙譲語です。
厳密には、約束していた行事や業務を「うっかり忘れてしまった」際に使われる言葉で、忘れ物そのものに「失念」は使われないので注意しましょう。
また、初めから知らなかった情報に対して「忘れる」を意味する「失念しておりました」を使うことも適切ではありません。あくまで、承知していた業務などに対して使うようにしましょう。
例文解説でも記載していますが「失念しておりました」は、謙譲語ではあるものの言い切った表現にしてしまうと、やや淡白な印象を与える可能性があります。そのため、相手との距離感や文章全体の雰囲気を考慮し「大変申し訳ありませんが忘れておりました」というニュアンスが伝わるようなコミュニケーションを心がけましょう。
「失念しておりました」をはじめとするビジネス用語は、日常生活ではあまり使われないものが多く、正しい使い方を把握していない方もいらっしゃるかもしれません。
以下の記事からは、ビジネス用語を使ったメールの例文集を無料でダウンロードすることができます。メール作成時に参考にしていただけるだけでなく、シーン別例文はコピペして使うことも可能です。
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