ビジネスシーンで使われる「ご放念ください」という表現の正しい意味や使い方をご存知でしょうか。
ビジネス用語としてはよく使われる言葉ですが、日常的に用いる言葉ではないので、実はニュアンス程度しか理解していない……なんて方も多いかもしれません。
また「ご放念ください」は相手への配慮を示す表現ですが、使用すべきではないケースもあるので、注意が必要です。
この記事では「ご放念ください」の意味や使用方法について、ケースごとに例文とともに解説しています。
ビジネス用語を正しく理解し、お客様や取引先との円滑なコミュニケーションに努めましょう。
目次
「ご放念ください」の意味
「ご放念ください」とは、相手に対して「忘れてください」「気にしないでください」という気持ちを伝える時に使われる表現です。
ニュアンス的には、「このことは気にしなくて大丈夫ですよ」と相手を配慮する意味になります。
「放念」に敬意を表す「ご」がついているので、目上の方や取引先に使用しても問題ありません。
「ご放念ください」の例文
ここからはケース別に「ご放念ください」を使った例文をご紹介します。
誤ったメールを送信してしまった時
メールの宛先を間違えてしまい、関係がない相手にメールを送信してしまった時は以下のように「ご放念ください」を使いましょう。
件名
先ほど送付いたしましたメールについて
本文
株式会社〇〇 〇〇部 佐藤様
平素よりお世話になっております。
株式会社--の髙橋です。
本日の9:30に佐藤様宛で送付いたしましたメールは、アドレスの設定ミスによるものです。申し訳ございません。
どうぞご放念くださいますようお願い申し上げます。
このシーンでは、「気にしないでください」という意味よりは「忘れてください」というニュアンスが強くなります。
また、メールの誤送信先や内容にもよりますが、謝罪の意味が含まれる場面では「ご放念ください」を使わない方が良いこともあります。
例えば、誤送信によって顧客情報を流出してしまったといったケースで「ご放念ください」を使うのは、やや軽すぎる表現になります。
上記のケースで適当な対応をしてしまうと、誤送信されたメールを受け取った相手から、顧客情報の管理がずさんな企業という印象を持たれてしまうかもしれないので気をつけましょう。
関連記事:メール誤送信してしまった時にやるべき対応!お詫びメール例文も掲載します
相手にお願い事をするとき
相手にお願い事をする時は、配慮の意味を込めて「ご放念ください」を使うことがあります。
- ◯日に御社にお伺いしたく存じますが、ご多忙の際はご放念ください。
- 急なご連絡となってしまい恐縮です。もし難しい場合はご放念ください。
上記のように、相手にスケジュール調整をさせる場合などではよく使われます。
ニュアンスとしては「気にせずに断ってください」という意味を持っており、もしこちらの希望に添えなくても大丈夫ですよ、と相手に伝えたい時に使いましょう。
謝罪されている時
相手から謝罪をされている場合は、以下のように「ご放念ください」を使います。
- 先日の件は問題なく収束致しましたので、どうぞご放念ください。
- 再三のご連絡ありがとうございます。ミスは誰にでもあることですので、くれぐれもご放念ください。
このようなケースでは、ご放念くださいを添えることで「こちらは気にしていませんよ」という気持ちを伝えることができます。
断りを入れるとき
相手からの行為に対して「もう結構です」という意思を伝える時もこの言葉を使うケースがあります。
例えば、毎年お歳暮のやりとりをしている企業に対して「来年からはもう結構です」という文面では、かなりドライな印象を持たれてしまうでしょう。
- 社内の方針転換に伴い、お歳暮の送付が廃止となりました。長年ご配慮いただき、ありがとうございました。今後はどうぞお気遣いなく、ご放念くださいますと幸いです。
例文のように「ご放念ください」を使うことで、贈答品のやりとりをお断りをしつつもビジネス上での敬意を表現できます。
「ご放念ください」の類義語
ご放念ください、と同じような意味を持っている類義語には以下のようなものがあります。
- ご放心ください
- ご休心ください
- お気になさらないでください
ご放心・ご休心は「ご放念ください」と同じケースで使われるビジネス用語です。
どちらも「気にしないでください」という意味を持っていますが、ご休心くださいには「安心してください」というニュアンスも含まれています。
- ご指摘いただいた点については、順調に進んでおりますのでどうぞご休心ください。
- 体調も回復し先日職場にも復帰いたしました。この度はご心配をおかけいたしまして大変申し訳ありません。どうぞご休心いただけますと幸いです。
上記のように、相手に心配をかけた際などに使うことができます。
また、「ご放念ください」よりもカジュアルな表現として「お気になさらないでください」という言葉もあります。
相手からの謝罪に対する返信などで、あまり堅苦しくなりすぎないような表現にしたい時に使いましょう。
- わざわざメールまでいただきありがとうございます。こちらは問題ありませんので、どうぞお気になさらないでください。
- ご丁寧にお越しいただきありがとうございます。仕事をする上ではミスはつきものですので、お気になさらないでください。
先述の通り、カジュアルな表現になるので相手を選んで使いましょう。
「ご放念ください」の誤った使い方
冒頭でも解説したように「ご放念ください」は、目上の方にも使うことができる丁寧な言葉ですが、使用が望ましくない場面もあります。
ここからは「ご放念ください」の誤った使い方や、使わない方が良いケースについて解説します。
主語が自分の時は「失念」
「ご放念ください」は「放念」という言葉の尊敬表現です。
そのため、主語が自分の場合などで「ご放念してしまいました」という使い方をするのは誤りです。
自分が何かを忘れたときは「失念」という言葉を使います。
- 大変申し訳ございません、昨日ご連絡をいただいていた件を失念しておりました。
- ご指摘いただいたことを失念しており、まだ修正が終わっておりません。
上記のように、自分自身が何かを忘れてしまったときは「失念」に置き換えて文章を作りましょう。
謝罪の時は使用しない
謝罪のメールで「ご放念くださいますよう」という言葉を使ってしまうと、ミスをしてしまった本人がその出来事について「忘れてください」と先方に伝えることになります。
謝罪を伝える場面では、迷惑をかけたことに対してのお詫びの気持ちを伝えることを大事にしましょう。
とはいえ、ビジネス用語を使いつつ謝意を伝えなければならない「謝罪メール」は、普段使わない言い回しを使わなければならないため、経験が問われるものです。
以下のURLからは、ケース別に謝罪メールの例文を掲載しています。
関連記事:【ビジネス向け】謝意が伝わる謝罪文を書くためのポイントと例文
ビジネスメールの体裁を保ちつつ、相手に気持ちを伝えられる文章作りの参考にご活用ください。
社内ではあまり使わない
「ご放念ください」は、主にお客様や取引先に対して使われます。
社内で上司に使っても問題はありませんが、何度も会ったことがある社内の方に対して使うと、過度にフォーマルな印象を与えてしまう可能性があります。
社内で「ご放念ください」と同じニュアンスを伝えるのであれば、前項でご紹介した「お気になさらないでください」などに言い換えましょう。
自分が「ご放念ください」と言われたら?
自分自身がお客様や取引先から「ご放念ください」と言われた場合は、基本的には「かしこまりました」と伝えるようにしましょう。
ここまでの解説の通り「ご放念ください」には「気にしないでください」「安心してください」という意味があります。
そのため「ご放念ください」と伝えられた後に食い下がるような言葉を返してしまうと、相手の意思に反したコミュニケーションをすることになります。
ただし「ご放念ください」と言われ、全て了承しなければならないわけではありません。
相手が「ご放念ください」と言っていたとしても、自分や自社にとって見過ごすことができない問題であればその旨を伝えるようにしましょう。
まとめ
「ご放念ください」という言葉は、ビジネスシーンで使われており、以下のような意味があります。
- 気にしないでください
- 忘れていただいて結構です
- お断りします
フォーマルなニュアンスの言葉なので、取引先や目上の方に使うことができる言葉ですが、謝罪をしている時などは使用しないように注意をしましょう。
また、いくら目上の方でも社員同士ではあまり使われません。
もし、自身が「ご放念ください」と言われた場合は、了承する旨を伝えるようにし、基本的には言及を避けましょう。
ただし、自社やプロジェクトにとって不利益が発生する可能性がある場合は、相手にその旨を伝えた方が良いでしょう。
ビジネス用語の中には「ご放念ください」と同様に、言葉ごとに使用すべきではないケースがあります。
普段のメールや取引先・お客様との会話の中で、意図せずに失礼な表現をしないように注意をしましょう。
以下のURLからは、ビジネス用語を使ったメールの例文集を無料でダウンロードすることができます。
上記の資料を参考に、自信をもってビジネス用語を使いこなせるようになりましょう。