
メール配信システムは、企業や個人の効果的なコミュニケーションを支える重要なツールです。
しかし、一部のシステムは料金が非常に高かったりと、導入が難しい企業も多いかと思います。 メール配信システムの導入を検討中の企業の中には、お金をかけないために自社で構築するという選択肢をとる人もいるかもしれません。
MTAサーバーを立ててメールを送る機能そのものを作ることは、技術的にそれほど難しくないかもしれません。しかし、現代のメール配信において真に困難なのはシステム構築そのものではなく、Gmailなどの厳しいセキュリティ基準をクリアし続け、高い到達率を維持する運用体制にあります。
本記事ではメール配信システムの基本的な仕組みや構築手順を解説するとともに、自社開発に伴う隠れたコストやリスク、そして既存サービスを利用する場合との費用対効果の分岐点について詳しく掘り下げます。

目次
- 1 メール配信システムとは
- 2 メール配信システムの基本構造
- 3 メール配信システムは自社で構築できる?
- 4 メール配信システムを自社構築する際の「3つの技術的障壁」
- 5 メール配信システムを自社で構築するメリット
- 6 メール配信システムを自社で構築するデメリット
- 7 【判断基準】自社開発(Build) vs SaaS利用(Buy) 比較チャート
- 8 メール配信システムを選ぶ前に知っておきたいこと(クラウド型とオンプレミス型)
- 9 メール配信システムの選び方
- 10 一斉送信を効率よく行うならブラストメール
- 11 API連携・SMTPリレーサービスならブラストエンジン(blastengine)
- 12 まとめ
- 13 FAQ
メール配信システムとは
メール配信システムとは、メールの一斉配信時に発生しやすい「相手に届かない・迷惑メールに振り分けられる・誤送信」といった課題を専用の仕組みで回避しながら、その上で「リスト管理やHTMLメールの作成、予約配信など」行えるメール配信には欠かせないシステムです。
メール配信システムには、到達率・開封率を調査する効果測定や、HTMLメールの作成機能などが搭載されているのが一般的です。
関連記事:メール配信システムおすすめ比較20選!専門家が図解とランキング形式で解説
メール配信システムの基本構造
それでは早速、メール配信システムの仕組みについて解説していきます。
メールが届くまでの全体の流れ
以下の図はメールを作成してから、宛先に指定したメールアドレスに届くまでの流れです。

流れを時系列に並べると以下のようになります。
- メールソフトで送信したメールは自社側のメールサーバーに届く
- 宛先のメールアドレスから、配送先のメールサーバーのIPアドレス(住所)を調べる
- 配送先のメールサーバーにメールを転送する
- 相手先のメールサーバーにメールが届いたら、新着メールとしてメールソフトにメールが届く
詳しくは以下の記事で解説してあります。
関連記事:メール送受信の仕組みについて解説!SMTP、POP、IMAP、DNSなどの用語を理解しよう!
メール配信システムは、メールの送信→配信→受信の各段階における処理を自動化し、効率化することで、スムーズなメール配信を実現します。
メール配信システムは自社で構築できる?
メール配信システムは自社で構築できるのでしょうか。結論から言うと可能です。
ただし、自社でメール配信システムを構築・運用する際には、以下のような点を総合的に検討する必要があります。
- インフラ構築・管理コスト
- 技術的要件
- スパム対策および到達率向上
- 法規制順守
- メンテナンス・モニタリング
初期投資や運用管理が複雑になるため、必要な技術的知見・リソース・法的対応を考慮した上で慎重に検討する必要があります。
メール配信システム構築の手順
メール配信システム構築の大まかな流れは以下のとおりです。
- インターネット回線を用意する:通信速度や安定性の高いものを選びましょう。
- ルーター設定:ルーターを設置します。
- ドメイン取得:自社オリジナルのドメインを取得します。迷惑メール対策として分かりやすい名称を設定しましょう。
- DNS設定:ドメインとIPアドレスを紐づける作業です。
- 電子メールサーバーのインストール:サーバーの専門知識が求められます。
- ソフトウェアのインストール:ソフトウェアやサーバーの専門知識が必要となります。
外部のメール配信サービスを活用することで初期負担を軽減し、到達率やセキュリティ対策を委託する選択肢もあります。組織の状況や目的、リソース状況に応じて判断するとよいでしょう。
メール配信システムを自社構築する際の「3つの技術的障壁」
PostfixやSendmailなどのMTAソフトウェアを使えばメールを送るサーバー自体は比較的簡単に立ち上げることができます。しかし「メールを送れること」と「相手に確実に届くこと」は全く別の問題です。自社構築において多くのプロジェクトが直面し運用を困難にさせているのが以下の3つの技術的な壁です。
IPアドレスの育成(ウォームアップ)とレピュテーション管理
新しく取得したばかりのIPアドレスはいわば「身元の分からない不審者」のような状態でISP(受信側のプロバイダ)からの社会的信用が全くありません。この状態でいきなり大量のメールを一斉送信するとスパム判定を受けて即座にブロックされてしまいます。
これを防ぐためには送信通数を一日数十通から始め数週間かけて徐々に増やしていく「IPウォームアップ」という非常にデリケートな作業が不可欠です。運用開始後もブラックリストに登録されていないか常に監視しIPアドレスの評価(レピュテーション)を高く維持し続ける専門的なノウハウが求められます。
この「IPレピュテーション」は、一度下がってしまうと回復させるのに膨大な時間と労力がかかります。自社サーバーのIPが現在どのように評価されているかを知る仕組みや、スコアを下げないための具体的な運用ルールについては、以下の記事で解説しています。
バウンスメール(エラーメール)の解析とリストクリーニングの自動化
送信したメールが宛先不明などで戻ってくるバウンスメールを放置することは配信元としての自殺行為に等しいです。エラー率が高い状態が続くと受信側から「リスト管理がずさんなスパム送信者」と認定され到達率が著しく低下します。
これを回避するには戻ってきたバウンスメールの複雑なヘッダー情報をプログラムで解析し「恒久的なエラー(Hard Bounce)」であれば即座にデータベースの配信リストから除外する自動クリーニングの仕組みを独自に開発し組み込む必要があります。
バウンスメールには、メールボックス容量オーバーなどの「一時的なエラー」と、宛先不明などの「恒久的なエラー」があり、それぞれ適切な処理が異なります。システムが自動で判別すべきエラーコードの種類と、バウンスメールが増えすぎた場合のリスクについては、こちらをご覧ください。
Gmail新ガイドライン(SPF/DKIM/DMARC・ワンクリック解除)への継続的な対応
メール配信技術の世界では受信側のプラットフォーム(GmailやYahoo!メールなど)が定めるルールが絶対です。特に2024年以降はGmail送信者ガイドラインが大幅に強化されSPF・DKIM・DMARCといった送信ドメイン認証の完全対応やワンクリック解除機能の実装が必須要件となりました。
自社構築の場合はこうしたガイドラインの変更やセキュリティ標準のアップデートがあるたびにシステム改修を行い常に最新の要件に追従し続けるための継続的なメンテナンス体制が欠かせません。
この新ガイドラインは非常に多岐にわたり、違反するとメールが届かなくなるだけでなく、ドメイン自体の評価を損なう恐れがあります。1日5,000件以上送信する場合の要件や、具体的にクリアすべき項目の全容については、以下の記事で詳細に解説しています。
メール配信システムを自社で構築するメリット
メール配信システムを自前で構築するメリットは、外部サービス利用に比べてカスタマイズ性が高く、運用コスト面で長期的に削減できる可能性がある点です。
システムを自由にカスタマイズできる
クライド型のメール配信システムは、基本的にカスタマイズ性があまり高くないパッケージ型です。自社で開発すればニーズに合わせて、「エディタ」「テンプレート」「機能」などを自由に設定することができます。 自社で使っている様々なマーケティングツールとの連携も可能です。
長期的に見てコストパフォーマンスが良くなる
そもそもメール配信システムは、従来の郵送や電話によるマーケティングと比較して、コスト効率に優れています。
さらに自社で開発知れば月額費用や導入費用が掛からないため、完璧なものを一度構築してしまえば長期的に見て効率が良くなる可能性があります。
しかし、サーバーメンテナンスなど、自社構築だったとしてもランニングコストはかかってくるので、初期費用が回収できたとしても、かなり回収の遅い投資になるでしょう。
メール配信システムを自社で構築するデメリット
正直、メール配信システムは自社で構築するメリットよりデメリットのほうが大きいです。以下で詳しく解説します。
技術的なハードルが高い
メール配信システムの構築には、技術的なハードルが存在します。メール配信システムは、様々な技術要素が組み合わされているため、システムの構築には、高度な技術力が必要となります。
仕組みの項で解説した通り、メール配信には専用の仕組みが多く存在しているため、専用のシステムを構築できたとしても応用が利きません。よほど大きな会社でない限りは内製より外部システムを使うことをお勧めします。
メール配信に特化した法律を守る必要がある
当然ですがメール配信システムの構築には、法令遵守が不可欠です。 特に、特定電子メール法など、メール配信に特化した法律を順守できる設計にしなければなりません。
特定電子メール法については以下の記事で詳しく解説しているので読んでみてください。
参考記事:「特定電子メール法」とは?違法にならないためのポイントを理解しましょう!
障害対応と保守が必要
メール配信システムは、障害が発生する可能性はゼロではありません。システム障害が発生した場合、迅速な対応が求められます。
障害対応のための体制を整える必要があります。 自社で丸1日メールが送れない、なんてことが起こったら業務になりませんよね。
コストを抑えるために自前で構築したメール配信システムの保守にコストがかかってしまっていたら意味がないので、長期的に費用が回収できるかよく試算したうえで取り組みましょう。
【判断基準】自社開発(Build) vs SaaS利用(Buy) 比較チャート
最終的に自社でシステムを作り込む(Build)べきか既存のクラウドサービスを利用する(Buy)べきかはコストとリスクのバランスで決まります。表面的なサーバー費用だけでなく運用後の人的コストまで含めたトータルコストで比較検討することが重要です。
初期開発コストとランニングコスト(サーバー代+人件費)の試算
自社開発はサービス利用料がかからないため一見すると安上がりに見えますがそこには「見えないコスト」が大きく横たわっています。
AWSなどのサーバー費用自体は月額数千円で済むかもしれませんがシステムを構築するエンジニアの開発工数や日々のエラー対応にあたる運用保守の人件費を含めると実際のコストはSaaSを利用する数倍に膨れ上がることも珍しくありません。障害発生時に即座に対応できるエンジニアリソースを社内に確保し続けられるかどうかもシビアな判断材料となります。
送信規模別のおすすめ(月1万通以下ならSaaS、など)
どちらを選択すべきか迷った際は「月間の送信ボリューム」と「目的」を基準に判断すると失敗が少なくなります。以下の目安を参考に自社のフェーズに合った最適な運用モデルを選択してください。
- 月間数万通以下の規模であれば運用負荷のないSaaS(クラウド型配信システム)が圧倒的に有利
- 独自の特殊なデータベース連携や複雑なセキュリティ要件がある場合はAPI連携型の配信エンジン導入が最適
- 超大規模配信(月間数千万通以上)かつ社内に専任のインフラエンジニアチームがいる場合に限りフルスクラッチ開発のメリットが出る
- 到達率の維持管理をプロに任せたいなら構築型ではなく配信サービスの利用が安全
メール配信システムを選ぶ前に知っておきたいこと(クラウド型とオンプレミス型)
メール配信システムは自社で構築するより外部サービスを利用したほうがメリットが大きいです。 ここではメール配信システムを選ぶときに知っておきたいことを紹介します。
クラウド型メール配信システム
クラウド型メール配信システムは、インターネットを通じてメール配信サービスを提供するシステムです。
クラウド型メール配信システムを利用することで、自社でサーバーを管理する必要がなくなり、初期費用を抑えることができます。また、必要に応じて配信容量を増やすことができます。
一方でクラウド型は月額や年額での課金システムなので、利用を続ける限り費用が掛かり続けることを覚えておきましょう。
オンプレミス型メール配信システム
オンプレミス型メール配信システムは、自社でサーバーを所有し、管理するシステムです。
こちらは自社でシステムを完全に管理することができます。 自社で構築するのに似ていますが、パッケージとして購入する必要があるので、初期費用が非常に高くなります。
また、導入後の保守も自社で行う必要があるので、別の形でランニングコストがかかります。
シンプルな大量配信ならメールリレーサービスがおすすめ
メールリレーサービスとは、エディタや効果分析機能は持たず、性能の高い配信サーバーを使ってメールの配信速度や到達率を高めるサービスです。
国内で代表的なものはブラストエンジンなどがあります。 自社で使っているCRMツールなどとAPI連携を行うことによって、メールを大量・高速・確実に届けることができます。
メール配信システムの選び方
メール配信システムには多様なサービスがるので、自分に合ったサービスを選ぶことが大切です。 ここでは、メール配信システムを選ぶ時のポイントについて解説します。
関連記事:メール配信システムおすすめ比較20選!専門家が図解とランキング形式で解説
配信規模と料金プラン
メール配信システムは、配信規模によって最適な料金プランが異なります。少量のメールであれば無料プランでも十分ですが、配信リストが増えたり、頻繁にメールを送信する場合は有料プランをお勧めします。
機能の充実度
メール配信システムには、セグメント機能や効果測定など、様々な付加機能が用意されています。必要な機能が揃っているか確認しましょう。
また、不必要な機能がついていることで、金額が高くなっているケースもあります。本当に自社で必要な機能は何かを考えたうえで、必要最低限のプランを選ぶことをおすすめします。
使いやすさ
メルマガ初心者の場合、いきなり高度なデザインの入ったメールを0から作成するのは非常に難易度が高いです。管理画面の見やすさも、メルマガの運用をしていく上では非常に大切です。
無料トライアルやFreeプランを提供しているサービスは、実際に使ってみることができるので、自分に合ったサービスを探すのに役立つでしょう。
配信先の安全性と到達率
到達率も非常に重要です。SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)といった、メールの正当性を保証するための認証プロトコルに対応していないと、メールがスパム扱いされる可能性が高くなります。
特にGmailは送信者ガイドラインもアップデートされているので、これらの対策がなされているシステムを選ぶのは必須といえるでしょう。
関連記事:【解決策】2024年2月よりGmailガイドラインが変更!1日5000件以上の配信は対応必須!
サポート体制
メールの一斉送信は個人情報を扱う非常にデリケートな領域なので、万が一の際のサポート体制は非常に重要です。
特にチャットサポートや電話サポートといった、リアルタイムのサポートが提供されているか、日本語でのサポートがあるかは重要なチェックポイントになりえるでしょう。
一斉送信を効率よく行うならブラストメール

ブラストメールは、15年連続で顧客導入シェア1位を獲得している信頼性の高いメール配信システムです。さまざまな業種や官公庁でも利用されており、定番のメール配信システムとして広く知られています。
開封率やくリック率といった効果測定機能はもちろん、セグメント配信や豊富なテンプレート、HTMLメールエディタなど、基本的な機能はすべて揃っています。最も安いプランなら、月額4,000円で導入することができます。
また、配信速度が高く、到達率が非常に高い点も魅力です。
「高速かつ確実にメールを届けたい」「メールマーケティングにかかるコストを落としたい」「メール配信システムを導入したいが、何を選んでいいかわからない」といった方にはブラストメールがおすすめです。
無料トライアルも用意されているので、まずは試してみることをお勧めします。
API連携・SMTPリレーサービスならブラストエンジン(blastengine)

ブラストエンジンは、日本国内の企業向けに提供されているメール配信プラットフォームで、API連携・SMTPリレーで大量のメール配信やトランザクションメールの配信を効率的かつ確実に行うことができるサービスです。
ブラストメールがメールマーケティング初心者向けなのに対して、ブラストエンジンは技術者向けに開発されたシステムなので、より複雑で柔軟なカスタマイズが可能です。
国内企業が運営しているサービスなので、サポートも日本語でメール/電話の対応が可能でなっており、手厚いフォローが可能です。月額3,000円からとコストパフォーマンスにも優れています。 メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能ですので、まずは気軽にお試しください。
まとめ
本記事では、メール配信システムの基本構造、利点、課題、そして選択肢について解説しました。 メール配信システムは、企業にとって重要なマーケティングツールであり、顧客とのコミュニケーションを強化する上で欠かせない存在です。 最適なメール配信システムを選ぶためには、自社のニーズ、予算、セキュリティ対策などを考慮する必要があります。
FAQ
- Q:メール配信システムを自社で構築(オンプレミス)することは可能ですか?
- A:可能ですが、サーバーの構築やDNS設定、セキュリティ対策など高度な専門知識と多くの工数が必要です。また、構築後も常にメンテナンスが必要になるため、社内に専任のエンジニアがいることが前提となります。
- Q:自社でシステムを構築する場合、最大のリスクは何ですか?
- A:最も大きな課題は、「IPレピュテーション」の管理が難しく、メールが迷惑メール判定されやすくなる点です。到達率を維持するための調整や、キャリアブロックへの対応をすべて自社で行うのは極めて困難です。
- Q:自社構築とクラウド型のメール配信システム、どちらがおすすめですか?
- A:コストや運用の手間、配信の確実性を考慮すると、多くの企業にとって「クラウド型のメール配信システム」の導入が推奨されます。サーバー管理が不要で、到達率を高めるための対策もベンダー側が行ってくれるため、手軽かつ安全に利用できます。






