世の中に自社の商品を選んでもらうためには、質の高いマーケティング戦略が欠かせません。しかし、「マーケティング戦略って一体なにを決めてるの?」「なんか難しそう」と思っているマーケティング担当者は少なくないでしょう。
確かにマーケティング戦略は、SEOや広告といった他のマーケティング施策と違って、抽象度の高い仕事という印象があります。
そこで本記事は、マーケティング戦略の立案について悩んでいる人のために、マーケティング戦略で決めるべきことを順序立てて、分かりやすく解説します。
ダウンロードして使える参考資料・テンプレートも一緒に紹介しているため、ぜひ最後まで読んでください。
マーケティングをはじめるなら、必ず押さえておきたいのが「デジタルマーケティング」についてです。
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目次
マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、「誰に、何を、どう提供するか」が明文化されたものです。
セグメンテーション、ターゲティング、ペルソナ設定 など
ポジショニング、製品・サービス、コンテンツ など
媒体、販売形態、供給量、流通方法、価格 など
「戦略」という割にはシンプルだと思ったかもしれませんが、それはマーケティング戦略という概念自体は抽象性が高いためです。マーケティング戦略の立案作業は決して楽ではないため、その点は注意しましょう。
なぜ、マーケティング戦略を作るのが大変なのか? それは、抽象性の高い事柄を具体的な行動計画へと落とし込むために、多くの複雑な分析作業を踏むからです。
例えば「誰に」を決める際は、自社を取り巻く環境の分析、市場調査、市場の細分化(セグメント)、そしてターゲット設定など、多くのリサーチ・分析をこなす必要があります。
なお、マーケティング戦略はときどき経営戦略と混同されることもありますが、経営戦略は経営リソースをどう割り振るかを明文化したものです。マーケティング戦略と経営戦略は意味が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
マーケティング戦略の重要性
マーケティング戦略はなぜ重要なのでしょうか? それは精度の高いマーケティング戦略を立案し実行することで無駄な仕事が減らせて、スピーディーにビジネスゴールを達成できるためです。「選択と集中」を高い精度で行うためと言い換えてもいいでしょう。
戦略という言葉は「戦いを略する」と書きます。これは戦いを攻略するという意味があると思いますが、筆者としては「戦いを”省略”する」という意味合いも含まれると考えます。
つまり戦略を立てるということは、無駄な戦いを行わず、最短最速で望む成果を出すということです。ビジネスはスピードが命とよくいいますが、だからこそマーケティング戦略は重要といえます。
マーケティング戦略の立案手順
マーケティング戦略を構成する「誰に、何を、どう提供するか」を高い精度で定めるには、以下のような手順を踏みましょう。
- 1,環境分析
- 2,セグメンテーション・ターゲティング
- 3,ポジショニング
- 4,マーケティングミックス
- 5,行動計画の作成・実行
各手順について詳しく解説します。
1. 環境分析
マーケティング戦略のファーストステップは、自社がどのような環境に置かれているかを明らかにすることです。具体的には市場(顧客)調査と競合調査、そして自社の現状把握を行います。
「市場や競合調査といわれても、どんなデータを集めればいいのか分からない」と思ったかもしれませんが、安心してください。
マーケティング戦略の立案では「フレームワーク」がよく用いられます。フレームワークとは簡単にいえば、物事の詳細を決めたり作業を効率化したりするのに役立つ、考え方の枠組みのことです。
例えば「ストーリー展開は起承転結や序破急を意識せよ」とよく言いますよね。この起承転結や序破急も、立派なフレームワークです。
さて、環境分析において役立つフレームワークは、「3C分析」と「SWOT分析」のふたつです(各フレームワークの詳細は後述)。フレームワークはマーケティング戦略の立案を強力にサポートするツールなため、後のステップでも積極的に活用しましょう。
2. セグメンテーション・ターゲティング
自社の置かれている環境が明確になったなら、マーケティング戦略の「誰に」の部分を具体化していきます。具体的には、セグメンテーションとターゲティングです。
まずセグメンテーションとは市場の細分化(セグメントする)を意味し、自社の顧客を性別や年齢など様々な切り口で分類することを指します。
以上に示したのはあくまで一例です。実際には環境分析の結果をもとに、どのような基準で顧客を分類するかを柔軟に考え、決める必要があります。 セグメンテーションが一通り済んだ後は、どのセグメントにマーケティングリソースを集中投下するかを決め、選定したセグメントが持つ欲求やニーズを具体化します。これがターゲティングです。 マーケティング戦略の質はターゲット戦略で8割決まるといっても過言ではないため、このステップは力を入れて臨みましょう。また、担当者ひとりではなく、できれば複数人で意見を出し合って考えるようにしてください。 なお、本ステップの効率化には「STP分析」と呼ばれるフレームワークが効果的です。詳細は後ほど解説します。 「誰に」が定まったなら、次に「何を」の部分を具体化します。ターゲットを効果的に攻略するにあたり、自社はどのような価値を提供するのが適切か、といったことを決める段階です。 提供する価値を決めるに当たって考えるべきは、「競合や代替商品が市場に多数ある中でターゲットから選ばれるため、自社はどのようなポジショニング(立ち位置)を取るか」ということ。 つまりはどのような優位性を立たせるかや、どう他社と差別化するかを考え、議論します。ここでは前のステップでも登場した「STP分析」に加え、「ポジショニングマップ」と呼ばれるフレームワークが有効です。 マーケティングミックスとは、これまでに定めてきたことを踏まえ、「ターゲットに向けて、自社の価値をどのようにして届けるか」を具体化することです。 ここでは「4P分析」というフレームワークを使って、マーケティングミックスを構成する4要素「製品、価格、流通、販促」の内容を検討します。 マーケティングミックスはこれまでの手順と比べて、具体性の高い物事を決める手順です。例えば販促の項では「オフラインか、オンラインか。オンラインだとしたらメルマガなのか、SNSなのか、広告なのか」といった、具体的にどんな打ち手が有効かまで考慮して戦略を組立てます。 マーケティングミックスまで終えたら、マーケティング戦略の立案としては一段落です。しかし、戦略はそのままだと意味がありません。戦略で決めたことを行動計画へと落とし込み、実行に移す必要があります。 戦略の行動計画を立てることは、戦略立案と同じくらい重要なため、最後まで抜かりなく行いましょう。 ここからは、マーケティング戦略の立案を効率化するフレームワークを5つ紹介します。 3C分析とは、マーケティング環境分析を行うためのフレームワークです。環境分析フレームワークの中では最も基本的なものとなります。 3C分析では以下の3要素を軸にマーケティング環境の把握を進めます。 3C分析の精度を高めるポイントは、ファクトとデータの収集を徹底すること。例えば競合項目で代替可能性を検討する際、「ウチの商品は家具だから、代替可能性があるのはたぶん他の家具ブランドかな」という主観で決めてはいけません。 もしかすると、あなたの家具を買わない顧客は、DIYで自ら家具を作っているかもしれません。その場合は代替可能性としてホームセンターなども上がってくるということになります。 顧客アンケートをとったり、座談会を実施したりなど、3C分析を行う際は一次情報の収集に努めましょう。 SWOT分析とは、自社の内部環境と、自社を取り巻く外部環境の情報を列挙し、環境分析を効率化するためのフレームワークです。3C分析と並んでマーケティング戦略立案によく用いられます。 SWOT分析は下記のように「内部環境・外部環境」を示す縦軸と、「ポジティブ・ネガティブ」を表す横軸で成り立ちます。 自社が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと 自社が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと 競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと 競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと SWOT分析の利点は、抜け漏れなく環境情報が把握できることと、業種やビジネスの規模にかかわらず、比較的様々な状況下で役立てられることです。なお、SWOT分析の活用方法は別の記事で詳しく解説しています。本記事とあわせて参考にしてください。 SWOT分析とは?初心者向けにSWOT分析の成り立ちや成功のコツについてわかりやすく解説 STP分析とは、攻略対象となる顧客の選定や、自社のポジショニングなど、マーケティング戦略の軸となる部分を定めるのに役立つフレームワークです。名前のSTPとは、「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング」の頭文字から取られています。 ワンポイントアドバイスとして、ターゲティングのステップでは「ペルソナ設定」を行うのもおすすめです。 ペルソナとは、詳細かつ具体的な属性情報を持つ、「実在感のある架空の顧客像」のことです。顧客像を詳細に作り込んでおくことで、後のステップであるポジショニングが定めやすくなるだけでなく、チーム全体のターゲットに対する共通認識のあやふやさを解消できます。 ペルソナ設定の具体的な方法については、下記資料で詳しく解説しています。そのまま使えるテンプレートも掲載しているため、ぜひ活用してください。ダウンロードは無料です。 【テンプレート付き】この1冊で丸わかり!ペルソナ設定ガイドブック ポジショニングマップとはその名の通り、ポジショニングを可視化した図表のことです。マップはSWOT分析のように縦軸と横軸によるマトリクス図となりますが、各軸に入る要素に決まりはなく、ターゲットやどのような商品を扱うかによって異なります。 例えば一斉を風靡(ふうび)したダイエット商材「ビリーズブートキャンプ」は、それまでのダイエット商材にはなかった「とてもキツいが即効性がある」というポジショニングによって高い人気を得ました。 ポジショニングマップはこのように、他社によって占められていない市場の空白を見つけられるのが利点です。ポジショニングマップ作成に関する詳細は別記事で解説しているため、こちらもあわせて参考にしてください。 ポジショニングマップとは?正しい作り方や作成時の注意点をわかりやすく解説 4P分析とは、価格やプロモーションといった以下4つの要素から、商品・サービスの販売を促すための具体的打ち手を考案するためのフレームワークです。 以上のように4P分析は、マーケティングの実行段階に直接つながるような事柄を決定します。そのため、ここで判断を誤るとマーケティングの効率が落ちるばかりか、戦略自体が失敗に終わることすらあるでしょう。 そうしたこと防ぐためにも、SWOT分析やSTP分析といったそれまでの分析で得られた情報と、4P分析で設定された各打ち手で矛盾や齟齬(そご)が出ないように注意しましょう。 なお、4P分析は「マーケティングミックス」と呼ばれることもあります。マーケティングミックスの詳細は以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。 マーケティング戦略とは、「誰に、何を、どう提供するか」の3点を明らかにした、マーケティングの全体像を表す地図のようなものです。ビジネスゴールを最短最速で達成するためには、マーケティング戦略が欠かせません。 本記事ではマーケティング戦略の立案手順と各種フレームワークについて紹介してきましたが、最後に要点をまとめます。 「まず行動! とりあえずやってから考える」というタイプの人からすると、上記のようなプロセスは、一つひとつがもどかしいものに感じられるかもしれません。しかし、こうした地道な積み重ねこそが、結果的にマーケティング全体のスピードを底上げします。 「やるべきことの全体像を把握する」「仮説を立ててから実行する」ということの重要性はマーケティング戦略に限らず重要です。今後はぜひこの考え方を大事にして、マーケティング活動に取り組んでみてください。
3. ポジショニング
4. マーケティングミックス
5. 行動計画の作成・実行
マーケティング戦略の立案に役立つフレームワーク
3C分析
ニーズ・欲求、市場規模、将来性、トレンド、消費行動の変化 など
経営リソース、ビジネスモデル、事業、企業理念 など
シェア率、参入の容易性、代替可能性、各競合他社のポジショニング などSWOT分析
ポジティブ
ネガティブ
内部環境
強み(Strength)
弱み(Weakness)
外部環境
機会(Opportunity)
脅威(Threat)
STP分析
顧客市場を様々な観点から分類する。分類によく用いられる軸は地域や土地の気候といった「地理的変数」、年齢や性別を指す「人口統計的変数」、人生の価値観や趣味嗜好を指す「心理的変数」、購買頻度や商品知識の量を指す「行動変数」の4つ
セグメンテーションの手順で分類された顧客市場から、ビジネス目的の達成に最も貢献しうるセグメントを選定する。3C分析やSWOT分析で得られた情報と照らし合わせることで精度が高まる
選定したターゲットを効果的に攻略するため、自社の優位性をどのように立たせるか、どのように他社と差別化するか、といったことを定める、ポジショニングマップの作成が有効(詳細は後述)ポジショニングマップ
4P分析
商品・サービスの内容、ラインナップ、品質、デザイン、ブランド、保証 など
価格、割引、クーポン、還元率、用意する決済手段 など
テレビCM、DM、メルマガ、広告、SNS、コンテンツSEO など
販売チャネル、立地、供給量 などマーケティング戦略についてまとめ
3C分析やSWOT分析を活用して、自社の置かれたマーケティング環境を把握する
把握できたマーケティング環境を踏まえ顧客市場を分類(セグメンテーション)し、その中でも有望なセグメントを攻略対象に選定する(ターゲティング)。ここではSTP分析と呼ばれるフレームワークが有効
選定したターゲットを効果的に攻略するため、自社の優位性をどう立たせるか、他社とどう差別化を図るか、といったことを決定する。STP分析に加え、ポジショニングマップの作成が有効
これまでに決定した各情報を元に、プロモーション戦略や価格戦略といった具体的方策を、4P分析を使って抜け漏れなく設定する
戦略をつつがなく実行するために数値目標を設定し、各業務の担当者と期限を設定する。また、月ごとや週ごとといった時間の各尺度ごとに行動方針を定める