マーケティングの効果を表す数値のひとつに、「LTV(Life Time Value/ 顧客生涯価値)」と呼ばれるものがあります。LTVとは簡単にいえば、「顧客一人あたりが自社にいくらの利益をもたらしたか」を表す指標です。
例えばアップセル戦略やリピーター獲得といった施策はすべて、既存顧客からの収益を伸ばす、すなわちLTVの向上を目的としたマーケティング活動といえます。
本記事ではそんなLTVの計算方法と、LTVをもとにしたマーケティング分析の基本をお伝えします。ぜひ最後まで読んでみてください。
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目次
LTVとは?
LTVは「Life Time Value」の頭文字を取ったマーケティング指標で、顧客生涯価値を意味します。顧客生涯価値とはつまり、「その顧客や顧客セグメントが、これまで自社にいくらの収益をもたらしたか」ということです。
例えばある企業における顧客セグメントAは合計10社から成り、その10社から得られた総売上は1億円とします。
一方、顧客セグメントBは合計20社から成り、こちらから得られた総売上は1.5億円です。この場合、両セグメントのLTVは下記のように計算・比較可能です。
- 顧客セグメントAのLTV
1,000万円 = 1億円 ÷ 10社 - 顧客セグメントBのLTV
LTV 750万円 = 1.5億円 ÷ 20社
このようにLTVをセグメントごとで計算することで、「高い収益を得られる顧客の特徴は何か、なぜこちらのセグメントは収益が劣るのか」といった分析が可能になります。
なお、上記計算は分かりやすさを重視しており、計測期間や収益率といった要素を加味していない点に注意してください。より基本的な計算方法は後述します。
LTVは特にB2Bや、B2Cの中でも高額な商品や定額課金サービスを提供する業種で重要視されます。なぜなら、それらの業種では新規顧客の獲得よりも、既存顧客のLTV向上を狙うほうが圧倒的に低いコストで済むためです。
LTVの計算方法
LTVには様々な計算方法がありますが、その中でもよく使われる式を以下に示します。
このようにLTVは、ビジネスモデルやどういった要素を加味するかで計算方法が変わるため、どうすればいいのか混乱するかもしれません。混乱を解消するには、LTVを計算する目的を把握すればよいでしょう。 LTVを出す目的は「ユーザーが自社の顧客となった際、将来的にどれくらいの価値を自社にもたらすか」を予測することです。最終的に一顧客あたりの価値が割り出せれば、どういった計算方法でも問題ありません。 いくつか具体例を上げましょう。例えば「自社は毎年定額の料金が発生する業務支援ツールを提供している。顧客一社あたりの年間取引額は平均60万円で、平均契約期間は5年。なお本ツールの利益率は90%である」という状況です。 この場合、顧客一社あたりのLTVは次の通りとなります。 LTV 270万円 = 60万円 × 90% × 5年 このようにLTVを算出すれば、顧客一社の獲得により、自社にどれだけの利益がもたらされるかが予測できます。 次は「あるキャンペーンで500万円の広告費をかけた。キャンペーン経由で獲得した顧客数は1,000人で、この1,000人から得られた総利益は現在3,000万円に達する」という状況をイメージしてください。 このキャンペーンで獲得できた顧客一人あたりのLTVは下記のように計算されます。 LTV 25,000円 =(3,000万円 ÷ 1,000人)-(500万円 ÷ 1,000人) 減算式の左側は顧客一名あたりの利益(3万円)を算出し、右側は顧客一名を獲得するのにかかった広告費(5,000円)を計算しています。最後に両者を差し引いてLTVは「25,000円」となるわけです。 以上で示したとおり、LTVの計算方法はそのときどきによって変わります。顧客数と売上さえ分かれば最低限のLTVは算出可能なため、まずは手元にある数字で計算を試してみてはいかがでしょうか。 LTVは「顧客セグメントや各施策の評価・比較」と、「目標CPAの算出」を行うときに活用しやすい指標です。ここからは、それらの場面においてLTVが具体的にどう役立つかを解説します。 LTVを顧客セグメントや施策ごとに算出することで、各セグメントや施策の評価・比較が定量的に行えるようになります。 また、その結果どのセグメント・施策にリソースを集中投下すればよいか、逆にどのセグメント・施策へのリソース投入を止めるべきか、といった判断の精度も高まります。 例えばある商品における20代の顧客セグメントと、40代の顧客セグメントを比較したいとします。20代のセグメントは総利益が1億円で、40代の顧客セグメントにおける総利益は3億円です。 こうして見ると40代セグメントの方が多くの成果を得られているように見えますが、顧客数も加味してLTVに直すと、違った結果が見えてきます。 では、20代セグメントの顧客数は1,000人で、40代セグメントの顧客数は6,000人としましょう。この場合、LTVは下記のようになります。 このようにLTVとして比較すると、実は20代セグメントの方が、一人あたりが自社にもたらす利益は多いのがわかります。そのため20代セグメントの獲得単価を40代セグメント以下に抑えられれば、より収益のスピードは上がるのです。 セグメントの他にも「リスティング広告とアフィリエイト広告のパフォーマンスを分析したい」といったシチュエーションでも、LTVをベースにした比較が効果的です。 LTVを算出することで、今後のマーケティング活動におけるCPA(顧客獲得単価)上限が逆算しやすくなります。 先の例でいえば20代セグメントのCPAは10万円以下に、40代セグメントの場合は5万円以下に抑えなければ、損益はほぼ確実にマイナスになってしまうことが分かるでしょう。 実際にCPAが10万円もかかるケースはまれなため、本場面は顧客単価が数千~数万円などの低単価なビジネスを行っている場合に役立ちやすいといえます。 LTVの計算式を構成する各要素はそのまま、LTV向上のヒントです。例えば平均購買単価を上げたり、顧客の獲得単価を下げたりすればLTVは向上します。より具体的な方法としては挙げられるのは、以下の5つです。 各方法について詳しく解説します。 既存顧客により高価な商材を買ってもらう「アップセル戦略」を実践することで、平均購買単価が上がり、LTVも向上します。 例えば家電・ガジェットは性能によって値段が大きく変わります。これは各製品に価格や性能でランク付けを行うことで、高価な製品の購買を促すため戦術といえます。 なお、他人にはハードルの高い、高価な商品を欲しがる顧客心理のことを「スノッブ効果」「ヴェブレン効果」と呼びます。詳細は以下の記事で解説しているため、あわせて参考にしてください。 既存商材の値上げを行うことで、新商品や新プランを準備せずとも平均購買単価を上げることが可能です。記憶に新しい例でいうと、映像コンテンツのサブスクリプションサービス「Netflix」は、2021年2月に月額料金を約12%値上げしました。 「Netflixは広告による収益モデルを徹底して取り入れない」と同社のCEOが発言しており、値上げはLTVの向上策として踏み切ったということなのでしょう。 低水準のインフレ率が続く日本において、値上げは勇気がいる決断ですが(特にB2C)、値上げを行ったNetflixはその後、解約率が改善したという決算発表を行っています。 顧客が商品・サービスの質に満足しているのなら、多少の値上げは問題にならないことを示す事例です。 小売りやECサイトといった買い切り型のビジネスを行っている場合、既存顧客の購買頻度や購買個数を増やすことでLTVは向上します。また、飲食店や美容院といったサービス業においても、既存顧客の再来店や予約を促すことでLTVが改善可能です。 つまりはリピーター化を促したり、クロスセル戦略を実行するのです。そのためには既存顧客が再び買い物をしたくなるような付加価値を作ったり、こちらから顧客に繰り返し接触したりして、想起率の向上を目指しましょう。 なお、リピーター獲得戦略については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 リピーターの獲得方法を解説!リピーター化を促すコスパ最強のツールとは? 月や年ごとで料金が発生するサブスクリプション型のビジネスを行っている場合は、顧客の解約を予防することでLTVが向上されます。また、サブスクリプションサービスを提供していない場合は、これを導入することでLTVの向上が期待できます。 商品原価や新規顧客単価など、商品提供までにかかる費用を下げれば利益率が上がり、結果的にLTVが向上します。要するにコストカットです。中でも顧客維持にかかるコストを下げることは、LTVの底上げに最も効きます。 しかし、LTVを根本的に改善したいなら、まずは値上げやリピーター獲得といった「売上獲得」の側面に焦点を当てて対策しましょう。コストカットはLTVの向上というよりビジネスの体質改善という側面が強いためです。 ここまでLTV向上に役立つ方法をいくつか紹介しましたが、それらすべての軸となる基本施策があります。それは、メルマガやDMを利用した定期的な接触です。 なぜならLTVを向上させるには、商品をリピート購入してもらったり、普段より高価なサービスを受けてもらったりする必要があるためです。これらを促すにはどれも、定期的な接触によって既存顧客のマインドシェアを獲得し、想起率を高める必要があります。 既存顧客との定期的な接触手段として最もおすすめなのはメルマガです。メルマガは作成コストがDMよりも格段に低いため、導入・継続しやすく、またリターゲティング広告やSNS広告などよりも高い費用対効果が得られます。 またメルマガ施策を行っておらず、導入イメージや作り方が分からないという方は、下記資料を読んでみてください。 これで全部分かる。もう迷わない。みんな読んでるメルマガ作り方大全 こちらの資料では、メルマガを導入する際の注意事項や、件名や本文の作り方まで詳しく、なおかつ分かりやすく解説しています。ダウンロードは無料です。 LTVとは「顧客一人あたりが自社にどれくらいの価値をもたらしたか」を示す、マーケティング指標です。各顧客セグメントや、マーケティング施策を評価・比較したいときにLTVは良く用いられます。 また、顧客単価が数千円から数万円台などの比較的低いビジネスにおいて、上限CPAを逆算する目的でもLTVは活用できます。 モノやサービスがあふれる現代では、顧客と自社のエンゲージメントを高め、自社商品・サービスを選び続けてもらうことが最重要課題です。つまり自社を長く存続させるには、LTVの向上に焦点を当てたマーケティング活動が欠かせないということです。 LTVの向上にあたっては、商品の値上げやリピート購入の促進など様々な方法論がありますが、それらすべての軸となるのが「顧客との定期的な接触」です。メルマガやDMといった、自社から顧客へ接触できる手段を持ち、継続的なアプローチを行いましょう。
LTV = 平均購買単価 × 利益率 × 契約期間(もしくは購買頻度)
LTV = (平均購買単価 - 平均顧客獲得コスト) × 利益率 × 契約期間(もしくは購買頻度)
LTV = 平均購買単価 × 平均購買回数
LTV =(売上 - 原価)÷ 顧客数LTVが活用できる場面
顧客セグメントや各施策の評価・比較
CPAの上限を知る
LTVを向上させる5つの方法
より高価な商材を購買させる
値上げする
より多く購買させる
契約を維持する
コストを下げる
LTVの向上に欠かせない基本施策とは?
まとめ:LTVの向上が業績を盤石なものにする