リピーター獲得はマーケティングの優先課題ですが、「思うようにリピーター化が促進できない……」と悩むマーケティング担当者は多いでしょう。
また、自社が扱う商品・サービスの質に自信があるほど、その悩みは深くなるはずです。「商品・サービスが良質ならもう一度買われるのは当然」と思うのは、ごく普通の思考といえます。
しかし結論からいうと、リピーター獲得の問題は商品・サービスの質とまた別の要素が関係しています。
本記事ではその要素とは何なのかという点と、リピーター獲得の具体的な方法について解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
顧客がリピーターにならない最大の理由とは?
なぜあなたのショップを利用した顧客はリピート購入しないのでしょうか? 真っ先に思いつくのは「商品・サービス内容が不満だったから」ということですね。確かに商品・サービスに対して悪印象を持っているユーザーにいくらリピートを促しても無意味です。
しかしながら、実のところリピーターにならない最大の理由は別にあります。それはズバリ「忘れたから」です。つまりいざ商品が必要というときに、顧客はすでにあなたのショップを忘れてしまっており、そもそも検討対象にすらなっていないということです。
例えば、あなたがとあるECサイトで、たまたま割引になっていたコーヒー豆を1kg買ったとします。コーヒー1杯あたりの豆の消費量は10gほどなため、一日3杯欠かさずコーヒーを飲んだとしても、1kgすべて使い切るには一ヶ月以上かかる計算です。
そしてコーヒー豆をいよいよ使い切りそうになり、補充が必要というタイミングであなたは例のECサイトを思い出すでしょうか?
あなたはコーヒー豆を無くなるまで消費しているため、少なくとも商品に悪い印象は持っていないでしょう。もし商品が良ければリピーターが獲得できるという論理でいくなら、きっとECサイトのことを思い出すはずです。
しかし、おそらく現実は違います。コーヒー豆を消費する一ヶ月の間に、あなたは例のECサイトのことを忘れているため、リピート購入はしないでしょう。
なぜなら、最初にコーヒー豆を買った動機がそもそも「セール対象で安くなってたから」であり、次も価格を重視して探すだろうということが予想できるためです。そのため、仮にECサイトへ再訪したとしても、安くなってなければリピート購入はしないでしょう。
こうしたことを防ぐには、「コーヒーの味はいかがでしたか?」「違いが分かる!コーヒー豆飲み比べセット」といったアプローチを定期的に行い、顧客のマインドシェアを獲得したり、価格以外の購入動機を与えたりしなければなりません。
要するに、ショップや商品を覚えてもらうことが、リピーター獲得の第一歩ということです。
リピーター獲得戦略の立案に欠かせない「CPM分析」
リピーター獲得戦略を立てるためにまず行うべきは顧客の分類、すなわちセグメンテーションとなります。
なぜなら既存顧客と一口にいっても、「初回購入からどのくらい日にちが経過しているか」「購入金額は累計いくらか」などによって効果的なアプローチは異なるためです。
肝心なセグメント方法ですが、ここではCPM分析と呼ばれる考え方が役立ちます。
CPM分析とは、顧客をいくつかの軸でセグメントし、優先的に攻略すべき顧客を見極めたり、各顧客ごとで最適な育成方法を行うためのフレームワークです。顧客ポートフォリオマネジメント(Costomer Portfolio Management)ともいいます。
また、これから紹介するCPM分析は、健康食品メーカーの「やずや」が考案したものとなります。やずやが考えたとはいえ、健康食品業界以外の業界でも役立つフレームワークとなっているため、ぜひ活用しましょう。
さて、やずや式のCPM分析において、セグメントの軸となるのは下記の3つです。
そして、これら3軸から以下の通り顧客を現役層と離脱層の2層に分け、なおかつ層ごとで5グループ(計10グループ)に分類します。 この分類を利用して、まずは自社の顧客がどのような状態にあるか、グラフなどを利用して可視化します。 例えば初回離脱客が多ければ、それは初回現役客を取りこぼしているということです。ここからは、初回購入時、次回の買い物で利用できるクーポンやポイントを付与するといった施策が考えられるでしょう。 なお、ここで示した利用期間や購入金額は、あくまで「やずや」が使っていた数字です。実際に自社のビジネスへ応用する際は、自社における離脱の定義や顧客単価を元に設定しなおしましょう。 ここからは、やずや式CPM分析を元とした各顧客グループにおけるリピーター獲得について解説していきます。 初回客の2回目の購入を促すには、定期的な接触を行うことでマインドシェアを獲得することが基本です。アプローチ内容としては、商品の知識や使い方といったような、商品の利用体験が高まる内容がいいでしょう。 そうすることで「良い買い物をした」と感じてもらえるため、購入意欲が高まりやすくなります。また、最初の購入時点でポイント付与やクーポンプレゼントを行い、二回目購入のきっかけを作っておくのも効果的です。 よちよち客へも初回客と同様に定期的なアプローチが再購入につながりますが、効果的な内容は異なります。 二回目の購入につながっているということは、商品そのものはすでに十分気に入っているということです。しかし、購入理由が「商品が良いから」に過ぎないのであれば、あなたの商品よりさらに良い商品を知ったら、顧客はそちらに流れてしまいます。 そこでよちよち客に対しては、商品・サービスの機能的な良さだけでなく、他社にはない自社だけのこだわりや、ブランドストーリーなどといった思想的な部分もあわせて伝えましょう。 つまり「商品が良いから買う」という状態から、「そのブランド・会社だから買う」という、より堅固な購入理由を育てるのです。 例えばスポーツウェアブランドの「Nike」は、多様性をコンセプトとしたコマーシャルを多く公開しています。 https://www.youtube.com/watch?v=JI1zJ6-SYhU 多様性はスニーカーの履き心地とまったく関係ありませんが、これは多様性という思想に共感するユーザーを取り込む企業戦略といえるでしょう。 コツコツ客はすでにあなたの商品・サービスを複数回購入しているため、商品の良さをよく知っていますし、ブランドへの共感も高い状態です。ここからは優良客化を目指すべく、さらに商品を購入させてLTV(顧客生涯価値)の向上を図りましょう。 LTV向上の具体的手法としてはアップセル・クロスセル戦略が有効です。 コーヒー豆の例でいえば、普段は安価なブレンド豆を購入しているユーザーに、ブルーマウンテンやブラックアイボリーといった高級品種のオファーすることはアップセル戦略のひとつです。 また、いつも購入している豆に高級品種の豆を少量セットにして販売すれば、それはクロスセル戦略になります。 世話になっている顧客に高い商品を買わせるなんて、と抵抗を持つ人もいるかもしれません。しかし、高い商品が売れることや、商品がいつもより高い値段で売れるということは、それだけあなたの商品が信頼されている証であり、むしろ誇るべきといえます。 それに、あなたの商品を何回も買うほど気に入っている顧客なら、提案されれば「ちょっと試してみようかな」と前向きな気持ちになるものです。アップセル・クロスセルには自信を持って取り組んでいきましょう。 リピーターの獲得という点でいうと、優良客化は一旦のゴールといえますが、だからといって優良客に対して何もしなくて良いわけではありません。 なぜなら、アプローチを間違えば、優良客も離脱する可能性があるためです。むしろリピーター戦略は優良客の維持からが本番といえます。なぜなら、多くの場合、ビジネスの売上の8割は、わずか2割の優良客が生み出しているためです。 優良客を離脱させないためには、他の顧客よりも扱いを優遇して、顧客ロイヤリティの向上を図りましょう。顧客があなたの商品をひいきにするのと同じように、あなたも優良客をひいきにするということです。 もちろん、初回客からコツコツ客で実践しているのと同様、定期的な接触も継続しましょう。このとき、メルマガやDMの内容を差別化し、VIP待遇を実感させるのも有効ですね。 流行客は大型セールの実施などで、短期間のうちに多くの買い物をしてくれた顧客です。優良客と同じく購入単価が高いため同じような扱いをしてしまいがちですが、ここには落とし穴があります。 というのも、流行客は商品の善し悪しよりも安さに食いついており、リピーターにはなりにくいのです。 そのため、できる限り流行客を増やさないよう、割引の連発は控えましょう。「よく安売りしているところ」という印象が一度根付いてしまうと、商品の良さで訴求するのが難しくなってしまいます。 ここまでリピーター獲得を解説するにあたり何度か登場した「定期的な接触」というワードですが、これを実現するにはメルマガの活用が最適です。 なぜならDMやSNS、そしてリターゲティング広告など他の手段と比べ、メルマガは以下のようなメリットがあるためです。 もし現在メルマガを実践していないなら、まずはメルマガを始めましょう。リピーター獲得はとにかく定期的な接触がカギであり、これを高いレベルで実現できるのは現状メルマガしかありません。 リピーターを獲得するには、まず顧客を利用期間や購入金額といった軸で分類し、「初回顧客の離脱率が高い」「流行客が多すぎる」など、課題を明確化することから始めましょう(CPM分析)。なぜなら、効果的なアプローチは顧客ごとに異なるためです。 しかし、初回客から優良客まで、すべての顧客グループで一貫して言えることがあります。それは「定期的な接触」がリピーター獲得のポイントということです。 顧客がリピーターにならない最大の理由は、記事冒頭で示したとおり「あなたのショップや商品を忘れているから」です。初回購入の体験でどんなに大きなインパクトを与えられても、定期的な接触がなければ必ず忘れられてしまいます。 これはどんなに一発ギャグに優れたお笑い芸人でも、ブームが去って露出がなくなれば、視聴者から忘れ去られてしまうのと同じです。 さて、定期的な接触を実現する具体的方法としては、メルマガが最適です。メルマガならDMと違って、週に2, 3回というペースで送っても手間がかかりませんし、費用もリターゲティング広告などより安く抑えられます。 ただし、「すぐできるから」「無料だから」といって、GmailやOutlookを使ってBCCなどでメルマガ配信するのはおすすめしません。 なぜなら、BCCを使ったメール配信は情報漏洩リスクがあるためです。メルマガを運用するなら、メール配信システムの導入が必須になります。 セキュリティの観点からだけではありません。メルマガ読者の管理やメールの開封率・クリック率の測定など、メール配信システムには、メルマガ配信に必要な機能がすべて備わっています。 メール配信システムはサービスがいくつもあって選ぶのが大変なため、以下の記事を参考にしてください。様々なメール配信システムの機能や料金を分かりやすく比較しています。
▼ 現役層
▼ 離脱層
1. 初回現役客:購入実績が一回ある
6. 初回離脱客:初回購入から240日経っている
2. よちよち現役客:初回購入から90日以内に二回目の購入をした
7. よちよち離脱客:初回購入から90日以内に二回目の購入をしたが、最終購入日から240日経っている
3. コツコツ現役客:初回購入から90日以内に三回以上購入したが、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7未満」である
8. コツコツ離脱客:初回購入から90日以内に三回以上購入し、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7未満」だが、最終購入日から240日経っている
4. 流行現役客:利用期間90~210日で、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7以上」である
9. 流行離脱客:利用期間90~210日で、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7以上」だが、最終購入日から240日経っている
5. 優良現役客:利用期間が210日以上で、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7以上」である
10. 優良離脱客:利用期間が210日以上で、累計購入金額が「平均顧客単価 × 7以上」だが、最終購入日から240日経っている
顧客ごとのリピーター獲得のポイント
初回客:定期的に接触する
よちよち客:ブランドメッセージを伝える
コツコツ客:さらに購入させてLTVを向上させる
優良客:顧客ロイヤリティの維持・向上でファン化を促す
流行客:積極的に追わない、増やさない
リピーター獲得の促進ならメルマガが最適
まとめ:リピーター獲得の第一歩は顧客の分類から!