あなたは学生の頃、席が隣の異性に訳もなく惹かれたり、よく見るコマーシャルの歌をふとした瞬間に口ずさんだりすることは、ありませんか?
それらはもしかすると、ザイアンス効果によるものかもしれません。
ザイアンス効果とは簡単にいうと、よく会う人やよく聴く歌は、ただ「何回も接した」というだけで好きになってしまう現象のことです。
ザイアンス効果はビジネスに応用できるため、もしあなたがマーケティングや広告、そして営業といった業務に携わっているなら、ぜひ覚えておきましょう。
それではザイアンス効果について解説していきます。
マーケティングをはじめるなら、必ず押さえておきたいのが「デジタルマーケティング」についてです。
デジタルマーケティングは近年、マーケティング業界で大きく注目を浴びており、マーケティングに少しでも携わる方なら「どんなマーケティング手法なのか」を知っていて損はありません。
このブログでは大好評の「デジタルマーケティング大全」を無料プレゼント中です! 初心者向けに分かりやすく解説していますので、ぜひご一読ください。
目次
ザイアンス効果とは?
ザイアンス効果とは、最初は興味がなかった物事や人でも、何度も接するうちに、好きになっていく心理的現象のことを指します。別名「単純接触効果(mere exposure effect)」「熟知性の原則」とも呼ばれます。
例えば流行の歌はラジオ、テレビCM、友人知人とのカラオケなど、生活におけるあらゆる場面で流れるため、望まなくても何度も聴くことになります。
そのため、初めは全く興味がなかろうと、そのうち自分もカラオケで歌うようになるほど、その歌を気に入ることがあります。これがザイアンス効果です。
ザイアンス効果は多くの論文でその効果が実証されています。「頭が楽なら顔にはほほえみ(原文: Mind at Ease Puts a Smile on the Face)」という2001年に発表された論文では、参加者の顔に電極を取り付け、わずかな表情の変化を調べる実験について記されています。
その実験では参加者に何枚かの写真を見せるのですが、そのうち、事前に輪郭を見せたことのある写真については、参加者の表情筋が和らいだり、かすかな笑みが浮かんだりしたそうです。
ザイアンス効果の発見自体は、2001年よりもさらに遡ります。著名な心理学者であるロバート・B・ザイアンス(1923~2008)は、学者人生の大半を、刺激の反復に対して人が抱く好意の研究に捧げました。
そして1968年、繰り返される刺激に人が好意を抱く現象のことを、「単純接触効果(ザイアンス効果)」と名付けたのです。
サブリミナル効果との違い
ザイアンス効果と似た心理的現象のひとつに「サブリミナル効果」があります。両者は共通する部分もあるのですが、以下の通り、基本的には異なる概念です。混同しないように注意しましょう。
- ザイアンス効果
初めは興味がなかった物事や人も、刺激の反復によって好きになる心理的現象のこと - サブリミナル効果
意識では捉えられないレベルの刺激によって、潜在意識が影響を受ける心理的現象のこと
サブリミナル効果には、ある有名な話があります。
1957年にアメリカで放映された映画『ピクニック』において、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というコマを人が認識できないほど短時間(1/3000秒)映したところ、コーラとポップコーンの売上げが急増した、という話です。
しかしながら、このような現象は後の実験では確認されず、サブリミナル効果の影響は限定的であることが知られました。
一方、ザイアンス効果の実験では、認識できないレベルの刺激が無意識下に影響を与えることが実証されています。むしろ、ザイアンス効果はその刺激に人が意識を向けていないときほど強く働く、ということがザイアンスの論文に記されているのです。
こうして聞くと、サブリミナル効果をマーケティングに活用したくなるかもしれませんが、サブリミナル広告の利用はテレビ局で規制されており、倫理的にも好ましいといえません。進んで活用するのはやめておいた方が良いでしょう。
マーケティングにおけるザイアンス効果の活用法
ザイアンス効果はその特性から、ユーザーからの信頼を得る手法としてマーケティング・営業でも活用されます。その代表的な例が以下の7つです。
- リターゲティング広告
- SEO
- メルマガ
- SNS
- スマホアプリのプッシュ通知
- テレビコマーシャル・YouTube 広告
- 車内広告
- 飛び込み営業
リターゲティング広告(リマーケティング広告)
リターゲティング広告とは、一度サイトにアクセスしたことがあるユーザーを対象に配信されるWeb広告のことです。
「一度サイトに訪れた」ということは、ユーザーはそのサイトのコンテンツや商品に興味があるということです。そうしたユーザーに広告を繰り返し配信することで、ザイアンス効果が期待できます。
SEO
何か特定の分野に従事していれば、インターネットでその分野について調べ物をすることがあるはずです。また、その分野の検索結果でよく上位に来るサイトがあれば、あなたはそのサイトを好意的に見ているでしょう。
掲載順位が高いという権威性だけでも信頼材料としては十分ですが、「調べ物をしていたらよく出てくるサイト」という意味で、ザイアンス効果の影響もあるのです。
メルマガ
メルマガはユーザーとの接点のひとつであり、繰り返し配信することでザイアンス効果ができます。
また、ECサイトで商品を購入した後、商品の使い方をフォローするメールや、レビューを依頼するメールが来ることがあるでしょう。
これらはもちろん顧客満足度を高めたり、レビューによってさらなる売上促進を図るためだったりが本来の目的ですが、顧客にメールで接触することによるザイアンス効果も期待できるのです。
SNS
TwitterやInstagramといったSNSで定期的に投稿することでフォロワーとの接触回数が増え、ザイアンス効果が期待できます。
また、SNSで何かしらトレンドが起こると多くの企業アカウントが便乗しますよね。それは認知を広げるためと同時に、フォロワーでないユーザーのフィードに定期的に登場することでザイアンス効果を狙うためでもあります。
スマホアプリのプッシュ通知
現代人がいつも肌身離さず持っているものといえばスマホです。そのためスマホアプリの通知は、ザイアンス効果を起こすのに必要な「繰り返し接触する」という意味で最高のツールです。
テレビコマーシャル・YouTube 広告
テレビコマーシャルはザイアンス効果を活かすのに適しています。
一昔前であれば誰でもお気に入りのテレビ番組があり、それと同時に同じCMを何度も見た、という経験をしたことがある人もいたはずです。あなたにも、繰り返し見たおかげで「なぜだか印象に残っているコマーシャル」があるかもしれません。
それと似たことを再現できるのがYouTube 広告です。特に若年層はテレビを一切観ない人が比較的多く、若年層に向けて映像広告を流すなら、テレビよりもYouTubeの方が効果的なこともあります。
車内広告
電車やバスは、都会の社会人や学生なら毎朝乗るものです。また、業務の都合上、移動の機会が多く、タクシーをよく利用するという人はタクシー広告を目にすることも多いでしょう。
つまり、車内広告は接触回数を担保しやすく、ザイアンス効果を活かしやすい広告媒体といえます。
飛び込み営業
飛び込み営業は数ある営業手法の中でも、特に難易度が高いとされていますが、ザイアンス効果を活用することでハードルを下げられます。
例えばファーストコンタクトでは名刺交換と軽い自己紹介だけ、二回目の接触ではペライチを渡す、三回目の接触では軽い雑談といった具合で接触を重ねれば、次第に相手はあなたに対して好意を抱くようになるでしょう。
営業でザイアンス効果を活用する際の注意点は第一印象です。後でも詳しく解説しますが、第一印象が悪いと、接触を重ねても逆効果であることが知られています。
ファーストコンタクトで好印象を与えられるよう、最初の訪問は相手の反応を見て柔軟に対応してください。また、身なり、表情、言葉遣いなど、第一印象を良くするための基本的な要素に気を配りましょう。
運悪く最初の訪問に失敗してしまった場合は、しばらく日をおいて再訪問すればやり直しが効きます。
ザイアンス効果を活用するときの注意点
接触回数を重ねるだけでユーザーの好感を得られるとされるザイアンス効果ですが、マーケティングに利用するに当たっては注意点があります。それは以下の3つです。
- 第一印象が悪ければ逆効果になってしまう
- 接触期間が空くと効果が薄い
- 接触が一定量を超えても効果は薄くなる
悪印象を与えたら逆効果になってしまう
相手が何らかの物事に対して悪印象を抱いていた場合、それに繰り返し接触してもザイアンス効果は起きません。
例えば、ユーザーを不快にさせる画像やコピーを使った広告を繰り返し配信したり、ユーザーが「しつこい、多すぎる」と感じるほど大量のメルマガを送ったりなどです。こうしたことは、むしろネガティブな感情をさらに刺激してしまう可能性があります。
接触期間が空くと効果が薄い
ザイアンス効果を起こすには、短期間で複数回の接触を重ねる必要があります。例えばメルマガであれば、1ヶ月に一回の配信ではユーザーの印象に残りません。1週間に2, 3回、場合によって毎日一通は配信しなければ、ザイアンス効果は望めないでしょう。
しかしながら、多すぎる接触は、先ほども解説したとおりユーザーに不快感を与える可能性があります。どのくらいの接触頻度が適切なのかは、ユーザーの反応を見て調整しましょう。
接触が一定量を超えても効果は薄くなる
ザイアンス効果の名前の由来である心理学者 ロバート・B・ザイアンスの実験によって、「接触回数が一定量を超えると、好感度の上昇が緩やかになる」ということが実証されています。
つまり、ザイアンス効果による好意の獲得は、短期間に限られるということです。例えば効果が出たからといって同じ広告をひたすら擦り続けても、ザイアンス効果による成果の獲得は望めないというわけです。
ザイアンス効果についてまとめ
ザイアンス効果とは、初めは興味がなかったことも、繰り返し接触することで好きになっていく心理的現象のことです。ザイアンス効果を確認する実験はこれまでに何度も行われており、人間の本能レベルで起こる効果であることが実証されています。
その性質上、ザイアンス効果はマーケティングや広告で利用されることが多く、実際、マーケティングで成果を上げるのに役立っています。
ザイアンス効果を獲得するコツは、人の集まるところに何度も、あるいは長期間露出することです。例えばスマホアプリやメルマガ、テレビコマーシャルなどがその例となります。
ただし、接触回数が一定量に達すると、そこからは好意の上昇がゆるやかになることが実験によって証明されています。
また、そもそも印象が悪い物事に対して繰り返し接触しても、ザイアンス効果は起こりません。ザイアンス効果は万能薬というわけではないため、過信は禁物です。
また、今回紹介したマーケティングにおけるザイアンス効果の活用法の中で最も取り組みやすく、効果が出やすいのが、メルマガ配信です。
メルマガ配信については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。