「自社商品・サービスの強みがどこにあるのかイマイチわからなくなってきた」
「新商品の企画担当になったが、ターゲットにどんな点を訴求したら良いのか思いつかない」
こういった悩みを解決するのに役立つ分析手法のひとつに、「ポジショニングマップ」というものがあります。
ポジショニングマップは、ターゲット市場における自社の商品・サービスの立ち位置、すなわちポジショニングがどうなっているかを視覚化した図表のことです。
ポジショニングマップの適切な作り方を覚えれば、一人で分析するときはもちろん、ミーティングの場でも役立ちます。
何かと便利なポジショニングマップですので、ぜひ本記事で作成方法を覚えてみてください。
マーケティングをはじめるなら、必ず押さえておきたいのが「デジタルマーケティング」についてです。
デジタルマーケティングは近年、マーケティング業界で大きく注目を浴びており、マーケティングに少しでも携わる方なら「どんなマーケティング手法なのか」を知っていて損はありません。
このブログでは大好評の「デジタルマーケティング大全」を無料プレゼント中です! 初心者向けに分かりやすく解説していますので、ぜひご一読ください。
目次
ポジショニングマップとは?
ポジショニングマップとは、意味の異なる2軸で作られたマトリクス上に、自社・競合他社の商品・サービスを配置した図表のことを指します。
ポジショニングマップは、その商品・サービスにおいて今後どのようなマーケティング戦略をとるべきかを決めるのに役立ちます。
なぜなら、ポジショニングマップを作ることで、自社・競合他社が市場においてどのようなポジションを占めているかが視覚的にわかるようになり、差別化や優位性の確立が図りやすくなるためです。
また、既存商品・サービスのマーケティング戦略を見直すときはもちろん、新商品・サービスの立ち上げにもポジショニングマップは活用できます。
ポジショニングマップの作り方
それではポジショニングマップの作り方を見ていきましょう。ポジショニングマップを作るときの大まかな手順はこちらです。
- 自社ターゲットのKBF(購買決定要因)のうち、重要なものを列挙する
- KBFの中でも、購買の決め手となりうるものを抽出する
- 自社と競合他社の商品・サービスのKBFを比較する
- ポジショニングマップを作り、分析する
今回は「在宅勤務の開始をきっかけに自宅の作業環境を整えたいと考えている一人暮らしの若い男性をターゲットに、オフィスチェアの新製品を企画中のA社」を例にとって、各手順について詳しく解説していきます。
① 自社ターゲットのKBF(購買決定要因)を列挙する
いきなりポジショニングマップを作ろうとする前に、まずは情報の洗い出しと整理から始めていきましょう。
ポジショニングマップを作るときに必要な情報はズバリ、自社ターゲットの「KBF」です。
オフィスチェアの場合、肘置きの有無や調整機構の豊富さ・柔軟さといった、快適さを左右する要素が購買決定に影響を大きく与えるでしょう。あとはもちろん、価格も影響を与えるはずです。
このように、まずは自社の商品・サービスの特徴・機能の中でも、KBFとなりうる要素を洗い出していってください。
② KBFの中でも、購買の決め手となりうるものを抽出する
KBFが洗い出せたら、ターゲットにとって購買の決め手となるであろうKBFはどれかについて考えましょう。
今回の場合は「在宅勤務の開始をきっかけに自宅の作業環境を整えたいと考えている一人暮らしの若い男性」がターゲットなため、快適性に関係する機能はかなり重要でしょう。おそらく予算も限られていそうです。
また、自宅の間取り・広さが限られる可能性が高いことを考えると、製品の大きさも重要かもしれません。一方、組み立ての難易度や重さ、そしてデザイン性などはあまり重要視しないでしょう。
このように各KBFの重要度を決めていくことで、ポジショニングマップ作成時にどのような要素を軸にするかについて、適切な判断が下せるようになります。
③ 自社と競合他社の商品・サービスのKBFを比較する
KBFの重要性を決定したら、自社と競合他社のKBFを比較します。今回はA社(自社)の競合他社として「低価格帯のオフィスチェアを中心に取り扱うB社」と、「高級オフィスチェアメーカーのC社」を例に取り上げて、下記の通り表で比較してみました。
オフィスチェアのKBF | 重要度 | A社(自社) | B社 | C社 |
価格 |
高 | 中価格 | 低価格 | 高価格 |
大きさ |
中 | 大きい | 小さい | 大きい |
重さ |
低 | 男性なら抱えて動かせる重さ | 女性でも抱えて動かせる重さ | 男性なら抱えて動かせる重さ |
キャスター |
高 | キャスターあり | キャスターあり | キャスターあり |
機能 |
高 | ランバーサポート・ヘッドレスト・アームレスト・フットレスト・リクライニング | アームレスト | ランバーサポート・アームレスト・リクライニング |
調整可能な機構 |
高 | 座面の高さ・前後に加え、各レスト・サポートの調整可能 | 高さのみ調整可能 | 座面の高さ・前後に加え、各レスト・サポートの調整可能 |
素材 |
中 | メッシュ | メッシュ | メッシュ |
クッション |
高 | やわらかめ | 薄い | やや柔らかめ |
デザイン性 |
低 | 中 | 低 | 高 |
組み立て |
低 | 大変 | 比較的かんたん | 組み立てサービスあり |
ブランドイメージ |
中 | オフィス用品専門のサプライヤー | 低価格帯の家具メーカー | 人体工学に基づいた設計が売りの高級路線 |
口コミ・レビュー評価 |
中 | 新製品のため口コミはない | 評価は高く、件数も多い | 件数は少ないが評価が高い |
保証 |
低 | 1年保証 | 3ヶ月保証 | 10年保証 |
※ 太字=最も優位 下線=2番めに優位 |
このように比較するだけでも、今回取り上げたターゲットに対してA社がどのような優位性をアピールできるかが見えてきますね。ここからポジショニングマップを作ることで、情報をさらにシンプルに捉えられるようになります。
④ ポジショニングマップを作り、分析する
KBFの比較ができたら、いよいよポジショニングマップを作っていきましょう。今回は優位性の把握を目的として、「機能」を横軸に、「クッション性」を縦軸にしてマトリクスを組んでみます。
A社が企画中の新製品は、競合他社と比べて多機能なことと、やわらかめのクッションに優位性があるようです。そのため基本的なマーケティング戦略としては、豊富な機能と快適なクッション性をメリットとして押し出す形になることが想像できます。
また、C社もA社と似たような特徴を持ち合わせているため、差別化を図るために、C社よりも求めやすい価格であること押し出すのも必要でしょう。
このように、ポジショニングマップを作ることで「競合他社と比べて自社にどのような優位性があるか」を把握できたり、「差別化を図れるポイントはどこか」を決めるきっかけを得られたりするのです。
また、ポジショニングマップでは、競合のいない市場の「空白」を見つけられるのも利点です。
今回の例の場合は「シンプルでやわらかめ」のオフィスチェアと、「多機能で硬め」のオフィスチェアの領域には空白があります。
「機能は少ないけどクッションが柔らかくて疲れにくい」というオフィスチェアに一定の需要があるのなら、そこのポジショニングを取ることで売上を拡大させられるだろう、という仮説を立てられます。
ポジショニングマップ作成時のポイント2つ
適切なポジショニングマップ作成のために抑えるべきポイントを2つ解説していきます。
重要度の高いKBF(購買決定要因)を軸にする
ポジショニングマップのマトリクスを作成するときは、重要度の高いKBFを軸に設定するようにしましょう。
重要度の低いKBFを軸にしてしまうと、「優位性を把握する、差別化を図る」というポジショニングマップの意義が薄れてしまいます。
また、KBFの重要度はターゲティングによって変わってくるのも留意してください。
たとえばポジショニングマップ作成手順で挙げたターゲティングが男性ではなく女性だった場合、重量や組み立てのしやすさ、デザイン性の高さはより重要になってくるでしょう。
横軸と縦軸の相関性はできる限り低くする
たとえば「価格と品質」や「サイズと重さ」のような、相関性が高い要素同士やトレードオフの関係にある要素同士でポジショニングマップを作るのは避けてください。
なぜなら、相関性の高い要素同士でマトリクスを作っても、右肩上がりの直線に沿ってポジショニングが敷かれるだけなためです。
仮に価格を横軸に、品質を縦軸にしてポジショニングマップを作っても、図に現れるのは「低品質なら安価で、高品質なら高価」という傾向だけです。
「高品質で安価」のような空白が見つかるともいえますが、それはマーケティングとは別次元の努力がそもそも必要になってきます。価格や品質に対する軸は「デザイン」や「味」など、相関性の低い要素を設定してあげるのが適切です。
ポジショニングマップまとめ
ポジショニングマップとは、競合他社と比べて自社にどのような優位性があるかや、どのような差別化を図るかを考えるのに役立つ分析手法のひとつです。
ポジショニングマップの作成にあたっては、まずターゲットのKBFの洗い出しと各KBFの重要度の設定から始めてください。そこから競合他社とKBFを比較し、自社の優位性をあぶり出しましょう。
次に、優位性があるKBFを軸にマトリクスを作成し、マトリクス上に自社と競合他社を配置すればポジショニングマップの作成は完了です。
ポジショニングマップからは、自社の商品・サービスの優位性がどこにあるのかや、どの競合他社とどう差別化を図るべきかが見えてくるでしょう。
なお、ポジショニングマップの作成にあたっては、重要度の高いKBFを軸に設定することと、縦軸と横軸の相関性は低くすることを意識してください。