マーケティングに携わっていると、「オレンジよりも緑色のボタンがCVを得やすい」といったような情報をよく見聞きします。
筆者の経験からすると、「こういうときはこう」のようなマーケティング論を鵜呑みにするのは危険です。「正解のはずなのになぜ成果が出ないのだろう」と、ドツボにハマること間違いありません。
マーケティングの正解は成果がすべて。成果が出ていないのなら、それは不正解なのです。
そこで今回は、マーケティングの成果を最大化する手法のひとつ「ABテスト」について徹底解説していきます。
ABテストは「成果を上げるための正解」を探り当てる方法とも言えるマーケティング手法なため、本記事でぜひ理解を深めておきましょう。
マーケティングをはじめるなら、必ず押さえておきたいのが「デジタルマーケティング」についてです。
デジタルマーケティングは近年、マーケティング業界で大きく注目を浴びており、マーケティングに少しでも携わる方なら「どんなマーケティング手法なのか」を知っていて損はありません。
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目次
ABテストとは
ABテスト(A/Bテスト、エービーテスト)とは、2つの異なるパターンを同時に走らせ、両パターンの効果を比較・分析する施策です。制作物とはたとえば広告、ランディングページ、ECサイトなどが挙げられます。
パターンAとパターンBを比較することからABテストという名前になっていますが、場合によっては3つ、4つとパターンをテストすることもあります。ABテストとはいえ、必ずしも2パターンだけをテストするとは限らないということです。
また、ABテストはLPOだけでなく、UI/UXの最適化にも利用されます。例としてECサイトの各画面や分析ツールのダッシュボード、アプリの管理画面などが挙げられるでしょう。
なお、ABテストのようなCVR向上やCV最大化を図る手法は、総じてCRO(Conversion Rate Optimization)と呼ばれます。
ABテストによって得られる利点
ABテストによって得られる利点は、主に以下の2点に集約されます。
- ローコストでCVRを最大化できる
- UI/UXを改善できる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ローコストでCVRを最大化できる
ABテストで検証にかける制作物の箇所は、広告クリエイティブに使われている画像やランディングページのファーストビュー部分など、複数のパターンをすぐに用意しやすい部分であることがほとんどです。
そのためABテストは、ページリニューアルなどに比べて金銭的にも時間的にも少ないコストで実施できます。
UI/UXの改善に活かせる
CVRの最大化のみならず、ECサイトや分析ツールのダッシュボードのような、「使いやすさ」が重要なサイトにおいてもABテストは有効です。
大規模なサイトリニューアルだと、たとえ変更後の方が論理的に優れていたとしても、実際には「使い慣れていたのに勝手に変わった」「使い方や場所を覚え直すのが面倒くさい」といったことが起こるリスクがありますよね。
それに対して、ABテストで小規模な変更を重ねていけば、そういったリスクを最小にしつつUI/UXの最適化を図ることができます。
ABテスト実施時の注意点
利点が多いABテストですが、注意すべきこともあります。ひとつの制作物で複数の箇所を同時にABテストしてしまうと、結局どのパターンがCVRに影響を与えたのかがわかりにくくなってしまうという点です。
そんなことに陥らないよう、基本的にABテストは制作物ひとつにつき一箇所までにしましょう。広告→ランディングページ→商品・サービス提供というような複数の制作物による一連の販売導線があり、それぞれ一箇所ずつABテストを実施する、という場合は問題ありません。
なお、複数箇所を効率よく網羅的にテストする「多変量テスト」と呼ばれる手法もあります。こちらは「背景素材2通り × キャッチコピー3通り = 計6パターン」のような複数箇所の複数パターンを網羅的にテストするCRO手法です。
多変量テストについては本記事の趣旨から逸れるため深くは触れませんが、複雑な分ABテストの発展型ともいえる手法となっているため、ABテストがしっかり理解できたならぜひとも学習しておきましょう。
ABテストの対象となる制作物
ABテストで検証するものというと、やはり広告やランディングページが真っ先に思い浮かびますが、ABテストの対象となるものに限りはありません。
2013年にはコカ・コーラ社が爽健美茶の味を2パターン販売し、消費者アンケートでどちらの味を継続して販売するかを決める、というキャンペーンが行われたりもしました。
爽健美茶の事例はCROというよりもカスタマーリレーション的な側面が強い施策だったかとは思いますが、アイデア次第でお茶もABテストにかけられるのです。
とはいえ「なんでもいけます」では埒が明かないため、今回は主要なものに絞り込んで紹介していこうと思います。
- 広告
- ランディングページ
- ECサイト
- メルマガ
- スマホアプリ
- ダッシュボード・管理画面・マイページ
各制作物において、どのような箇所がABテストにかけられるのかや、どのような箇所を優先してABテストにかけるべきかについてご紹介します。
広告
バナーやリスティング、そしてYouTubeなど、媒体によって広告の形式も様々ですが、どのような形式であれABテストは可能です。
たとえばバナーであれば画像素材は人物にすべきか商品写真にすべきか、キャッチコピーはどうすればよいか、などが考えられるでしょう。
ランディングページ
ランディングページはCVを目的としたページなため、ABテストのし甲斐がある制作物です。
ページ自体が長大な場合はテストできる箇所も増えて大変に思えるかもしれませんが、変更箇所によってCVRへの影響度は大きく異なるため、テストの優先順位は比較的つけやすいといえるでしょう。
具体的にいうと、もっとも変更のインパクトが強いのは①ファーストビューで、次に②CVボタンやCTA周り、そして③ボディコンテンツといった順番です。
ECサイト
ECサイトはCVが目的であると同時に、UI/UXも重要なファクターといえます。
おすすめ商品の一覧やキャンペーン情報、そしてカテゴリ選択メニューなど、情報のるつぼになりがちなECサイトは変更箇所の優先順位がつけずらく、ランディングページの何倍もやっかいです。
さらにいえば個別の商品ページやカート画面、そして決済確認画面など、ABテストをかけられるページの数も多いため、ECサイト担当はどのページのどの箇所を優先して改善するかという手腕が求められます。
しかし、ABテストをかけられる箇所が膨大な分、ABテストの効果がはっきり現れるのもECサイトの特性といえます。ABテストを少しずつ繰り返して細かな変更を重ねることで、大規模リニューアルをせずともCVRを着実に向上させることが可能です。
メルマガ・LINE公式アカウント
メルマガやLINEのビジネス向けサービスの「LINE公式アカウント」でもABテストが可能です。
たとえばメルマガの場合、件名の変更は開封率に大きく影響します。そのため件名は真っ先にABテストの対象となる箇所です。
LINEの場合も、配信文の冒頭2行や画像内に埋め込まれたテキストはスマホの通知に出てくるため、改善するならまずは冒頭2行からになるでしょう。
なお、弊サイトではメルマガ作成に役立つ資料を無料配布しています。メルマガ作成やメルマガのABテストでお悩みの方はぜひダウンロードしてみてください。
スマホアプリ
スマホアプリというとあまりにも幅が広いですが、やはりどんなスマホアプリであれABテストの対象になります。
たとえばプレイヤーによる広告押下で収益を上げるゲームアプリであれば、広告の内容、サイズ、表示する箇所、表示のタイミングなど、テストできる要素は様々です。
アプリだと異なるパターンを同時に走らせて・テストするのが難しい場合もあるため、新たなパターンを期間限定で動かしたり、特定のユーザーだけに新UIを提供したりといった工夫が必要とはなってきます。
ダッシュボード・管理画面・マイページ
ABテストはCVR向上だけでなくUI/UXの改善にも活かされるため、ダッシュボードや管理画面、そしてマイページといった、いわゆるログイン後に表示されるページも対象となります。
こちらもECサイト同様にページに多量の情報が詰め込まれやすいため、担当者の手腕が試されます。
ページ自体が商品であるという場合には後の評判、ひいては売上にもつながってくるため、CVが目的でなくとも、ログイン後に表示されるページではABテストが非常に重要と言えます。
ABテストの対象となる要素
ABテストの対象となる要素は、主に以下の5つに集約されます。
- テキスト
- 画像
- デザイン
- フォーム
- URL
テキスト
テキストはABテストにかけられる要素の中でも、最も手軽に検証できる要素です。変えるのが簡単ですし、戻すのも簡単です。キャッチコピーやボタン内のマイクロコピーなど、変更によるインパクトが大きそうな箇所から順にABテストを検討してください。
画像
場合によりけりですが、画像も比較的ABテストにかけやすい要素です。特にバナー広告のような、表示されてすぐに押すかどうか判断されてしまうような媒体においては、テキストよりも画像を変更した方がレバレッジは効きます。
デザイン
デザインのABテストとしては、細部でいうと文字や画像の大きさ、色の組み合わせ、アイコンや背景素材などが対象となるでしょう。広くはページ全体のレイアウト、パーツの並べ方・構成、見出しの順番などもデザインのテスト対象といえます。
ただし、デザインの新規パターンを用意するのはそれなりに工数がかかります。そのため、デザインをABテストにかける場合は、企画段階からABテストを想定して複数のパターンを最初から作成してもらうと効率が良いでしょう。
フォーム
問い合わせフォームや商品の申し込みフォームなども、ABテストによって成果が変動する要素です。「フォーム入力が面倒で申込みをやめた」という経験、もしかしたらあたなにもあるのではないでしょうか?
基本的にフォームの回答項目は少ないほどCVRが高まるとされています。フォームまではいい感じなのに回答率が芳しくない、というときは、まず項目を減らしたパターンをABテストで検証してみてください。
全項目どうしても削れないという場合には、記述形式の項目を選択形式に変更するなどして、少しでも回答の負担を減らす工夫をしてみましょう。
また、回答項目を減らさず、項目の順番を変えることでCVRを劇的に向上させることも可能です。たとえばアンケートにおいて、個人情報の収集にかかわる項目は最初ではなく最後に置くなどです。
URL
たとえば、あるランディングページにおけるCVの定義が「申込ボタンを押す(ボタンに埋められたURLにアクセスする)」であるとします。
この場合CVと直接かかわらないURL(資料引用元のページやよくある質問ページなど)をページ内のクリックしやすい場所に置くのは、基本的に良くないとされています。なぜなら離脱率が高まりやすいためです。
しかし、そういった試みによってユーザーフレンドリーなページとなることは間違いありません。ABテストの結果、CVと直接かかわらないURLのCVへの影響が少ないのであれば、そのパターンを採用するべきでしょう。
ABテストの具体的なやり方
以上まではどのようなものがABテストにかけられるのかについて解説してきました。ここからは、どのような手順でABテストを実施すればよいかについて解説していきます。
- 仮説を立て、ABテストをする対象・箇所を決める
- パターンBの準備をする
- 十分なデータが取れるまでABテストを走らせる
① 仮説を立て、ABテストをする対象・箇所を決める
ABテストをいきなり実施する前に、まずは「このページのここを〇〇に変更することでCVRが1%改善するだろう」といったような仮説を立てましょう。
とはいえ、最初から具体的な数字も込みで仮説を立てるのは難易度が高いと思われるため、最初のうちは「この表現が離脱率を高めている可能性がある」程度の仮説でも構いません。
闇雲にABテストをすると、仮に効果が出ても「なぜ効果が上がったのか」を特定しずらく、PDCAを回しづらくなります。
また、ABテストをする対象・箇所を決めるときは、CVRに最も大きなインパクトを与えるであろう箇所から優先するのが基本です。たとえばランディングページならファーストビュー、メルマガなら件名といった具合です。
② パターンBの準備をする
仮説を立て、変更対象となる制作物や箇所が決まったなら、いよいよテスト対象となるパターンBの作成と検証の準備に取り掛かりましょう。パターンCやDもあるなら、もちろんそれらも作成していきます。
WebページにおけるABテストの場合は、主に以下2通りのやり方があります。
- 方法1. 一つのページにすべてのパターンを盛り込み、スクリプトで表示分岐させる(SEOへの影響が少ない)
- 方法2. パターンごとに一枚ずつページを作り、各パターンに一定確率でリダイレクトするページによってアクセス分岐させる(SEOに影響するが、プログラミング経験が浅い人でも実装しやすい)
要するに、分岐を同一のURLで行うか、パターンごとに別のURLで行うか、という違いです。どちらの方法もJavaScriptやPHPなどのプログラミングスキルが必要となるため、実際にABテストを走らせるときは専用ツールを使うとよいでしょう。
ツールを利用すればABテストの仮説立てから検証までもツールが一貫してサポートしてくれます(おすすめのABテストツールについては後ほど紹介します)。
なお、メルマガやLINE公式アカウントの場合は、配信設定でどのリストにどのような配信を行うかを柔軟に絞り込み可能です。
③ 十分なデータが取れるまでABテストを走らせる
準備が整ったら、ついにABテストスタートです。十分なデータが取れるまで、パターンBを走らせましょう。
「十分なデータって、どれくらい?」と思われるかもしれませんが、それは媒体や変更箇所などによってまちまちです。
たとえばランディングページならリーチが1,000を超えたら、広告であればあらかじめ決められた予算の中で、といった具合です。平日と土日祝日のデータが必要ということであれば、1, 2週間は継続してデータ収集したほうが良いでしょう。
適切な基準を設けてデータ収集をしなければデータの内容も不正確になり、適切なパターンを選択できなくなる可能性があります。十分注意してください。
データは多いに越したことはないため、基準設定に不安があれば、すこし余裕を持ってデータ収集量・期間を設定するとよいでしょう。
ABテストに役立つツール3選
ツールを使えば多くのABテストを誰でも効率よく実施・管理できるようになります。今後ABテストを多数実施する予定があるのなら、ツールの導入をぜひ検討してみてください。
Google Optimize(グーグルオプティマイズ)
Google OptimizeはGoogleが無料で提供しているABテストツールです。無料とはいえ、ABテストに必要な基本機能はしっかり揃っており、多変量テストにも対応しています。「Google Optimize 360」という有料版もありますが、まずは無料版で慣れてからでよいでしょう。
なお、無料版では同時にテスト可能なパターンは5ページまでに限られています(有料版では101ページ以上テスト可能)。
Optimizely(オプティマイズリー)
Optimizelyは、同名のアメリカ企業が開発・提供している有料のABテストツールです。
html/cssを触らなくてもツール上で簡単にテストパターンの作成ができたり、ABテストの開始・停止をスケジューリングできたり、さらにはヒートマップ機能もついていたりと非常に高機能な仕上がりとなっています。
SiTest(サイテスト)
SiTestは株式会社グラッドキューブが提供するABテストツールです。ABテストのみならず、ヒートマップ機能や機械学習型AIによるレポート作成など、有料ツールなりの高機能さがウリです。
また、運営が国内企業なため、サポートや情報が充実しているのも特徴でしょう。
ABテストまとめ
ABテストは、マーケティング成果を最大化するための基本施策です。CVRやUI/UXの向上を図りたいときは、積極的にABテストを繰り返していきましょう。
ABテストの基本は、インパクトの高そうな箇所から優先してテストすることです。「たくさん覚えることがあって大変」と思った人も、ぜひこれだけは覚えておいてください。
ABテストの実施頻度が多くなりそうという場合は、専用ツールの利用も検討しましょう。無料で使える「Google Optimize(グーグルオプティマイズ)」が、まずはおすすめです。