あなたは「営業マンが見込み顧客と実際に話している時間は、一日のうち1/3だけ」という事実をご存じでしょうか? 残りの2/3はミーティングやスケジュール調整といった、渉外ではない雑多な業務に費やされています。
もちろん雑務は営業活動に不可欠です。しかし、雑務の割合を減らしてコア業務にあたる時間を増やせれば、より多くの成果を獲得できることは言うまでもありません。営業ツールはまさに、営業効率の向上を支援して、コア業務への注力を実現するためのものです。
こうしたメリットから、営業ツールの導入を検討している企業は近年急増しています。しかし、営業ツールには様々な種類があり、それぞれ機能や用途がまったく異なるため「何を選べば良いのか分からない」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では営業ツールとは一般的にどのような機能を備えるものなのか、種類毎にどんな使い分けがされているかについて解説します。
営業ツールとは?
営業ツールはその名の通り営業に役立つツールのことですが、文脈によってふたつの捉え方があります。ひとつめはMAやSFAといった営業支援サービスを指し、ふたつめは名刺やドアノックツールといった営業活動の武器となるものです。
今回くわしく解説するのは前者の営業支援サービスのほうです。営業支援サービスは、営業マンの目標達成を支援するために、成果獲得の効率を上げる機能が備わったクラウドサービスとなります。
営業ツールは大きく「MA・SFA・CRM(各ツールの詳細は後述)」の3つに分けられますが、すべてのツールがオールインワンになっているサービスも存在します。
営業ツールで実現できること
営業ツールは営業活動の効率を上げるものと解説しましたが、具体的に何が実現できるのでしょうか? それは主に下記の3点です。
- 顧客のデータベース化
- 営業案件管理の効率化
- アプローチの自動化
各項目について詳しく解説します。
顧客のデータベース化
ほぼすべての営業ツールには、顧客情報をデータベース化する機能が存在します。顧客情報は担当者が手動で登録することもできますし、Web上のアクションであればシステムが自動で登録することも可能です。
この機能によって顧客情報をつねに最新の状態で営業チーム全体に共有でき、なおかつ「メルマガの開封・クリックが5件以上ある」のような見込み顧客の抽出も容易になります。
営業案件管理の効率化
営業ツールでよく用いられる機能に営業案件の管理機能が挙げられます。たとえばスケジュール管理機能を使えば空いている日時を自動で抽出、または顧客に提示できるため、商談のダブルブッキングなどのミスや日程調整にかかる時間を軽減できます。
また、各メンバーのスケジュールがシステム上でまとめて見える化されるため、マネージャーが各メンバーの活動状況を把握しやすくなるメリットもあります。
アプローチの自動化
営業ツールの中には、顧客へのアプローチ(主にメール配信)を自動化できる機能を備えるサービスがあります。具体的にはステップメールやシナリオメールといった、メールマーケティング機能です。
メールマーケティング機能は、例えば「資料請求者にフォローメールを送る」のような従来は営業マンがその都度行っていた連絡を、ツールが顧客のアクションを検知して自動で行います。
さらには「資料請求1日後にメールA、3日後にメールB・・・」のように、顧客のアクションを起点にシナリオを組むことも可能です(ステップメール機能)。営業マンのアプローチを肩代わりする以上の効果が期待できるのが、メールマーケティング機能といえます。
営業ツールの種類と役割
営業ツールにはMA・SFA・CRMの3種類があると冒頭で解説しましたが、これらは顧客の段階に応じて使い分けるのが基本です。
- MA(マーケティング・オートメーション)
潜在顧客へのマーケティングによる見込み顧客の獲得と、SFAに見込み顧客の情報を渡して営業マンが案件化できる状態にするまでがMAの役割 - SFA(セールス・フォース・オートメーション)
営業案件の進捗管理や成約獲得といった、見込み顧客に向けた営業マンの活動全般を支援するのがSFAの役割 - CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
成約に至った顧客の関係性を管理して、カスタマーサクセスやアップセルなどをカバーするのがCRMの役割
中でもSFAとCRMは顧客管理の面で密接につながっており、「SFA・CRM」のようにひとつのサービスとして提供される場合が多いです。一方MAは見込み顧客の獲得に特化しており、ほとんどの場合SFA・CRMとは別物として提供されます。
それでは、各営業ツールの機能や特徴についてさらに詳しく解説します。
MA(マーケティング・オートメーション)
- メールマーケティング機能
- 見込み顧客のスコアリング
- その他のマーケティングを支援する機能
MA(マーケティング・オートメーション)とは、自社サイトのアクセス解析や、解析したデータを元にしてメールマーケティングを行うといった機能を備える営業ツールです。
資料請求や問い合わせを行った見込み顧客に効果的にアプローチし、購買意欲が一定まで高まった見込み顧客を営業マンにバトンタッチするのがMAの役割となります。
MAでよく活用されるのは、やはりメールマーケティング機能でしょう。メルマガやターゲット配信はもちろん、特定のアクションに反応して配信するシナリオメールや、ナーチャリングを効率化するステップメール機能など、MAのメールマーケティング機能なら様々なアプローチが可能です。
なお、当サイトの下記E-Bookではメールマーケティングについて初心者向けに解説しています。MAの導入を検討するなら、参考資料としてぜひ手に取ってみてください。ダウンロードは無料です。
もうひとつMAでよく用いられる機能に、見込み顧客の成約確度を定量的に評価できる「スコアリング」と呼ばれるものがあります。スコアリングとは、顧客の属性やアクションを評価項目に点数をつけることで、営業優先度をつけやすくする施策のことです。
例えば資料請求であれば5点、セミナー参加であれば10点、予算に余裕があるほど加点といった具合です。スコアリングを利用することで見込み顧客が細分化しやすくなり、案件化の効率が高まります。
その他、SEO対策やランディングページ作成といった機能を備えるなど、多彩な活用が可能なMAも存在します。
SFA(セールス・フォース・オートメーション)
- 営業案件の進捗可視化や予実管理機能
- スケジュール・営業プロセス管理機能
- 目標達成率や売上予測の計算
SFA(セールス・フォース・オートメーション)は、案件の進捗管理やスケジュール調整といった営業マンの活動全般を支援するツールです。有形商材の場合、生産管理部門とSFA上の情報を連携することで、受注件数に応じて生産数を最適化するといった活用も可能です。
SFAで特に活用されているのは、スケジュール調整や案件進捗の見える化といった商談にまつわる機能です。これにより営業マンが各案件を管理しやすくなるだけでなく、マネージャーが各メンバーの状況を把握しやすくなり、指示やアドバイスの精度が向上します。
また、SFAに保存されている情報は全メンバーに対して共有可能なため、ナレッジの属人化が防げたり、万が一のトラブルでも引き継ぎが容易といったメリットもあります。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
- 顧客データベース機能
- メールマーケティング機能
- アンケート・イベント実施の支援機能
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)は、顧客情報を一元管理することで顧客との関係性を維持、もしくは向上させることを目的とした営業ツールです。顧客関係の管理によって、最終的にはLTVの改善や解約阻止といった成果を上げるのに役立てられます。
LTVを向上CRMとSFAの区別があまりついていない方は、「SFAは営業案件ごと、CRMは顧客ごとで管理する」とイメージすれば理解がはかどるでしょう。
CRMはMAと同じく、メールマーケティング機能がよく活用されます。具体的な使い方としては、契約から数日経過した顧客に発展的な活用法を提供する、関連サービスやバックエンド商品をおすすめするなどです。
なお、当サイトの以下の記事ではCRMでメールマーケティングを効果的に実践する方法について解説しています。本記事と合わせて参考にしてください。
参考:CRM活用でメールマーケティングを効果的に!メール配信の自動化について解説します
営業ツールを導入する際のポイント
各営業ツールの特徴や役割が把握できたところで、ここからは営業ツールを導入する際のポイントについて3つ解説します。
- 解決したい課題を明確にする
- 使いやすさを重視する
- 導入実績の多いサービスを中心に検討する
解決したい課題を明確にする
営業ツールには様々な種類があり、サービスによって機能の数もソリューションの切り口も異なります。例えばMAと一口にいっても、BtoBとBtoCのどちらかに特化しているサービスから、両方に対応するものなど様々です。
営業ツールの導入で失敗しないためには、解決したい課題はなにかをあらかじめ明確にしましょう。解決したい課題が明確なら、MAを導入すべきなのか、あるいはSFAを導入すべきなのかもハッキリします。
使いやすさを重視する
結局のところ、実際に成約を獲得してくるのは営業ツールそのものではなく、人間です。そのため、どれだけ高機能な営業ツールでも、営業マンにとって使いにくければ期待するような効果は得られません。
そのため、サービス選定のときは使いやすさを重視して選ぶようにしましょう。ポイントとなるのは、無料トライアルやフリープランのあるサービスを中心に比較することです。
とはいえ多くの営業ツールは多彩な機能を備えるため、メンバーに運用ルールや使い方を落とし込むだけで一手間かかります。最初からすべてのプロセスを営業ツールに載せ替えようとするのではなく、少しずつ浸透させるような意識で運用しましょう。
導入実績の多いサービスを中心に検討する
これは営業ツールに限った話ではありませんが、導入実績の多いサービスを選ぶのも営業ツールを選ぶ際のコツです。なぜなら、導入実績が多いということはそれだけ多くの企業がそのサービスで課題解決を実感している、ということだからです。
また導入している企業が多いほど、活用法に関するナレッジがネット上に多く公開されており、運用を軌道に乗せやすくなります。
代表的な営業ツール3選
ここからは、多くの企業に導入されている営業ツールを3つご紹介します。
- eセールスマネージャー
- Sales Cloud(Salesforce)
- Hubspot
eセールスマネージャー
公式サイト | eセールスマネージャー |
提供 | ソフトブレーン株式会社 |
料金 | 月額3,000円 / 1ユーザーから(無料デモあり) |
eセールスマネージャーは国産のCRM・SFAで、導入実績5,500社以上、利用継続率95%の実績を誇る営業ツールです。国産サービスらしく、日本企業の営業活動にフィットした簡単な操作感が特徴となっています。
また、メール配信によるリードナーチャリング機能も備えており、CRM・SFAでありながらMAのような活用も可能です。
Sales Cloud(Salesforce)
公式サイト | Sales Cloud(Salesforce) |
提供 | 株式会社セールスフォース・ドットコム |
料金 | 月額3,000円 / 1ユーザーから(無料トライアルあり) |
Sales Cloud(Salesforce)は世界でもっとも導入されているアメリカ発のCRM・SFAです。世界的に導入されている営業ツールだけあって非常に多彩な機能を備えており、幅広い業種・規模の企業に対応可能です。ただし機能が多い分、運用をきちんと定着させるには根気が必要でしょう。
また、海外サービスなものの日本語の電話サポートが提供されているため、万が一のトラブルでも国産サービスのような迅速なサポートが期待できます。
Hubspot
公式サイト | Hubspot |
提供 | ソフトブレーン株式会社 |
料金 | 月額5,400円 / 1ユーザーから(フリープランあり) |
HubspotはSales Cloudと並んで世界的に利用されている営業ツールです。Sales Cloudよりもサービス内容や機能がシンプルで、使いやすさが重視されているのが特徴となります。サポート体制もより充実しており、初めて営業ツールを導入するならHubspotのほうがよりおすすめでしょう。
基本価格はSales Cloudより高くなっていますが、Sales Cloudはオプションによって機能をカスタマイズすることが前提となっているサービスなため、利用する機能の多さによってはHubspotの方が費用を抑えられる可能性があります。
営業ツールまとめ
コロナ禍に端を発するDXの推進により、従来の営業活動における様々な非効率が見直されるようになりました。そんな中、MA・SFA・CRMといった営業ツールは、組織全体の営業力を底上げするソリューションとして注目を浴びています。
営業ツールは案件や顧客情報をデータベース化し、メールマーケティングや案件の進捗・予実管理といった、営業活動をスムーズにするための機能を豊富に備えるものです。
- MA:見込み顧客の獲得と育成機能を備える営業ツール(メールマーケティング、スコアリングなど)
- SFA:営業案件の管理を効率化する機能を備える営業ツール(スケジュール管理、予実管理、売上予測など)
- CRM:顧客管理を一元化する機能を備える営業ツール(顧客データベース、メールマーケティングなど)
サービスによってどのような機能を備えるかは異なるため、営業ツール導入時は「解決したい課題は何か?」を明らかにしてからサービス選びに臨みましょう。