「要領が良い人」と聞いてどんな能力を持った人を思い浮かべるでしょうか。
- 目標に対して最短で行動ができる
- リスク管理やリカバリに長けている
- 判断にスピード感があり的確
タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉が生まれた昨今では、上記のような行動・思考ができる方は職場でも重宝され、重要なポジションを任せられることも少なくありません。
誰もが憧れる能力ですが、実はこれらは「仮説思考」と呼ばれる頭の使い方を定着させることで、トレーニングをする事ができるのはご存知でしょうか。
この記事では、自身の仕事の質とスピードを向上させる仮説思考の概要や実践方法について解説しています。
是非ご覧ください。
目次
仮説思考とは
「仮説思考」とは、目標や物事に対して「仮説を立てた上で、仮説を裏付ける根拠を探す」思考のことを指します。
つまり、行動をする前に自分の中で課題解決までの道筋を作り、その上で解決までに必要な素材を揃えていこうとする頭の使い方です。
これだけを聞くと、簡単に実践できるような気がするかもしれません。
実際に日常生活では、意識せずに仮説思考を使って行動をしている事もあります。
身近な仮説思考の例
例えば、旅行の帰路で渋滞を避けようとして、以下のような行動をとったことはないでしょうか。
- 旅先を早めの時間に出発する
- 往路とは違う道を選択する
上記の例のような行動をする前に、このような思考で意思決定をしたことはないでしょうか。
18時までに帰りたい、という課題に対して「渋滞する可能性がある」といった仮説を立て、その後に根拠を集めてくるのが仮説思考です。
あくまで仮説なので、未来の出来事を経験や客観的なデータから予測する必要があります。
例のような日常的な仮説思考は自身の経験を仮説に反映できるので、仮説や根拠のクオリティも高くなります。
しかし、課題や目標によっては仮説を立てることが非常に難しくなるケースも存在します。
特に、仮説思考をビジネスで使える様になるまでには、それなりのトレーニングが必要になるでしょう。
仮説思考を習慣化させるメリット
仮説思考を定着させることで、以下の様なメリットがあります。
- 迅速な意思決定や行動につながる
- 軌道修正が早くなる
仮説思考の最大のメリットは思考や行動にスピードが生まれる点です。
仮説を裏付ける根拠やデータのみを収集し行動を決めるので、集まったデータを吟味したり分析したりする時間を省略できます。
仮説を裏付けるデータが集まらなければ「そもそも仮説が間違っていた」と気付く事ができるので、早急な軌道修正に繋がります。
仮説思考の反対は「網羅思考」
仮説ありきで根拠やデータを集める仮説思考とは逆に、データを網羅しその中から結論を導き出す思考法は網羅思考と呼ばれます。
網羅思考は、仮説を立てるより先にできる限り多くのデータを集める思考法です。
求めるデータが全て集まれば、課題の解決までに正確なアプローチを導き出す事ができるかもしれませんが、網羅思考には以下の様なデメリットがあります。
- データの収集に途方もない時間がかかる
- 一連のプロセスに要する体力的な負担が大きい
先述した例で網羅思考を図解すると、以下の様になります。
先ほどのケースでは、早めに帰路に着くという意思決定をする前に、帰路に関する情報を可能な限り収集し、それを統合した上で結果を予測しなければなりません。
集めた情報が全て同じ結果に結びつくとは限らないので、中には仮説の反証になってしまうデータにたどり着く事もあります。
現代社会では「仮説思考」を元にした行動が求められる
冒頭でも記載した「タイムパフォーマンス」という考え方は、Z世代を中心にビジネスの世界でも受け入れられつつあります。
以前と比較して、情報が早く大量に流れる様になった昨今では、膨大な情報の中から必要な情報を正確・迅速に選択して意思決定をしなければなりません。
上記の様な現代社会を生きていくスキルは、ビジネスをする上でも活用できることはいうまでもないでしょう。
時間をかけてデータを大量に集めて悩んでいる人よりも、ある程度の仮説を元にデータや根拠を収集し検証している人材の方が求められる時代です。
仮説思考のプロセス
仮説思考のプロセスは以下の4つに分けられます。
- 状況分析
- 仮説の設定
- データの収集・仮説の実行と検証
- 軌道修正
例として「飲食店における売り上げの低下」を改善するために仮説思考を取り入れ、フェーズごとにもう少し詳しく解説をしましょう。
状況分析
仮説を立てる前に必要になるのが状況分析です。
課題や問題はなぜ発生しているのか、分析してみましょう。
状況分析のフェーズでは、新しい情報やデータを集める必要はありません。
自身の手持ちにないデータや根拠を集めることに労力を割いてしまうと、網羅思考のプロセスを辿ることになるためです。
あくまで、自分が今持っている確定的な情報や経験をもとに状況を分析しましょう。
仮説の設定
状況を分析した次は、仮説を設定します。
前フェーズでの状況分析を元に、売り上げの低下は「離職によるマンパワー不足」と「原価の高騰」にあるのではないか、と仮説を立てました。
このフェーズでは、課題をできるだけ具体的に掘り下げて仮説を設定する必要があります。
スタッフの稼働率が維持できているなら新しい人員を雇えば良い、という仮説では課題の根本的な解決には繋がりません。
課題の奥に潜む根本的な問題を明らかにし、仮説を設定しましょう。
データの収集・仮説の実行と検証
次は、設定した仮説を裏付けるデータを収集し実際に検証を行うフェーズです。
今回の例では、以下の様なデータを収集する必要があります。
- 離職率が低い店舗とそうでない店舗の売り上げ
- 同業他社の輸送コストと売り上げの相関
また、数値的なデータだけでなく、自身の体験やお客様の声のような定量化できない情報も仮説を裏付ける大事な根拠になります。
データだけに囚われてしまうと、現場の状況との乖離が発生する可能性もあるので注意しましょう。
仮説の修正
③の段階で、自身が設定した仮説を裏付けるデータや根拠が集まらなければ、①や②に戻り軌道修正を行いましょう。
仮説はあくまでも仮説です。
もし、軌道修正が必要な場合でも落ち込まずに仮説思考を続けましょう。
軌道修正をすることで課題が解決に近づくだけでなく、自分自身が仮説思考を使っていく上でも大事な経験値になります。
仮説思考をスムーズにするトレーニング
仮説思考は、日常的にトレーニングをすることで磨かれていきます。
ここからは、普段から取り組む事ができる仮説思考のトレーニング方法について解説します。
さまざまな経験をして、引き出しを増やす
仮説思考では自分が持っているデータや経験だけで最初の仮説を設定しなければなりません。
そのため、仮説思考をする方の知識や経験が乏しい場合は、正確な仮説を立てる事が難しくなってしまいます。
飲食店の売上についての例で考えると、仮説を立てる方に離職率や原価に対する概念がなければ、何度も軌道修正を繰り返さなければならなくなります。
全く違う物事の経験が現在の課題解決のためのヒントになる事もあるので、できるだけ多くの経験をして自身の引き出しを増やしましょう。
ただし、自身の経験を仮説思考に応用するには、ある程度の深みが必要です。
例えばただご飯を食べるのではなく、以下の様な点に注目することで、より洗練された経験として自身が仮説を立てる材料になります。
- なぜ、美味しいのか
- 他のお店とどんなところが違うのか
- 自分だったらどの様な点を改良するか
こんなことを都度考えて行動するのは面倒に感じるかもしれませんが、仮説思考のトレーニングとしては非常に有効です。
先入観や思い込みを排除する
経験を仮説の材料にすることはとても大事ですが、誤った先入観や思い込みは仮説思考を効率的に行う上での障壁になります。
例えば「50代以降の集客率を伸ばす」という課題に対して仮説思考を行う際に「今の50代はSNSを利用しない」という誤った先入観を持って仮説を立ててしまったとしましょう。
実際の50代は、約90%の方がスマホを所持しており、SNSの利用率も全世代の平均とほぼ同じであるという調査結果になっています。
参考記事:令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書「第5章5-1 主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率①」
誤った先入観をもとに設定された仮説は、データ収集のフェーズで裏付けができず大幅な軌道修正が必要になります。
また「どうせ上司はこんな提案を受けてくれないだろう」といった、ネガティブな思い込みなども創造的な仮説を生み出しにくくします。
仮説思考のトレーニングとして、できるだけ自分の中にある先入観や思い込みを排除した思考を意識しましょう。
思考の幅を広くする
先述した先入観・思い込みの排除にも似ていますが、仮説を立てる際は自身が設定している仮説と真逆の仮説について一度検討してみる事も大切です。
「SNS集客をする事で集客率を改善する事ができる」という仮説に基づいて行動する前に「メール集客では集客率を改善できないのか」という可能性に気付けるかもしれません。
思考をあえて極端に振ることで、自身の設定した仮説のミスや他の手段の発見に繋がるのです。
普段の業務や日常生活ではルーティン化してしまっている思考・行動でも、他の手段はないのか、もっと効率よくする方法はないのか考えてみましょう。
まとめ
仮説思考とは、自信が持っている知識や経験を基に仮説を設定し、次にその仮説を裏付ける根拠を収集することで、課題解決への行動を決める思考法です。
膨大な情報の中から課題解決のために必要な情報を正確かつ迅速に取捨選択する仮説思考は、非常にタイムパフォーマンスの良い思考法と言えます。
仮説思考は日常的に使われているケースもありますが、ビジネスに応用するにはある程度のトレーニングが必要になるでしょう。
また仮説を立てる上で不可欠な「データ」や「経験」は、自身が現在もっているものに限られてしまうため、普段からたくさんの物事に触れて考えを巡らせておかなければなりません。
「仮説思考ができる様になるまで、どれくらいの時間がかかるのだろう……」と、途方もない気持ちになってしまうかもしれません。
しかしウェブが発達した現代では、様々な情報に簡単にアクセスできる様になったため、以前に比べればより少ない時間で物事の概念や事例を知る事ができます。
例えば以下のURLでは、集客の主流となっている「デジタルマーケティング」に注目し、その概念や最新の動向・事例などを1冊にまとめたお役立ちbookをダウンロードする事ができます。
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自身の仮説思考を、よりビジネスで使えるレベルに引き上げるための経験として、ご覧になってみてはいかがでしょうか。