
仕事でミスをしてしまった時、反射的に「申し訳ありません。以後気をつけます」と定型文のように伝えていませんか。
「以後気をつけます」は、目上の方に使っても敬語として間違いではありません。しかし、重大なミスや社外への謝罪、あるいはメールでの報告において、この一言だけで済ませてしまうのは非常に危険です。なぜなら相手によっては「反省の色が見えない」「具体性がなく口先だけだ」と受け取られ、火に油を注いでしまうリスクがあるからです。
相手が求めているのは「決意」ではなく「仕組み」です。厳しい言い方になりますが、ミスが発生した際、上司や取引先が求めているのはあなたの「次は頑張る」という精神論や決意ではありません。 「なぜミスが起きたのか」そして「二度と同じミスを起こさないための具体的な仕組み(再発防止策)」です。
特に顔が見えないメールでの謝罪では、言葉選び一つで信頼を回復できるか、それとも不信感を招くかが大きく分かれます。そこで本記事では、謝罪シーンで頻出する「以後気をつけます」について、以下のポイントを解説します。
- 「以後気をつけます」がNGになり得る理由と背景
- 相手に誠意が伝わる「具体的な言い換え表現」(例文付き)
- 「気持ち」ではなく「対策」を伝える文章テクニック
安易な定型文で済ませて関係を悪化させないために、正しい謝罪の「型」を身につけましょう。
目次
「以後気をつけます」の意味
「以後気をつけます」は、意味的には以下のように区切って考えることができます。
- 以後(「今後」を意味する)
- 気をつけ(「注意する」を意味する)
- ます(丁寧表現の助動詞)
つまり、発生したミスや指摘された点に対して「今後は注意をします」という意味になります。
「以後気をつけます」はどんな時に使われるのか
「以後気をつけます」は、謝罪のニュアンスも少なからず入っている言葉です。しかし、冒頭でも解説したように、充分な謝罪の意思と再発防止のための対策を伝える必要があるビジネス上のコミュニケーションでは言葉足らずな場合もあります。
では、ビジネスをする中での謝罪シーンで「以後気をつけます」を使うケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
ミスの内容が軽微である時
ミスの内容が対策も立てられないようなケアレスミスの場合や、誰にも影響がないようなものの場合は「以後気をつけます」を使っても問題ありません。
- 社内メールで自身の名前の変換ミスに気が付かず送信してしまった
- 誤って業務時間外にメールをしてしまった
- メールの送信後すぐにファイルの添付忘れに気がついた
あくまで一例ではありますが、上記のようなケースでは「以後気をつけます」を使い相手に謝意を伝えても、関係性に悪影響を及ぼすようなことはないでしょう。
- 先ほど送信いたしましたメールで「営業部 砂糖」と表記してしまっておりましたが、正しくは「営業部 佐藤」になります。誤字に気が付かず送信してしまいました。以後気をつけます。
- 本日、お休みであることに気が付かずに会社のPC宛にメールをしてしまっておりました。以後気をつけます。
- 先程のメールに添付すべきファイルがございませんでした。お手数をおかけして申し訳ございませんが、本メールにてファイルをご確認ください。以後、気をつけます。
それぞれ、上記のように「以後気をつけます」を使います。
ただし、上記の例文でも失礼とは受け取られないものの「申し訳ございません」のような直接的な謝罪のフレーズは記載しておいた方が良いでしょう。いくら謝罪のニュアンスがあるとは言え、謝意を表現するフレーズはできるだけ分かりやすく記載しておいた方が誤解のないコミュニケーションになります。
次項の例文や「以後気をつけます」を丁寧に表現したメールの例文を参考に、謝罪を受け取る側に気持ちが伝わりやすいメールを目指しましょう。
同僚やお互いをよく知る相手とのコミュニケーションの時
先述したような軽微な内容のミスに限りますが、同僚や長い付き合いがある相手とのやりとりでは、フォーマルすぎる表現は避けて「以後気をつけます」を使った謝罪をすることもあります。
ビジネス上のコミュニケーションは、敬語や謙譲語といった表現の方法だけでなく、相手との距離感も考慮して行われるものです。
内容にもよりますが、お互いをよく知る間柄でのコミュニケーションであまりに仰々しい謝罪文を送ってしまうと、謝罪の意思よりも普段のやり取りとのギャップの方が目立つこともあります。
「以後気をつけます」のフレーズに限ったことではありませんが、コミュニケーションの内容だけでなく、相手との関係性や距離感も考慮した表現を心がけましょう。
相手・深刻度別「謝罪の結び言葉」使い分けリスト
「以後気をつけます」は便利な言葉ですが、すべてのシーンで使えるわけではありません。相手との関係性やミスの深刻度によって、適切な「結び言葉」を使い分けることが、信頼回復への第一歩です。ここでは、シーン別に最適な謝罪の締めくくり表現を紹介します。
社内・軽微なミス(同僚・直属の上司)
同僚や直属の上司に対する日常的な業務上の小さなミス(添付ファイル漏れや軽微な遅刻など)であれば、迅速さと率直さが重要です。過度にへりくだる必要はありませんが、しっかりと改善の意思を示します。
「以後、注意いたします」「確認を徹底いたします」といった、シンプルで前向きな表現が適しています。くどくどと言い訳をせず、サッと謝ってすぐに業務に戻る姿勢が好感を持たれます。
社内・重大なミス(部長・役員クラス)
会社に損害を与えかねないミスや、部長・役員クラスへの報告が必要な事案では、事の重大さを正しく認識していることを示す必要があります。「気をつけます」では軽すぎると判断されるでしょう。
この場合は、「猛省しております」「二度とこのような事態を起こさぬよう、肝に銘じます」といった、強い反省と自戒の念を表す言葉を選びます。自分の非を重く受け止めている姿勢を言葉で表現しましょう。
社外・取引先(もっとも慎重に)
取引先や顧客など、社外への謝罪は最も慎重さが求められます。個人のミスであっても「会社のミス」として捉えられるため、組織として再発防止に取り組む姿勢を見せることが重要です。
単なる個人の反省に留まらず「再発防止に向け、管理体制を見直してまいります」や「不退転の決意で信頼回復に努めてまいります」など、具体的かつ責任感のある言葉で締めくくります。相手の不安を払拭し、今後も取引を継続してもらうための誠意ある対応が不可欠です。
「以後気をつけます」を使ったメールの例文
業務をする中で発生したミスに対して「以後気をつけます」を使ったメールの例文をご紹介します。
件名
ご指摘いただいた資料の誤りについて
本文
〇〇部長
お疲れ様です。営業部の佐藤です。
作成した資料の添削をしていただきましてありがとうございました。
ご指摘いただいた点について再考と修正を行います。
作成が完了次第、再送させていただきますので、お手数をおかけし恐縮ですが明日の12時までにお目通しいただけますと幸いです。
誤字については、ひとえに私の確認不足によるものですので、以後気をつけます。
お忙しい中、お時間を取らせてしまい申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
資料の添削をしてくださった上司に宛てたメールで「以後気をつけます」を使った例文です。
前項で解説をしたように、お互いのことをよく知っている関係で軽微なミスが発生したケースを想定しています。
上記のような間柄でも「お手数をおかけし恐縮ですが」のようなクッション言葉を使い、自身のミスを指摘してくださったことや時間を使ってくださったことへの配慮を示しましょう。
例文では「資料の誤字」について「以後気をつけます」と謝罪をしていますが、同様のミスが続いている場合などは、軽微なミスでもこのフレーズは使ってはいけません。
「以後気をつけます」をさらに丁寧な表現にしたメールの例文
「以後気をつけます」だけでは、謝罪の気持ちを充分に伝えられないケースでは以下のようなメールを作成しましょう。
件名
請求書の誤りについて
本文
株式会社〇〇 営業部 〇〇部長
平素よりお世話になっております。
〇〇株式会社の佐藤です。
先日お送りしました請求書の金額が間違っているとの、ご連絡を頂戴し確認したところ一部計算式に誤りがあったため、誤った合計額を算出し貴社に送付しておりました。
誤「〇〇円」
正「〇〇円」
大事な請求書でこのような誤りを見逃してしまうこととなり、大変申し訳ありませんでした。謹んでお詫び申し上げます。
ダブルチェックを省略して送付をしてしまったため、このようなミスを招いてしまいました。
今後は、請求書ファイルを上長にチェックをさせた上で取引先様に送付するように徹底して参ります。
繰り返しになりますが、この度は大変なご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。
(署名)
社外の方への謝罪では基本的に「以後気をつけます」は使われません。
- 発生したミスに対する謝罪
- ミスが発生した原因と今後の対策
- 締めのお詫びの言葉
ご紹介している例文は、上記のような構成で記載されています。
「以後気をつけます」と表現していた部分は、今後の具体的な対策を記載しています。
ミスの内容にもよりますが、発生したミスについて「今後は気をつけます」というニュアンスだけの記載にしてしまうと、責任感が感じられない文章になってしまいます。
社内外を問わず謝罪をしなければならないシーンでは、言葉のチョイスやニュアンスの誤解が今後の関係性に大きく影響します。
以下の記事では、相手に謝意を伝えるメールの書き方について詳しく解説しているので、本記事と併せてぜひご覧ください。
関連記事:【ビジネス向け】誠意が伝わる謝罪文を書くためのポイントと例文
「以後気をつけます」の言い換え表現
「以後気をつけます」は、以下のような表現で言い換えられます。
- 以後、このようなことがないよう肝に銘じます。
- 以後、重々注意をして参ります。
- 以後、このようなことがないように心がけます。
上記のフレーズは「以後気をつけます」と同様のニュアンスで「気をつけます」よりもフォーマルな表現になっています。ただし、フォーマルな表現に言い換えたからといって、直接的な謝罪の言葉や具体的な対策の説明が不必要になるわけではありません。
基本的には「直接的な謝罪の言葉」と「今後の対策」は、謝罪メールには必須の要件と覚えておきましょう。
「以後気をつけます」は反省を示す言葉ですが、謝罪メール全体の構成が不十分だと、相手に「口先だけ」という印象を与えかねません。 トラブルの際はフレーズ単体だけでなく、件名から締めくくりまで誠意が伝わる謝罪メールの書き方と構成をしっかり押さえておくことが重要です。
脱・精神論!「以後気をつけます」を具体的なアクションに変える方法
ミスをした際、「次は気をつけよう」「もっと集中しよう」と心に誓うだけでは残念ながら同じミスを繰り返す可能性が高いです。人の集中力や意志の力には限界があるからです。
上司や取引先が求めているのは、あなたの「反省する気持ち(精神論)」ではなく、物理的にミスを防ぐための「具体的な行動変容」です。精神論から脱却し、再発防止策を具体的なアクションに落とし込むための3つの視点を紹介します。
仕組みで解決する(ダブルチェック、ツールの導入)
最も効果的なのは、自分の「注意力」に頼らず、ミスが起こらない、あるいはミスに気づける「仕組み」を作ることです。意志の力を使わずに済む環境を構築しましょう。具体的には以下のような対策が挙げられます。
- チェックリストの作成: 作業手順を書き出し、完了ごとにチェックを入れる習慣をつける。
- メール誤送信防止ツールの導入: 送信ボタンを押してから数秒間送信を保留する設定や、添付ファイル忘れを警告する機能を活用する。
- ダブルチェックのルール化: 重要なメールや書類は、送信前に必ず同僚や上司に見てもらうフローを確立する。
このように「ツール」や「他人」の力を借りることで、ヒューマンエラーを大幅に減らすことができます。
時間・環境を変える(午前中に処理する、印刷して確認する)
ミスが起きやすい状況というのは存在します。疲れている夜遅くや周囲が騒がしい環境で作業をしていれば当然ミスは増えます。そこで作業を行う「時間」や「環境」自体を変えてみるのも有効な具体策です。
例えば、重要なデータの入力や確認作業は脳が最もフレッシュな「午前中」に行うと決めたり、モニター上では見落としがちな誤字脱字を防ぐために、一度「紙に印刷して」赤ペンでチェックしたりする方法があります。環境を変えるという提案は具体的で実行可能な改善案として相手に伝わりやすいです。
報告のタイミングを変える(中間報告を入れる)
「完成してから提出し、そこでミスが発覚する」というパターンが多い場合は報告のプロセス自体を見直しましょう。
作業が完了してから報告するのではなく、20%〜30%できた段階で一度「中間報告」を入れるようにします。早い段階で方向性のズレや認識違いを修正できれば、最終的な成果物での致命的なミスを防ぐことができます。「今後は中間報告を徹底し、認識の齟齬がないか確認する機会を設けます」と伝えれば、仕事の進め方自体を改善しようとする姿勢が評価されます。
「以後気をつけます」の英語表現
「以後気をつけます」を英語で表現する場合は、以下のようなフレーズを使いましょう。
- I will be careful in future.
- I will be careful from now on.
「I will」を「I’ll」と省略することもできますが、英語での謝罪文は文字の省略をしないのがマナーです。
- I will do my best not to repeat such a thing ever again.
上記のような文章だと、より丁寧に「今後はこのようなことを繰り返さないように、最善を尽くします」という気持ちを表現できるでしょう。
FAQ
- Q:「以後気をつけます」はどのような意味で使われますか?
- A:発生したミスに対して「今後は注意する」という反省と自戒の意を伝える言葉です。ただし、これ自体は謝罪の言葉ではないため、「申し訳ございません」などのお詫びの言葉とセットで使うのがマナーです。
- Q:目上の人や取引先に使っても失礼になりませんか?
- A:文法的には敬語であり間違いではありませんが、状況によっては「反省が軽い」「口先だけ」と受け取られるリスクがあります。重大なミスや社外への謝罪では、「肝に銘じます」などのより重みのある表現や、具体的な再発防止策を併記する配慮が必要です。
- Q:どのような場面であれば問題なく使えますか?
- A:誤字脱字などの軽微なケアレスミスや、気心の知れた同僚・上司への報告であれば問題ありません。相手との信頼関係やミスの程度を見極め、深刻な謝罪やフォーマルさが求められる場面では避けるのが無難です。
- Q:「以後気をつけます」のより丁寧な言い換え表現はありますか?
- A:はい、あります。より反省の意を強調したい場合は、「以後、このようなことがないよう肝に銘じます」や「以後、重々注意をして参ります」といった表現を使うと良いでしょう。
まとめ
「以後気をつけます」は「今後は注意をします」という意味の言葉です。ビジネスをする上での謝罪メールで使われることが多く、謝意を伝えるニュアンスも含まれている言葉と言えます。
しかし、相手との今後の関係性に影響を及ぼす謝罪メールでは「以後気をつけます」の一言で、ミスをお詫びする気持ちを十分に表現することはできません。謝罪メールは、お詫びの気持ちを表す直接的なフレーズや、今後の対策についての説明を記載し、迷惑をかけた相手への想いを表現します。
「以後気をつけます」を使う謝罪メールが無いわけではありませんが、軽微なミスについての謝罪や、お互いのことをよく知る相手とのコミュニケーションのような限定的なシーンでのみ使われるフレーズであることを覚えておきましょう。
「以後気をつけます」をはじめとする、ビジネス用語を使ったコミュニケーションでは、相手との関係性を踏まえた上で、適切な言葉を選択する必要があります。以下のURLでは、ビジネス用語を使った「ビジネスメール例文集」を無料でダウンロードしていただけます。
日常生活ではあまり使われない言葉だからこそ、言葉の意味や正しい使い方を理解し、ビジネスメールを作成しましょう。


