マーケティングに従事している人は数多くいますが、「マーケティングとは何か」という問いにすぐ答えられる人はそれほど多くないでしょう。
なぜなら、人や時代などによって、マーケティングの定義はまちまちだからです。
たとえば経営学者のピーター・ドラッカー(1909年 – 2005年)は「マーケティングの理想は販売を不要にすることだ」と著書で述べました。
一方、同じく経営学者のフィリップ・コトラーは「個人や組織が他者との価値ある製品・サービスを創造、提供、交換を通じて、個人や組織が欲しいもの・必要なものを得るための社会的、経営的なプロセス」とマーケティングを定義づけています。
また、アメリカ・マーケティング協会(AMA)は、3年ごとにマーケティングの定義を見直しているそうです。
それだけマーケティングというのは抽象的な概念で、なおかつ広い意味を持つ言葉といえます。
今回はそんなマーケティングについて、可能な限り具体的な言葉を使いつつ、わかりやすく解説していきます。
マーケティングをはじめるなら、必ず押さえておきたいのが「デジタルマーケティング」についてです。
デジタルマーケティングは近年、マーケティング業界で大きく注目を浴びており、マーケティングに少しでも携わる方なら「どんなマーケティング手法なのか」を知っていて損はありません。
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目次
マーケティングとは? 一言でいえば「商品が売れる仕組みの構築」
マーケティング(Marketing)を一言でいうなら、商品が売れる仕組みの構築といえます。もう少し厳密な表現をするなら、「自らが生んだ価値あるもの(製品・サービスなど)を相手に買ってもらうために行われる経営活動すべてを指す概念」となります。
経営活動というのは、具体的に下記が挙げられます。
- 市場調査・分析
- 製品・サービスの企画や開発
- PR・IRといった広報活動
- 広告・DMなどの宣伝活動
- SEO・メール・SNS
- ブランディング
- サプライチェーン構築・最適化
- 店舗の設計・展開
- 営業・販促
- カスタマーサポート
以上のとおり、マーケティングにはありとあらゆるビジネス活動が含まれています。
企業においては、開発・マーケティング・営業といった具合で部門がわかれている場合が多く、「開発や営業もマーケティングの一環」といわれてもピンと来ない人もいるでしょう。
しかし、「開発や営業といった活動一つひとつが適切に繋がることで商品・サービスが売れる」ということがマーケティング視点で見たビジネスの考え方です。
たとえば「Webマーケター」という職業がありますが、マーケティング全体の中でWebマーケターがしている仕事はほんの一部に過ぎません。
インターネット広告やコンテンツSEOだけがマーケティングではありませんし、それらだけで商品が売れるわけではないのです。
市場のニーズ・欲求を捉えた商品の企画・開発や、実際に商品を顧客に届けるための流通網、そして現地の販売員といった様々な要素がそろって、初めて商品が売れます。
さらに言えば、顧客が商品を手に入れた後、真に価値を感じてもらえるかどうかもマーケティングの範囲です。
不良品を掴んでしまって顧客に対し、いかに迅速かつ適切に対応できるかどうかは、商品の評判に直接影響します。間接的には広報や商品設計の見直しといった、後のマーケティング活動に影響を与えるでしょう。
このように「一つひとつの経営活動をどのように実行するか、どのように繋げていくか」という仕組み化こそ、すなわちマーケティングなのです。
マーケティングと「営業・販売」の違いは?
すでに答えは出ていますが、営業・販売はマーケティング活動の一環として行われるものです。
本稿冒頭のドラッカーのコメントしかり、マーケティング部門と営業部門という組織構成しかり、マーケティングと営業・販売はまるで対照的な要素のように見えますが、そんなことありません。
狭義のマーケティングとは
企業のマーケティング部門が管轄しているような狭義のマーケティングは、ブランディングや広告などの集客や販売を促すために行われる活動全般を指します。
仕事や日常会話でマーケティングという言葉が登場したなら、一般的には狭義のマーケティングを指すことがほとんどでしょう。また、いわゆる「マーケター」という職業が担当する領域でも同様のことが言えます。
商品・サービスをどのように捉えてもらうか、爆発的な売上を立てるにはどのような戦略を取ればよいかなど……マーケターといえば、こういったことを生業としているイメージが強いですよね。
先ほど解説した本来的な意味でのマーケティングは、どちらかといえば経営企画室で議論されることが多い言葉です。
なお、本来的な意味のマーケティングと狭義のマーケティングの使い分けは、あまり考えなくてよいでしょう。
使い分けが必要ないというより、やはりマーケティングといえば狭義の方を指して使われることがほとんどで、使い分けを意識する必要がないのです。
本来的な意味で用いられるときは「プロダクト主導の商品開発はマーケティングの視点に立つと……」という具合に、そもそも論で使われるようなシチュエーションが多いです。そのため、さほど意識せずとも文脈で判断できるでしょう。
マーケティングの基本的な流れ
マーケティング活動は以下のような流れで進んでいくことが多いでしょう。
- 市場調査
- 戦略・計画立案
- 実践と検証・改善
各ステップについて詳しく解説します。
① 市場調査
マーケティングにおいて最初に取り組むことになるのは、ずばり市場調査です。調査を通じて市場にどのようなニーズや欲求があるのかを知り、その結果からマーケティング戦略を定めていきます。
具体的には政府や帝国データバンクが公開している統計情報、すでに社内にある顧客情報のデータ、アンケートといった方法で調査します。そうして得られたデータを分析し、市場のニーズ・欲求を把握していきます。
② 戦略・計画立案
次に市場調査の結果を踏まえて、マーケティング戦略を組み立てていきます。具体的にはターゲティングやコンテンツはどうするか、KGI/KPIはどうするか、競合他社とどう差別化するか、といったことを決めていきます。
そうした戦略の立案や、戦略を計画に落とし込んでいく過程では「3C分析」や「4P分析」といったフレームワークが役立ちます。フレームワークを使うことは効率が上がるだけでなく、より精度の高い戦略を策定するのにも寄与します。
③ 実践と検証・改善
マーケティング計画が立てられたなら、計画に基づいて戦略を実行していきます。具体的には広告運用やコンテンツSEO、そして営業・販促といった広告・宣伝活動です。
そして、広告・宣伝活動によってどのような効果が得られたかを検証し、次のマーケティング活動のために改善していくのが最後のステップとなります。
当然ですが、検証・改善は四半期ごとや一通り広告・宣伝活動を終えた後などだけでは足りません。細かな検証・改善は常に行っていき、計画と実績にズレがあれば目標達成のために都度修正していくようにしましょう。
代表的なマーケティング戦略
代表的なマーケティング戦略としては、今回は以下の3つを紹介していきます。
- Webマーケティング
- オフラインマーケティング
- オムニチャネル
それでは、各マーケティング戦略について見ていきましょう。
Webマーケティング
Webマーケティングとは、インターネットを利用するマーケティングのことを指します。デジタルマーケティングやオンラインマーケティングも、Webマーケティングとほぼ同じ概念といえるでしょう。
Webマーケティングで活用される媒体
- 検索エンジン
- メール・LINE
- スマホアプリ
- ブログ
- ECサイト
- ランディングページ
- SNS
- 動画共有サイト
- ライブ配信
- レビュー・口コミサイト
- Google マップ
- Web広告
Webマーケティングの利点としては、シンプルに多くの人々に接触できる機会が得られるというのはもちろんのこと、マーケティングを自動化できるということが挙げられるでしょう。
たとえばWeb広告の多くはターゲティングが可能です。最初に簡単な設定さえ済ませてしまえば、「CVが見込めるユーザーにのみ広告を表示する」ということを、システムが自動的に行なってくれます。
また、ランディングページやオウンドメディアなどは、「24時間365日働き続ける営業マン」と例えられることすらあります。
マーケティングが売れる仕組みの構築であるなら、Webマーケティングほど最適なものは他にないかもしれません。
そしてWebマーケティングの特徴の一つとして、変化のスピードが非常に早い点が挙げられます。Webに対してアンテナを張っておき、トレンドを常にキャッチすることもWebマーケティング担当者の重要な仕事です。
インターネットが一般に普及しだしたのは約20年ほど前からですが、そこからスマホやタブレット、SNS、動画共有サイトなど……様々な端末・媒体が誕生し、それに合わせてWebマーケティングも多様化してきました。
あまりにも変化が早すぎるため、たびたび規制が入ることもあります。たとえば2021年1月、GoogleのFitbit(ウェアラブル端末メーカー)買収について「利用者の健康情報等を広告に利用しない」という条件付きでEUが承認しました。
Webマーケティング担当者なら、技術の進歩だけでなく、こうした規制の動向についても追っておく必要があるでしょう。
なお、Webマーケティングについては下記記事でも詳細に解説しています。合わせて参考にしてみてください。
【初心者向け】デジタルマーケティングとは? 基礎知識や手法を徹底解説! | blastmail Official Blog
オフラインマーケティング
オフラインマーケティングとは、文字通りオフラインの(Webではない)場で行われるマーケティング活動のことを指します。
オフラインマーケティング活動の一例
- 飛び込み・電話営業
- ダイレクトメール
- 新聞・雑誌広告
- 交通広告
- コマーシャル
- ラジオ
- セミナー
- カンファレンス・展示会
Webマーケティング技術の著しい進歩や外出自粛の影響によって、Webマーケティングとはまた違った変化が、オフラインマーケティングにおいて生じています。
いわゆる「4マス」と呼ばれる代表的な媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)では、広告の売上高はどれも減少傾向にあります。(引用:インターネット広告のみプラス、雑誌は4割以上の減に – Yahoo!ニュース)
また、セミナーやカンファレンスといったイベント系の活動は三密状態を作り出すこともあって、オンライン(ビデオ会議)への移行が盛んに進んでいます。(参考:コロナ禍で縮小したマーケティング施策 1位は「オフラインのセミナー/展示会」――ベーシック調査)
このように、広告費の規模としては縮小傾向にあるオフラインマーケティングですが、それでも、適切に活用することで高い効果が見込めるでしょう。
例えば新聞を毎日読む人は40代から70代の中高年者が80%以上を占めており、その中でも最も多いのが60代の28.1%となっています。(引用:新聞、2000年と比べ1000万部減 : 読者層は高齢化)
また、60代以降の高齢層はネットの記事よりも新聞でニュースを読む割合の方が多く、高齢層にリーチするのであれば新聞広告は今でも十分に有効といえます。
メディアのオンライン化が進む一方で、今でもテレビを楽しんだり新聞を読んだりする人は一定数おり、その属性には一定の傾向が見られるようになってきているのです。
コロナ禍で厳しい向かい風が吹くオフラインマーケティングですが、その裏にはチャンスも潜んでいます。特に、デジタルに馴染みが浅い高齢層にリーチするなら、オフラインマーケティングにチャレンジする価値はあるでしょう。
オムニチャネル
オムニチャネルとは、オンラインかオフラインかを問わず、ありとあらゆるチャネル(媒体、経路)を連携させるマーケティング戦略のことです。
筆者自身の実体験として、「たまたま寄った家電量販店で、とある家電を気に入ったが、その場ではなく最安値で販売していたネット通販で買った」という経験があります。
それとは逆に、「ネットで商品を知ったけど実際にお店で見てから購入した」という経験をしたことがある人も多いでしょう。
このように、「商品・サービスを知る場所」と「実際に商品・サービスを買う場所」がスマホの普及によってますます多様化したことが、オムニチャネルという概念が生まれた背景です。
オムニチャネルのポイントは、店舗、ECサイト、SNSなどといった複数のチャネルのデータを連携させることにあります。
接客履歴、アカウント情報、購入履歴といったあらゆる情報を一つのデータベースに統合することでスムーズなショッピングを提供できるだけでなく、さらに効果的なマーケティング戦略を図れるようになるのです。
オムニチャネルを実践するには、ECサイトやスマホアプリの準備、そしてシステムの構築など、大きなコストが必要となってきますが、実現できたときの成果も大きくなるでしょう。
便利なマーケティングフレームワーク3選
フレームワークとは、問題解決のための論理的思考を助ける、考え方の枠組みを指します。フレームワークはマーケティング戦略を立案する上で非常に役立つため、いくつか覚えておいて損はありません。
今回は、マーケティング戦略の立案に役立つ代表的なフレームワークを3つ紹介していきます。
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
それでは、各フレームワークについて紹介していきます。
3C分析
3C分析とは、3つのマーケティング環境を分析し、マーケティング環境全体を把握するのに役立つフレームワークです。3つのマーケティング環境とは以下を指します。
- 市場(Customer)
ニーズや欲求、市場規模、将来性、トレンド、消費行動の変化など - 自社(Company)
保有しているリソース、ビジネスモデル、事業、企業理念など - 競合(Competitor)
シェア率、参入の容易性、代替可能性、各競合他社のポジショニングなど
このように環境情報を並び立てていくことで、自社の状況をより客観的に把握したり、業界全体を俯瞰的に捉えたりできるようになります。
4P分析
4P分析とは、マーケティングにおける4つの要素(商品・価格・販売促進・立地あるいは流通)を分析するのに役立つフレームワークです。
実際に分析を行う際は下記表のように情報を並べていき、マーケティング戦略の策定にや役立てます。
商品(Product)
|
価格(Price)
|
販売促進(Promotion)
|
立地・流通(Place)
|
なお、上記4要素のことは「マーケティングミックス」と呼ぶこともあります。
SWOT分析
SWOT分析(スウォット分析)とは、内部環境と外部環境の分析を通して、マーケティング戦略の立案を図るために作られたフレームワークです。
SWOTという名前は、「強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)」の4単語の頭文字から取られています。実際の分析する際は、下記のようにマトリクス表を作って行います。
プラス | マイナス | |
内部環境 | 強み(Strength)
自社が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと |
弱み(Weakness)
自社が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと |
外部環境 | 機会(Opportunity)
競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと |
脅威(Threat)
競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと |
なお、SWOT分析については下記記事でより詳しく、わかりやすく解説しています。合わせて参考にしてみて下さい。
SWOT分析とは? | blastmail Official Blog
マーケティングのおすすめ本3選
マーケティングに関する本は数多くありますが、今回はその中でも、入門におすすめな本、マーケティングの普遍性について学べる本、迷ったときにおすすめな本、合計3冊をご紹介します。
【マーケティング入門編】
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』は、日本を代表するマーケター森岡 毅氏による著作です。
森岡 毅氏は経営危機にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンを、わずか3年ほどでV字回復させた伝説的マーケター。
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』は、そんな森岡氏のマーケティング理論がわかりやすく解説されている本です。
【マーケティングの普遍性を学ぶなら】
コトラーのマーケティング・コンセプト
『コトラーのマーケティング・コンセプト』は2003年に出版された、経営学者 フィリップ・コトラーによる著作です。
マーケティングの形は日々変われど、ビジネスや経済の発展にマーケティングが必要なのは今も昔も変わっていません。『コトラーのマーケティング・コンセプト』は少々古い本ではありますが、マーケティングについて普遍的な理論が学べる本となっています。
【迷ったらとりあえずコレ】
世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた
『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』は、その名の通り、MBA(経営学修士)に関する本50冊が要約された本です。
マーケティングの多様化に伴って、マーケティングに関する本も多種多様となっており、正直選ぶのだけでも一苦労します。しかし、この本があれば、マーケティングについてどの部分を集中的に学ぶべきか、手がかりを得られるでしょう。
その他のおすすめ本はこちらも参考にすると良いでしょう。
マーケティングとは? まとめ
マーケティングとは、一言でいうなら「売れる仕組みを作ること」です。広告や宣伝だけではなく、営業や販促、さらには開発や物流もマーケティングの一環であり、マーケティングの視点に立って各要素を働かせることでビジネスが発展します。
また、社会の発展や技術の進歩に伴い、マーケティング戦略は非常に多様化しつつあります。特にWebを取り入れたマーケティング戦略は日進月歩の勢いで開発が進んでおり、情報が常にアップデートされています。
マーケティング担当者であれば、マーケティングの情報は常に最新の状態に保っておき、時代に取り残されないようにしましょう。
なお弊サイトでは、本稿以外にもマーケティングに関するお役立ち記事を多数アップしているので、ぜひ他の記事もご覧になってみてください。