インターネットの原型が登場したのは約50年前の1969年です。一方、メールの仕組みが誕生したのはいつかというと、インターネット誕生からわずか2年後の1971年となります。
それでは、メルマガの誕生は? ずばりメルマガの誕生はインターネットが普及しはじめた1990年代だろう、という予想が多いかもしれませんね。
答えは、メールが誕生してから7年後の1978年です。
意外に思われるかもしれませんが、これは本当です。後でも詳しく解説しますが、アメリカの企業でマーケティングを担当していたGary Thuerk氏が、1978年に世界で初めてマーケティング目的のメールを配信したのです。
さて、本記事ではそんな、意外に長いメルマガの歴史について解説していきます。
歴史がメルマガの改善やコンテンツ作成に直接役立つことはないかもしれません。しかし、歴史から今後の動向を予想したり、現在メルマガを取り巻く環境の背景について知っておくことは、決して損ではないでしょう。メルマガの歴史、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 メルマガの歴史
- 1.1 1971年:Eメールの原型が誕生
- 1.2 1978年:はじめてのマーケティングメールが配信される
- 1.3 1992年:Eメールを基軸にしたマーケティングオートメーション「Unica」が登場
- 1.4 1993年:複数のIT企業がメールサービスの提供を開始、普及が進みはじめる
- 1.5 1996年:世界初の無料Eメールサービスが登場。Eメールの爆発的普及がはじまる
- 1.6 2001年:国産メール配信システム「ブレインメール(現 ブラストメール)」が登場
- 1.7 2003年:アメリカでCAN-SPAM法が導入
- 1.8 2010年:レスポンシブメールが導入される
- 1.9 2012年:米大統領選でメルマガが活躍、モバイルからの開封率が40%を超える
- 1.10 2018年:ユーザープライバシー保護の動きが世界的に加速
- 1.11 2020年:新型コロナウイルスの世界的流行、メールマーケティングへさらなる注目が集まる
- 1.12 2021年:Appleデバイスにメールプライバシー保護機能が実装される
- 2 歴史から紐解くメルマガの今後
- 3 メルマガの歴史まとめ
メルマガの歴史
それでは早速メルマガの歴史を解説していきます。こちらが年表です。
1971年 | Eメールの原型が誕生 |
1978年 | はじめてのマーケティングメールが配信される |
1992年 | Eメールを基軸にしたマーケティングオートメーション「Unica」が登場 |
1993年 | 複数のIT企業がメールサービスの提供を開始、普及が進みはじめる |
1996年 | 世界初の無料Eメールサービスが登場。Eメールの爆発的普及がはじまる |
2001年 | 国産メール配信システム「ブレインメール(現 ブラストメール)」が登場 |
2003年 | アメリカでCAN-SPAM法が導入 |
2010年 | レスポンシブメールが導入される |
2012年 | 米大統領選でメルマガが活躍、モバイルからの開封率が40%を超える |
2018年 | ユーザープライバシー保護の動きが世界的に加速 |
2020年 | 新型コロナウイルスの世界的流行、メールマーケティングへさらなる注目が集まる |
2021年 | Appleデバイスにメールプライバシー保護機能が実装される |
1971年:Eメールの原型が誕生
この年、アメリカの技術者であるRay Tomlinson(1941 – 2016)氏がはじめて2台の端末間でEメールの送受信を行いました。このときに用いられた技術は、現代まで続くEメールの基盤となっています。1971年はEメールにおける記念すべき年なのです。
引用元:Ray Tomlinson(1941 – 2016)| CNET Japan
一応、1971年よりも前からEメールのようなやり取りは試みられていましたが、それは同一コンピュータ内でのコミュニケーションに限られていました。
なお、Tomlinson氏によると、はじめて送信したメールの内容は「”Test123 “か “QWERTYUIOP “だったようだ」とのことです。
1978年:はじめてのマーケティングメールが配信される
デジタル機器を販売していた米国企業、デジタル・エキップメント社でマーケティングディレクターを務めていたGary Thuerk氏は、この年に世界ではじめてマーケティング目的のメールを配信したといわれています。つまり、1978年は歴史上はじめてメルマガが送信された年なのです。
引用元:Gary Thuerk, The First SPAM Spreader on the Internet | by Edwin | The Crime Scene | Medium
Thuerk氏のメールは高い反応を得られ、結果的に1,300万ドル(現在の価値で7,880万ドル相当)もの売上を会社にもたらしたとのことです。この結果は皮肉にもスパムメールの誕生へつながり、Thuerk氏はこの後「はじめてスパムメールを配信した人物」として知られるようになります。
なお、この時代はマーケティング目的のメールを規制する法律がなく、メルマガをいくらでも配信し放題でした。また、ユーザーが自由にメルマガを購読解除することも不可能でした。
1992年:Eメールを基軸にしたマーケティングオートメーション「Unica」が登場
メールマーケティングの実践を目的とした世界初のデジタルツールは「Unica」です。Unicaは2022年2月現在、マーケティングオートメーションとして展開されていますが、提供開始はなんと30年も前である1992年に遡ります。
BtoBマーケティングにおいて、マーケティングオートメーション(MA)やメール配信システムといったメールマーケティングツールは、もはや無くてはならない存在です。
しかし、インターネットがまだ一般ユーザーにまったく普及していない90年代初期からメールマーケティングツールが存在していたとは、すこし驚きですね。
なお、UnicaはIBMによって2010年に買収され、その後は2018年にインドの多国籍企業「HCL Software」が買収して現在に至ります。
1993年:複数のIT企業がメールサービスの提供を開始、普及が進みはじめる
1993年に入ると、大学や企業といった大規模な組織向けに、複数のIT企業がメールサービスの提供を開始しました。この頃から画像・音声・動画といった様々なファイルがメールに添付できるようになり、高度なコミュニケーションが取れるようになっていました。
1996年:世界初の無料Eメールサービスが登場。Eメールの爆発的普及がはじまる
1996年7月、世界初の無料Eメールサービス「HoTMaiL」の提供が開始されました。これにより一般ユーザーも容易にEメールを送受信できる環境が整い、Eメールの爆発的な普及がはじまります。
また、この頃にはHTMLメールの表示が可能となっており、フォントカラーの編集やクリッカブルなテキストの設置など、メルマガは現代の形へ一気に近づきました。「HoTMaiL」という特定のアルファベットが大文字になっているサービス名も、HTMLメール表示できることが由来だそうです。
そして1996年12月、Webサービスを提供する米国企業の「Xoom」が、600万人という大規模なインターネットユーザーにマーケティングメールを送りました。その内容は同社のスパム対策ツール「Email Robot」のプロモーションです。
このときから対策ツールが登場するほどスパムが横行していたということは、裏を返すと、メールを使ったマーケティングが効果的であることを示唆しています。
2001年:国産メール配信システム「ブレインメール(現 ブラストメール)」が登場
日本にADSL回線が普及しはじめた年である2001年、メール配信システム「ブレインメール」が誕生しました。これだけ早い時期から提供が始まったメール配信システムは、世界的に見てもまれです。
ブレインメールは名称を変更し、現在は「ブラストメール」として弊社株式会社ラクスライトクラウドから提供されています。
20年以上ものあいだ培われたメール配信ノウハウにより、ブラストメールは毎時1,150万通もの超高速配信が可能です。性能はもちろん、使い勝手の良さと導入しやすい価格設定も高評価を呼び、顧客導入数14年連続No.1という圧倒的な実績を誇ります。
2003年:アメリカでCAN-SPAM法が導入
一見するとスパムを許可するかのような「CAN-SPAM法」というネーミングですが、実際はそうではありません。
CAN-SPAM法は「Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing」の略で、実際には「すべてのメール受信者は、企業からのメール配信を拒否できる権利を持つ」といった主旨の法律です。
CAN-SPAM法では違法行為を行った企業に対する罰則も明確に規定され、これにより無法状態だったメールマーケティング環境に一定の秩序がもたらされました。
2010年:レスポンシブメールが導入される
iPhone 3GSが登場した2009年、受信環境によってメール表示が左右される問題の解決が技術者のJohn Thies氏と、デザイナーのMichelle “Miki” Klann氏によって推し進められました。そして2010年、晴れてメールにレスポンシブデザインの概念が導入されるようになったのです。
引用元:John Thies | General Assembly
引用元:Michelle Klann – Scottsdale, Arizona, United States | Professional Profile | LinkedIn
この頃からメルマガは重要なマーケティングツールとして認識され始め、Hubspotやマルケトといったメールを主軸としたマーケティングオートメーションツールの普及が進みました。
2012年:米大統領選でメルマガが活躍、モバイルからの開封率が40%を超える
2012年の米大統領選は、アメリカ初の黒人大統領バラク・オバマ氏が当選した選挙として知られています。オバマ氏はこのときにインターネットを使った戦略を活用し、その際にメールマーケティングが大きな効果を発揮したことは有名です。
参考:最も反応が高かったメール件名は“Hey”|オバマ・キャンペーンのEメール戦略
また、このときすでにモバイルからのメール開封率は40%を超え、スマホの普及によるWebマーケティング環境の著しい変化が垣間見えます。
2018年:ユーザープライバシー保護の動きが世界的に加速
2018年はユーザープライバシー保護が急速に進んだ年です。この年に消費者データプライバシー法であるGDPR(一般データ保護規則)がEUで施行され、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)がアメリカで制定されました。
これはメルマガにも一定の影響を及ぼし、メルマガのオプトイン・オプトアウトをGDPRに則る形に対応した企業は少なくないでしょう。
2020年:新型コロナウイルスの世界的流行、メールマーケティングへさらなる注目が集まる
2019年末、中国の武漢市で新型コロナウイルス感染症が発生しました。翌年このウイルスは世界的に大流行し、日本においては緊急事態宣言の発令による飲食店の営業制限や、イベントの開催制限などが行われました。
また、政府主導でテレワークの推奨や不要不急の外出を控える呼びかけがなされたことで、もともとDXが遅れていた日本企業にDXが急速に進み、デジタルマーケティングに大きな注目が集まるようになりました。
メールマーケティングにおいても、緊急事態宣言の前後でメルマガの配信数が10%増えたと言われています。
2021年:Appleデバイスにメールプライバシー保護機能が実装される
2021年、Appleが行ったアップデートによって、iPhoneやMacといったApple製品のメールアプリに「メールプライバシー保護」機能が実装されました。メールプライバシー保護はメールの開封情報やIPアドレスを企業から隠す機能で、開封率が重要指標とされているメルマガに大きな影響を与えました。
歴史から紐解くメルマガの今後
メルマガの歴史について分かったところで、ここからはメルマガの将来について4点解説していきます。
- モバイルファーストの促進
- プライバシーへの配慮
- クリック率の重要性が上がる
- インタラクティブメールの普及
モバイルファーストの促進
2022年2月現在ですでに、メール開封の半数以上はスマホによるものです。また、メールがスマホで正しく表示されない場合、なんと70%の確率で30秒以内に削除されてしまうという調査結果もあります。
今後もスマホでメール開封される傾向は高まっていくと考えられるため、メルマガのコンテンツ作成は、PCよりもスマホでの見やすさを念頭においたデザインが重要視されるでしょう。
プライバシーへの配慮
GDPRやCCPAの施行、GoogleによるCookieの廃止、そしてAppleのメールプライバシー保護機能の提供など、メルマガを取り巻く外的環境は厳しくなりつつあります。
しかし、これはユーザーのプライバシーを守るためであり、当然の変化です。今後はメルマガにおける顧客情報の取扱いや、購読の導線と購読解除方法の提供により気を配るようにしましょう。もちろん、個人情報の取扱い規制に関する国内外の動向にも要注目です。
クリック率の重要性が上がる
Appleがメールプライバシー保護機能を実装したことで、Appleデバイスユーザーの開封が正確に計測できなくなってしまいました。特に日本はスマホのトップシェアがiPhoneとなっており、その影響は計り知れません。
しかし、これは逆にいえば、件名や配信タイミングよりもメルマガの中身がより重要になったともいえます。そのため今後はクリック率や、メルマガクリックからのコンバージョン率を意識して効果測定を行っていくことが重要となるかもしれません。
インタラクティブメールの普及
技術の進化によって、Webサイトは驚くほど動的なデザインが可能になりました。しかし、メルマガはまだWebサイトほど、ユーザーのインタラクションに対して動的な反応を見せるデザインは普及していません。
そのため将来的には、メールマーケティングにより多くのリソースを投下できる企業が率先して、競合との差別化のためにインタラクティブなデザインをメルマガに取り入れるでしょう。
具体的にはカルーセルやアニメーション、ゲーミフィケーション(コンテンツにゲーム性を取り入れること)といったデザインがメルマガに導入されるようになるはずです。
メルマガデザインはWebデザインのトレンドを後追いしていることから、それらが近いうちに導入される可能性は高いと考えられます。
メルマガの歴史まとめ
今回はメルマガ50年の歴史について解説しました。こうして振り返ってみると、Eメールは誕生当時からマーケティングにおける可能性が見いだされていて、メルマガの歴史は意外と深いことが分かりましたね。
また、1978年に配信された世界初のメルマガが何千万ドルもの成果を上げたこと、メルマガがバラク・オバマ氏の大統領選で活躍したことなどから、メルマガの確かなポテンシャルが歴史からは垣間見えます。
おそらくインターネットにメールという仕組みが残り続ける限り、メルマガも効果的なマーケティング手法としてずっと活用され続けるでしょう。
モバイル対応や個人情報取得の規制など、解決が必要な課題はもちろんあります。そうした課題を乗り越えて、これからもメルマガを効果的に運用していきましょう。
なお、当サイトではメルマガの作り方について初心者向けに解説したE-Bookを提供しています。E-Bookは現役のメルマガ配信者が執筆したため、メルマガに関する最新の事情も把握可能です。ダウンロードは無料なので、ぜひ手に取ってみてください。