請求書は郵送で原本を送るのが一般的でしたが、最近はメールで送る企業が増えています。
紙の請求書のやりとりに慣れていると、電子請求書でも経理的に問題ないのか不安になる方もいるかもしれません。
この記事では「請求書をメールで送るのは法律的にOKなのか」「メールで請求書を送る際に抑えておくべきポイント」を解説しています。
目次
請求書をメールで送るのは法律的に大丈夫?
法律的に、メールで請求書を送付することは問題無しとされています。
それに加え現在は、政府が紙の請求書を撤廃し、完全な電子化への移行を進めています。
請求書 完全電子化へ 使用統一で政府・50社協議、会計・税の作業負担減
企業間でやりとりする請求書の完全なデジタル化に向け、データ仕様を統一する取り組みが始まる。政府とソフトウエア企業など約50社が近く協議を開始し、2023年までに導入をめざす。会計や税に関する作業を効率化し生産性を高める。…
2020年7月30日 日本経済新聞 朝刊
ただし、メールで電子請求書を送る場合にはいくつか注意点があります。
メールで請求書を送りたいと考えている方は以下の点をチェックしておきましょう。
請求書の発行義務について
そもそも、法律的に請求書は発行義務がなく、別の書類で取引内容や日付、金額などを双方が確認できれば出す必要はありません。
ですが、企業間で金銭のやりとりが起きた場合、請求書の原本(紙)を取引の証明としていることがほとんどです。そのため、メールで請求書を送る際には、予め相手の企業に電子請求書でも問題ないか確認をとる必要があります。
請求書の管理方法については各企業のルールやポリシーによって異なるため、電子請求書のみでも大丈夫か、送信時の注意事項はあるかどうかを事前に担当者に聞いておきましょう。
請求書の電子印鑑
請求書をメールで送る場合、紙の請求書をスキャンするか、パソコンでデータを作成するかどちらかになるかと思います。
スキャンする場合に大丈夫ですが、請求書をパソコンで作成する際に問題になってくるのが「印鑑」です。
法律的には、請求書に会社の印鑑を押す必要はないとされていますが、実際には会社からの正式な書類であることを証明する目的で印鑑が押されていることがほとんどです。場合によっては印鑑の押されていない請求書は受け付けないという企業もあります。
メールで送る請求書も、慣例にのっとりデータ化した印鑑を押しておいた方が無難です。
請求書をメールで送る際のファイル形式
請求書をメールで送る時にはPDF形式で送ることがマナーです。
WordやExcel形式のファイルで送ると、簡単にデータを編集できてしまうことに加え、相手のバージョンによっては書式やレイアウトが崩れてしまうかもしれません。
その点、PDF形式であれば、データが改竄されたり書式やレイアウト崩れが起きる心配がありません。Word、Excel共に、作成したデータをPDF形式で書き出す機能があるのでそちらを使用しましょう。
セキュリティを高めたい場合にはPDFファイルにパスワードを設定することもできます。その際には請求書を添付したメールと、パスワードを記載したメールの二通を送るようにしましょう。
また、メールで請求書を送って良いからといって、本文に直接打ち込むのはNGです。必ず形として残せるようPDFファイルを作成しましょう。
メールで送られてきた請求書の保存方法
電子請求書の場合も、紙の請求書と同様に「発行側・受け取り側共に7年間の保管」が義務付けられています。
原則、国税関係の帳簿書類は紙媒体で保管しますが、電子帳簿保存法の条件を満たせば、データでの保存も可能です。
メールで請求書を送る際には以上のポイントに気をつけましょう。
請求書をメールで送るメリット
請求書を電子化するメリットとして、
- 郵送コスト削減
- 消耗品費用の削減
- 保管の簡易化
- 請求書送付作業の簡易化
- 郵送に関係するトラブル防止
以上のような点が挙げられます。
請求書をメールで送れば、郵送にかかる費用や時間を減らせることに加え、送り間違いや、切手不足による返送などのトラブルも防ぐことができます。
紙で請求書を発行する場合にかかる、紙、インク、切手、封筒代を考えると大幅な経費削減に繋がります。保管、管理作業の効率化、環境問題への配慮を考えても電子領収書は大きなメリットがあります。
ただ、政府が電子請求書の普及を進めているとはいえ、一般的な企業では紙の請求書が主流な場合もあり、メールでの請求書の送付が常識として定着しているわけではありません。
メールで電子ファイルをもらっても、結局プリントアウトして紙媒体で保管している企業も多くあります。
そのため、前述したように、メールで請求書を送る場合には相手方の確認をとる必要があります。また、PDFファイルであってもデータを改竄されるリスクは0ではありません。電子ファイルなので情報漏洩のリスクもあります。
電子請求書はこれから主流になるはずですが、こうしたメリット・デメリットがあることを把握しておきましょう。
請求書をメールで送る際の例文</h2
次に、請求書をメールで送る際の例文を紹介します。
金銭のやりとりを証明する重要な書類ですので、不備があると相手からの信用を失いかねません。実際に使える例文と合わせて解説します。
メールのみで請求書を送る場合
件名
【請求書】〇月分請求書送付【××株式会社】
本文
株式会社〇〇 経理部 田中様
平素より格別のお引き立てをいただき、御礼申し上げます。
××株式会社 事業部の佐藤です。
〇月分請求書をメールにて送付させて頂きました
ご査収のいただき、期日までの振り込みをお願い申し上げます。
【添付内容】
・請求書(ファイル名).pdf 1通
【支払い期限】
・〇〇年〇月〇日迄
ご不明な点がございましたら、お手数ですが佐藤までお問い合わせください。
また、請求書原本郵送の必要がございましたらお伝えください。
何卒よろしくお願いいたします。
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署名
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まずは、件名の付け方に注意しましょう。「請求書」「何月分」「自社名」のキーワードを入れることで、どんな内容のメールが、どこから送られてきたのかを明確に伝えることができます。
取引件数が多い会社の場合、分かりにくい件名だと他のメールに埋もれてしまい見落とされてしまう可能性があります。
メールを探す時にも上記の内容が記載されていれば、すぐに見つけることができます。相手からしても、後々メールを検索する際にありがたいはずです。
また、添付するファイル名の付け方もマナーがあります。
一般的には「請求書_日付_内容_発行日」という内容をアンダーバーやピリオドで区切って記載します。
(例)「請求書_2020年12月分_システム使用量_20201230.pdf」
このような感じです。件名と同じくひと目で内容が分かるようにすることを心がけましょう。
郵送でも請求書を送る場合
件名
〇月分請求書郵送のご案内【××株式会社】
本文
株式会社〇〇 経理部 田中様
いつもお世話になっております。
〇〇株式会社 事業部の佐藤と申します。
(案件名や商品名)の請求書を添付いたしましたので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
なお、請求書原本もあわせて郵送させていただきました。
本請求書に明記させて頂いた振込先へ、
〇年〇月〇日までにお振込み下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。
添付ファイルが開封できないなどの不都合な点や
ご不明な点がございましたら、お手数をおかけいたしますが、
ご一報いただきたく存じます。
何卒よろしくお願いいたします。
ご請求番号:
ご請求金額:
お支払期限:〇年〇月〇日
添付ファイル:(ファイル名).pdf 1通
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署名
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電子請求書だけでなく原本も郵送するパターンの例文です。
気を付けるポイントは先ほどの例文と変わりません。内容やファイル形式、ファイル名に不備がないか確認しましょう。
まとめ
以上、請求書をメールで送る際の注意点や例文をまとめました。
請求書をメールで送るケースは増えてきていますが、先方との確認が取れていないとトラブルに繋がる可能性もあります。
電子請求書をメールで送ることは法律的にも問題ありませんが、書類の管理方法やルールが会社によって異なるため、メールで請求書を送っても大丈夫かどうか事前に理解を得ることが重要です。
その確認に加え、請求書の記載方法や捺印方法も決めておくとその後のやりとりもスムーズに進みます。
請求書は会社の経理に関する重要な書類となります。メールで送る際にはファイル形式やメールの件名、本文に不備がないか注意し、確実に相手に届くようにしましょう。