SWOT分析は、ハーバードビジネススクールが1920年代に作ったビジネスフレームワークです。フレームワークが作られてから1世紀経過した今でも、あらゆる企業で適切な経営判断を下すためにSWOT分析が役立てられています。
そんなSWOT分析ですが、「よく聞くけど何だか難しそう」「やってみたけど、上手くまとまらなかったのでやめた」という人も、少なくないのではないでしょうか。
今回はそういったSWOT分析に関する疑問や悩みを持つ人のために、SWOT分析について初心者向けにわかりやすく解説していきます。
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目次
SWOT分析とは
SWOT分析(スウォット分析)とは、内部環境と外部環境の分析を通して、経営戦略や営業計画の立案を図るために作られたビジネスフレームワークです。
競合と比較し、自社の強み・弱みを把握すると、自社の中核となる強みである「コアコンピタンス」が見えてきます。
コアコンピタンスとは、他社には真似でない自社の強みのことです。多くの事業戦略は、コアコンピタンスを意識した上で立案されます。
4つの要素が絡む分析なため、なんだか複雑で難しそうな印象を受けるかもしれません。しかし、大丈夫です。
SWOT分析は、多くの情報をシンプルに考えられるようになる「マトリクス分析」という分析方法が核となっています。そのため成り立ちや、やり方さえ一度覚えてしまえば、マーケティングフレームワークの利用に不慣れな方でもでもかんたんにSWOT分析を使いこなせるようになるでしょう。
SWOT分析のマトリクス(軸)の意味
まずはマトリクス分析について簡単に説明します。マトリクス分析とは、意味の異なる2つの軸をクロスするように引いて2×2マスの表をつくり、集めてきた情報を各マスの属性に合致するよう並べていくことで、複雑な問題をシンプルに捉えられるようになる分析手法です。
今回のSWOT分析に限らず、マトリクス分析は多くのビジネスの場面で役に立つ分析手法なので、知らなかった場合はぜひ今ここで覚えていってください。
本題ですが、SWOT分析における2軸の意味は、それぞれ下記の通りとなっています。
- 縦軸……内部環境か、外部環境か
- 横軸……プラス(ポジティブ)要素か、マイナス(ネガティブ)要素か
ここから割り出せるのが、SWOTの4要素というわけです。
SWOT分析に必要な4要素
それでは、SWOT分析をするのに必要な4要素について解説していきます。SWOT分析の4要素(強み・弱み・機会・脅威)は、2軸の意味合いに従って下記のとおり並びます。
プラス | マイナス | |
内部環境 |
S:強み | W:弱み |
外部環境 |
O:機会 | T:脅威 |
そして4要素の意味合いについては、それぞれ以下の通りです。
- S:強み(内部環境)……自社が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと
- W:弱み(内部環境)……自社が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと
- O:機会(外部環境)……競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成に貢献するもののこと
- T:脅威(外部環境)……競合他社や市場といった外部が持つ特徴の中で、目標達成の障害になるもののこと
- 経営資源(ヒト・モノ・カネ)
- 知的財産
- 商品・サービス
- ブランド
- 価格
- コスト
- 主要顧客との関係
- 知名度・評判
- 立地
- インフラ
- 政治
- 法律・規制
- 経済・社会
- 市場トレンド
- 株主
- 技術
- 競合他社
SWOT分析のメリット・デメリット
SWOT分析はあくまで数あるフレームワークのひとつなため、得意なこともあれば不得意なこともあります。得意・不得意を把握しておき、SWOT分析を上手に活かせるようになりましょう。
SWOT分析のメリット
SWOT分析をすることで得られる大きなメリットは、市場の脅威・機会(外部環境)に対し、自社の強みをどう活かし、弱みをどのように克服するか整理できる点です。
もし外部環境に対し、自社が強みを発揮できないと判断した場合は、外部環境にアプローチし市場を動かすか、自社のコアコンピタンス自体の変革を図るなどが必要になります。
SWOT分析のデメリット
SWOT分析の主なデメリットは、SWOT分析の結果から具体的戦略を直接導き出すのは難しいという点です。SWOT分析から具体的戦略を導き出すには、得られた分析結果からさらに踏み込んだ分析をする必要があります。
また、やり方によって、情報に偏りが生じたり分析の客観性が不足したりする点も無視できないデメリットです。精度の高い分析結果のために、各部門から情報を集めたり他のフレームワークを使ったりといった工夫をしましょう。
SWOT分析の進め方
ここからは、SWOT分析を適切に行うための順序について解説していきます。結論、SWOT分析から戦略・計画立案は下記のような流れで進めていきます。
- SWOT分析する目的をハッキリさせる
- 情報を集め、整理・分析していく
- 「クロスSWOT分析」で具体的戦略に落とし込んでいく
各手順について詳しく見ていきましょう。
① SWOT分析をする目的をハッキリさせる
いきなりSWOTリストを作りだす前に、まずはSWOT分析をする目的をハッキリさせておき、分析にかかわるメンバー同士で共通認識を作ることからはじめましょう。
SWOT分析は精度の高い分析結果を出すために、複数人の時間を必要とすることも多いため、目的をハッキリさせることはなおさら重要です。
たとえば「自社が得意とする市場において競合他社のシェアが急速に伸び始めている。この問題に対してどのような戦略が有効かを知る」ことが目的だとしましょう。
この場合、比較対象が特定の1社であれば、その1社をSWOT分析するのも手です。なぜシェアが伸び始めているのか原因を炙り出してから、自社のSWOT分析に取り掛かると、取るべき戦略が見えやすくなるでしょう。
つまり、事前に目的を共有してからSWOT分析にとりかかることで、どの要因を深く掘り下げていくかがわかるようになるのです。
目的をはっきりさせないまま、あるいはしっかり共有しないままSWOT分析をしても、ただのリスト作成に終始してしまいがちです。必ず目的ありきでSWOT分析をスタートするようにしてください。
② 情報を集め、整理・分析していく
SWOT分析をする目的がハッキリしたら、SWOTリストの作成にとりかかりましょう。
要素によっては内部環境と外部環境どちらに当てはめるか判断が難しいことがありますが、そんなときは「コントロールが可能かどうか」で区別してください。自社でコントロールできない要素は「外部環境」で、そうでない要素は「内部環境」としていきます。
また、「強みとも弱みとも取れる」という特徴については、両方の解釈をそれぞれに並べてください。
地方のラーメン店を例にとってざっくりSWOTリストを作るとするなら、このような感じになるでしょう。
プラス | マイナス | |
内部環境 | S:強み
|
W:弱み
|
外部環境 | O:機会
|
T:脅威
|
それを防ぐためにも、できれば各部門から複数人で情報を出し合ったり、「MECE」や「3C分析」といった他のビジネスフレームワークを使って偏りを少なくする工夫をしましょう。
また、内部環境よりも先に外部環境(機会・脅威)から洗い出すことによって、内部環境をより客観的に決めていけます。外部環境は自社でコントロールできない要素であり、外部環境から決めていくことは必然的に逆算思考にもつながります。
③ 「クロスSWOT分析」で具体的戦略に落とし込んでいく
SWOTリストの作成が完了したら、いよいよ戦略の立案です。ただ、SWOTリストそのままでは戦略立案に役立てにくいので、作成したSWOTリストを利用してさらに踏み込んだ分析「クロスSWOT分析」をしましょう。
クロスSWOT分析もマトリクス分析の一種です。横軸が「強み・弱み」で、縦軸は「機会と脅威」になります。SWOT分析の要因を、そのまま軸へとスライドさせるようなイメージですね。
S:強み(内部環境) | W:弱み(内部環境) | |
O:機会(外部環境) |
強み × 機会 | 弱み × 機会 |
T:脅威(外部環境) |
強み × 脅威 | 弱み × 脅威 |
- 強み × 機会
機会によって得られる利益を、自社の強みによってどう最大化するか - 強み × 脅威
脅威によって被りうる損失を、自社の強みによってどうカバーするか。あるいは、自社の強みを踏まえて脅威から機会を見いだせないか - 弱み × 機会
自社の弱みを理解した上で、機会によって得られる利益をどう最大化するか。あるいは機会によって得られる利益で、自社の弱みをどのようにカバーするか - 弱み × 脅威
自社の弱みを理解した上で、脅威から被りうる損失をどのようにして最小に食い止めるか。あるいは損切りするべきか
SWOT分析としてのゴールはSWOTリストの作成で一旦終了しますが、目的達成が本質的ゴールなため、やはりSWOT分析はクロスSWOT分析までセットで考えましょう。
SWOT分析に役立つビジネスフレームワーク3選
どんな分析も、参照するデータの中身や性質によって得られる結果は大幅に変わります。特にSWOT分析は、データを出す過程がどうしても人間の手に頼られてしまうため、バイアスやヒューリスティック(傾向、偏向、先入観)による結果のブレが生じてしまいがちです。
場合によってはまったく的外れな結果を出してしまい、致命的な判断ミスを犯してしまう可能性も、ありえない話ではありません。
そういった失敗を防ぐためには、やはりフレームワークが有効です。あなたは「フレームワークを使うのにフレームワークを使うのってどうなの?」と思ったかもしれませんが、フレームワークを有効利用できる場面では積極的に利用すべきでしょう。
それでは、SWOTリストの作成時に役立てられるビジネスフレームワークを3つ紹介していきます。
① PEST分析
PEST分析(ペスト分析)とは、外部環境のマクロ分析をするためのフレームワークです。PESTという名前は「政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)」の頭文字が取られています。
P:政治
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E:経済
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S:社会
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T:技術
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② 5フォース分析
5フォース分析(ファイブフォース分析)は、業界の収益性に影響を与える以下5つの要因から、業界の収益性について分析するフレームワークです。
- 業界内の競合
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
図としては、下記のように競合を中心に置いて表現します。
新規参入
どのような新規参入業者が存在するか。新規参入の数は多いか ▼ |
||
売り手 ▶
自社に資源を供給する企業の立場や交渉力は強いか |
競合
市場のシェアはどのようになっているか |
◀ 買い手
自社商材の買い手は誰か。買い手の立場や交渉力は強いか |
▲
代替品 自社商材の代替品となりうるものはなにか |
③ 4P分析
SWOT分析で必要な内部環境の分析に役立つのが4P分析です。「商品(Product)・価格(Price)・販売促進(Promotion)・立地あるいは流通(Place)」と頭文字がPの英単語で要素が構成されているため、そのような名前になっています。
商品
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価格
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販売促進
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立地・流通
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SWOT分析まとめ
SWOT分析は、複雑な問題をシンプルにとらえ、具体的戦略の立案に役立てられる、非常に実践的なフレームワークです。
手法はマトリクス(2軸)分析となっているので、分析初心者でもとっつきやすく、やり方さえ覚えてしまえばすぐにでも取り組んでいけます。
メリットの大きいSWOT分析ですが、データを取るときは人力なため、主観が入りやすいという不得意な部分もあります。各部門から担当者を呼んだり、他のフレームワークも併用したり、なんらかの工夫をして分析の精度を高めましょう。