
メール配信において避けて通れない課題の一つが「スロットリング」です。特にメルマガや通知メールを大量に送信する企業にとってはスロットリングによる影響が大きな問題となります。この仕組みはインターネットサービスプロバイダー(ISP)が通信回線の負荷を軽減するために導入した制御手段ですが、これによりメールが受信者に届かなくなるリスクが発生します。
例えば、大規模なキャンペーンメールを一斉配信した際にスロットリングが発生すると、予定通りにメールが配信されずマーケティング活動に悪影響を与えることがあります。また、スロットリングはIPアドレスのレピュテーションが低い場合に起きやすいためメール送信者の信頼性が問われることにもつながります。
この記事では「スロットリングとは何か」その仕組みや原因について詳しく解説するとともに、スロットリングを防止するための具体的な対策を紹介します。
目次
スロットリングとは
スロットリングとはISP(インターネットサービスプロバイダー)が通信回線の負荷を抑えるために、一時的に受信できるメールの量を制限するプロセスのことです。多くのISPでは特定の時間内に受信できるメールの数を設定しており、この制限を超えるとスロットリングが発生します。
通信回線は多数のユーザーが共有して使用するため、特定のユーザーが過剰に利用すると回線の安定性が損なわれてしまいます。これを防ぐためにISPはスロットリングを用いて負荷をコントロールしているのです。
スロットリングが発生すると、ISPは送信者に「受信拒否」のエラーコードを返信します。この場合、同一IPアドレスから送信されたメールがすべて拒否され一定時間が経過するまで送信が再開できなくなります。ただし、この解除までの時間はISPごとに異なり具体的な期間は公開されていません。そのため、スロットリングを回避する対策を講じることが重要です。
スロットリングが起きる具体例
スロットリングが発生する主な状況として、以下が挙げられます。
- 短時間で大量のメールを送信した場合
- IPレピュテーション(信頼度)が低い場合
- 受信側メールボックスの容量が不足している場合
こうした状況を未然に防ぐためには、計画的なメール送信と信頼性の高いIPアドレスの運用が求められます。
スロットリングが起きる原因
スロットリングは、大量のメール送信やIPレピュテーション(安全性評価)の低下など、いくつかの理由で発生します。ここでは、その主な原因を解説します。
大量のメール送信・受信
多くのISPでは一定時間内に送信できるメール数を制限しています。この制限を超えて大量にメールを送信すると、スロットリングが発生します。これは、メールサーバーへの負荷を軽減しスパム攻撃を防ぐための重要な措置です。
具体的なスロットリングの基準値は公開されていないため、以下の点を意識して対応する必要があります。
・一度に大量のメールを送らない
・送信ペースを分散させる
・受信者リストを適切に管理する
こうした対策を講じることで、スロットリングのリスクを軽減できます。
レピュテーションが低い
IPレピュテーションが低い場合もスロットリングのリスクが高まります。レピュテーションとは「評判」を意味し、IPレピュテーションはサーバーの利用状況や過去の履歴を基に評価されます。
レピュテーションが低下する原因は以下の通りです。
- IPアドレスの利用を開始したばかりで評価が定まっていない
- 以前にスパム判定されたIPアドレスを利用している
- 不適切なメール送信が繰り返されている
これらの要因を解消するためには、信頼性の高いメール運用を心がけることが重要です。
スロットリングが発生する最大の要因は、送信元IPアドレスの「信用不足」にあります。インターネット上の住所であるIPアドレスがどのように評価され、スコアリングされているのか。到達率を左右する「IPレピュテーション」の仕組みと、スコアを上げるための具体的な運用方法については、以下の記事で解説しています。
メールボックスの容量不足
受信者のメールボックスが容量不足の場合もスロットリングが発生する可能性があります。未読メールが大量に残っていたり容量が限界に達していたりすると、新たなメールを受信できなくなることがあります。
この場合、メール送信者側で直接対応するのは難しいため、受信者に以下の対応を促しましょう。
- 不要なメールを削除する
- 容量の大きなメールボックスへ移行する
- メールを定期的に整理する
スロットリングの影響と注意点
スロットリングが発生すると、メール送信にどのような影響があるのかを知ることが重要です。また、スロットリングの影響を最小限に抑えるための注意点についても触れておきます。
スロットリングが与える影響
スロットリングが発生すると、以下のような影響が出ることがあります。
- メール到達率の低下 スロットリングが発生すると予定していた数のメールが受信者に届かなくなります。特に一斉送信を行う場合、到達率が大幅に低下しマーケティング効果に影響を及ぼす可能性があります。
- メール遅延によるビジネス機会の損失 営業メールや重要な通知が遅れることで受信者側での対応が遅れたり、ビジネスチャンスを逃すリスクがあります。
- IPアドレスの信用低下 スロットリングが頻繁に発生する場合、IPアドレスのレピュテーションがさらに低下しメールの到達が難しくなる負のスパイラルに陥る可能性があります。
スロットリングが発生した際の注意点
スロットリングが発生してしまった場合、迅速に対応することで影響を最小限に抑えることが可能です。以下ではスロットリングが発生した際の具体的な対応方法を解説します。
エラーメッセージを確認する
まず最初に行うべきことはISPから返されるエラーメッセージを確認することです。スロットリングが発生した場合、メール送信者には受信拒否や制限に関するエラーコードが返されます。このエラーメッセージを精査することで、どの程度の制限がかけられているのか、また制限の理由が何かを把握できます。
エラーメッセージには具体的な制限内容や再送のタイミングに関するヒントが含まれていることが多いため、見落とさないよう注意してください。これにより、的確な次のアクションを決定できます。
送信スケジュールを調整する
スロットリングの解除を早めるためには送信スケジュールの見直しが有効です。一時的にメールの送信頻度を下げたり送信量を調整することで、ISPの負荷を軽減し制限が緩和される可能性があります。
例えば、送信リストを分割して小分けに送信する、送信間隔を長めに設定するなどの工夫を行うことで、スロットリングのリスクを軽減できます。また、次回以降のメール配信計画にも反映させることで同様の問題を予防することができます。
スロットリングを未然に防ぐ「IPウォームアップ」の進め方
スロットリングを回避しつつ大量配信を成功させるためには受信側サーバーとの信頼関係を時間をかけて築く作業が必要です。この信頼構築プロセスを「IPウォームアップ」と呼びます。新しいIPアドレスやドメインはいわば「見知らぬ送信者」であり受信側は警戒して一度に多くのメールを受け取ろうとしません。実績を作ることで徐々に警戒を解き送信可能数を増やしていく地道な運用が不可欠です。
送信ボリュームを段階的に増やすスケジュール作成のコツ
IPウォームアップ成功の鍵は焦らず計画的に送信数を増やすことです。初日から数万通を送るようなことはせず最初は数十通から数百通程度に抑えエラーが発生しないことを確認しながら日ごとに配信数を増やしていくスケジュールを組みます。具体的には以下のようなステップを意識して計画を立てるとスムーズです。
- 初日は社内メンバーや反応率の高い優良顧客のみに限定して少量を送信する
- 2日目以降はエラー発生率や開封率を監視しながら送信数を徐々に引き上げる
- 突然の大量配信はスパム判定の原因になるため送信数が前日の2倍を超えないよう制御する
新規IPアドレスや独自ドメイン利用時の注意点
新しく取得したばかりのIPアドレスやドメインは運用実績がゼロであるため最もスロットリングを受けやすい状態にあります。たとえ配信システム自体が高性能であってもIPが変われば受信側からの評価はリセットされると考えてください。
特に運用開始直後はISP側のフィルタリングも厳しく設定されていることが多いためバウンスメール(不達エラー)の管理を徹底し無効なアドレスへの送信を繰り返さないよう細心の注意を払って運用を開始する必要があります。
IPウォームアップの実践ガイド(スケジュール・技術要件・異常時対応まで)
ここでは、IPウォームアップを安全に進めるために、具体的なスケジュール案、成功のための技術的チェックポイント、そしてトラブル発生時の対処方法を整理して解説します。
送信ボリュームの現実的な増やし方
IPウォームアップは、一般的に2週間〜4週間程度をかけて段階的に行います。受信側(GmailやOutlookなど)のISPに対して、「この送信元は継続的かつ健全に配信している」という実績を積み上げていくことが目的です。以下はスケジュール例(1日1回配信・最終目標:1日5万通)です。
| 期間 | 送信通数(目安) | 配信対象 |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 50〜100通 | 社内テスト、最も反応の良いユーザー |
| 3〜5日目 | 200〜500通 | 過去1ヶ月以内に開封履歴のあるユーザー |
| 6〜10日目 | 1,000〜5,000通 | 過去3ヶ月以内に開封履歴のあるユーザー |
| 11〜15日目 | 10,000通〜 | 徐々に対象を拡大しつつ指標を監視 |
| 16日目以降 | 制限緩和 | 通常運用へ移行 |
この数値はあくまで目安であり、実際にはISPごとに異なる評価基準が存在します。特に Gmail、Yahoo!、Outlook(Microsoft)は独自のアルゴリズムを持っているため、プロバイダー別に送信量を制御できる(スロットリング設定が可能な)配信システムを利用できると理想的です。
送信数よりも重要な「リストの質」
IPウォームアップでは、「どれだけ送ったか」以上に、どう反応されたかが重視されます。受信側は、開封・クリック・返信といったポジティブな行動を、送信者の信頼性を判断する材料として見ています。ここで特に意識したいポイントは次のとおりです。
- エンゲージメントの高いユーザーから順に配信する
- 長期間反応のないアドレスは事前に除外する
- 存在しないアドレス(ハードバウンス)を出さない
ウォームアップ期間中は、過去にメールをよく開封しているユーザーを優先的に使い、意図的に高い開封率を作ることが重要です。逆に、無効なアドレスへの送信が発生すると、それだけでIP評価を大きく落とす原因になります。
配信前に必ず整えておく技術的設定
IPウォームアップを始める前に、送信元の「身元証明」が正しく整っているかを確認する必要があります。これが不十分な状態では、少量配信であっても不審な送信者として扱われがちです。最低限、以下の設定は必ず確認してください。
- SPF / DKIM / DMARC:送信ドメインの正当性を証明する基本設定
- 逆引きDNS(PTRレコード):IPアドレスとドメインの対応付け
- List-Unsubscribeヘッダー:ユーザーが簡単に配信停止できる仕組み
これらは「技術的な作業」に見えますが、実際には到達率を左右する重要な信用情報です。
スロットリング発生時の正しい対応
配信中に「421 Service temporarily unavailable」などのエラーが増え始めた場合、それはISPからの流量制限(スロットリング)のサインである可能性が高いです。このときの対応を誤ると、状況を悪化させてしまいます。
- まずは配信を一時停止、もしくは大きく減速する
- エラーメッセージを確認し、特定のISPに偏っていないかを確認する
- 翌日以降は、問題が出た日の送信通数以下に抑えて様子を見る
エラーが出ている状態で無理に送り続けると、一時的な制限が恒久的なブロックへと格上げされるリスクがあります。「止める勇気」も、IPウォームアップでは重要な判断です。IPウォームアップに関しては以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
関連記事:IPウォームアップとは?メール到達率を最大化するための戦略と実践方法
スロットリングを防止する対策
スロットリングを防ぐためには、いくつかの有効な対策があります。ここでは、具体的な方法を紹介します。IPレピュテーションを高めたり、メールリレーサービスを活用したりすることでスロットリングを未然に防ぐことが可能です。
IPレピュテーションを高める
IPレピュテーションを高めることはスロットリングを防止する基本的な手段です。そのためには、IPウォームアップが必要になります。IPウォームアップとは、新しいIPアドレスの信頼性を高め受信拒否や制限を回避するためのプロセスです。
IPウォームアップが必要なケースの例は以下の通り。
- 短時間に大量のメールを送信する場合
- 取得したばかりのIPアドレスを使用する場合
- クラウドサービスで専用IPを利用する場合
- 長期間使用していなかったIPアドレスを再利用する場合
IPウォームアップを適切に行うことで、メールの到達率が向上し、スロットリングのリスクを抑えられます。詳しくは、こちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください。
関連記事:IPウォームアップとは?メール到達率を最大化するための戦略と実践方法
一度に送るメールの量を減らす
スロットリングを防ぐには一度に送るメールの量を減らすのも有効です。大量のメールを送信する際は少しずつ分けて送ることで、サーバーの負荷を軽減できます。ただし、この方法には時間や手間がかかるデメリットがあるため送信計画を事前にしっかり立てることが重要です。
- 一斉送信を段階的に行う
- 送信スケジュールを自動化ツールで管理する
これらを活用することで、効率的にメールを送信しつつ、スロットリングのリスクを回避できます。
メールリストの管理を徹底する
送信対象のメールリストを適切に管理することで、スロットリングのリスクを軽減できます。具体的には以下の方法が有効です。
・不要なアドレスを除外する
・セグメント化を行う
長期間開封されていないメールアドレスや無効なアドレスをリストから削除することで、送信量を削減しつつスパム判定のリスクも低下します。また、メールリストを購読者の興味や行動に基づいてセグメント化することで一斉送信を避け、よりターゲットを絞ったメール配信が可能になります。
メールリレーサービスを活用する
メールリレーサービスを利用するのも効果的な対策です。このサービスは送信元と送信先の間に中継サーバーを設け、安定的にメールを送信する仕組みを提供します。
- ISPからの信頼性が高く、メールの到達率が向上する
- 不達時の原因が特定しやすい
- 適切な送信プロセス管理により、送信成功率が向上する
優れたレピュテーションを持つサービスを選ぶことでスロットリングのリスクを軽減しつつ、メールマーケティングの効果を高めることができます。
SMTP・API連携メール配信システム「ブラストエンジン(blastengine)」
blastengineは簡単にメールの大規模高速配信が可能なSMTPリレーサーバーを提供していますが、同時にメールサーバーを必要としない、APIでのメール送信の仕組みも提供しています。
サーバーの運用やメンテナンスはblastengineで行うため、常に高いIPレピュテーションを保って安全にメールを送ることができます。
また、導入社数27,000社、15年連続顧客導入数No.1の姉妹製品blastmailの技術力で構築した配信基盤で、各メールプロバイダ、携帯キャリアドメインへの最適化と大規模ネットワークを経由してメール配信を行い、日本国内への圧倒的な到達率を実現しています。それでいて、月額3,000円から利用ができるためコストパフォーマンスも高く、メールだけでなく日本語での電話サポートにも対応しています。
以下のような課題がある場合は、ブラストエンジンの利用を検討してみることをおすすめします。
- 自社のIPアドレスやドメインがブラックリストに登録されていてメールが届かない
- 国内キャリアにメールが届かず、対応方法がわからない
- 自社でメールサーバーを管理・運用したくない
ブラストエンジン(blastengine)はメールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能ですので、まずは気軽にお試しください。
まとめ
スロットリングは大量メール送信を行う際に発生するリスクの一つであり、メール配信の成功に大きな影響を与える可能性があります。そのため、スロットリングの仕組みを正しく理解し原因に応じた適切な対策を講じることが重要です。
今回の記事ではスロットリングの発生原因からその防止策までを詳しく解説しました。具体的にはIPレピュテーションを高める方法やメールリレーサービスの活用、一度に送信するメール量の調整など、実用的な対策を紹介しました。これらの対策を組み合わせることでスロットリングのリスクを効果的に軽減し、メール配信の成功率を高めることができます。
FAQ
- Q:スロットリングを防ぐための「IPウォームアップ」とは具体的にどのような作業ですか?
- A:新しいIPアドレスの信頼性を高めるために、2週間〜4週間かけて送信数を段階的に増やしていくプロセスです。初日は数十通〜数百通から開始し、エラー率や開封率を確認しながら徐々に通数を増やすことで、ISPからの警戒を解きスロットリングを回避します。
- Q:配信中にスロットリングのエラー(421など)が発生したらどう対応すべきですか?
- A:直ちに配信を一時停止するか、送信速度を大きく落とす必要があります。エラーが出ている状態で無理に送信を続けると、一時的な制限が恒久的なブロック(受信拒否)へと悪化するリスクがあるため、翌日は送信数を減らして様子を見るなどの慎重な運用が不可欠です。
- Q:メール配信の到達率を上げるために必要な技術的な設定は何ですか?
- A:送信ドメインの正当性を証明する「SPF・DKIM・DMARC」の設定や、IPアドレスとドメインを紐付ける「逆引きDNS(PTRレコード)」の設定が必須です。これらは送信元の身元証明として機能するため、設定に不備があると少量の配信であっても不審な送信者とみなされ、スロットリングの原因となります。
- Q:自社で対策するのが難しい場合、どのような解決策がありますか?
- A:「blastengine」のような、IPレピュテーション管理や大規模配信に特化したメールリレーサービスを利用するのが効果的です。サーバーの運用監視やキャリアごとの最適化をサービス側に任せることができるため、専門知識がなくても安全かつ高速に大量のメールを届けることが可能になります。



