ビジネス関係にある相手とのコミュニケーションでは、お互いの距離感や関係性を踏まえた言葉選びが求められます。
そのためには敬語や謙譲語を正しく理解する必要がありますが、ビジネス用語の中には相手を選ばず使えるフレーズがあります。
「お忙しいところ恐れ入りますが」はその中の一つです。
メールなどのコミュニケーションだけでなく、口語のやりとりでも頻繁に使われているフレーズなので、意味や正しい使い方を覚えておいて損はないでしょう。
この記事では「お忙しいところ恐れ入りますが」について、以下の点を解説しています。
- 意味
- 使用が想定されるケース
- 例文
- 類似表現
- 英語での表現
相手を気遣う意味を持つ「お忙しいところ恐れ入りますが」を正しく使いこなし、スマートに心配りを表現しましょう。
目次
「お忙しいところ恐れ入りますが」の意味
「お忙しいところ恐れ入りますが」は「忙しい中このようなお願いをして申し訳ありませんが」という意味で使われています。
「忙しい」と「恐れ入る」を丁寧表現に直した言葉なので、直後の文章にも敬語か謙譲語を使いましょう。
上記のように相手を思いやる気持ちを表現している「お忙しいところ恐れ入りますが」は、相手を選ばずに使うことができるため、クッション言葉として使用されています。
そのまま伝えると高圧的な印象を与え、相手を不快にさせる可能性がある文章でもクッション言葉を使うことで、柔らかいニュアンスで表現できるでしょう。
- お忙しいところ恐れ入りますが
- ご足労をおかけいたしますが
- お手数をおかけし恐縮ですが
- 申し上げにくいのですが
これらがビジネスでよく見られるクッション言葉で、ビジネス枕詞とも呼ばれます。
「お忙しいところ恐れ入りますが」をはじめとするビジネス枕詞を使い、伝えにくい内容でも失礼がないように表現できるようにしましょう。
「お忙しいところ恐れ入りますが」を使うシーン
「お忙しいところ恐れ入りますが」を使うシーンについて解説します。
業務を依頼する時
「お忙しいところ恐れ入りますが」が最も使われるのは、相手に業務を依頼するタイミングです。
特に取引先のような社外の方に対して業務を依頼する際は、依頼する内容を伝える前に「お忙しいところ恐れ入りますが」を使い、相手への配慮を表現しましょう。
また、営業職などではお客様の時間を使うことに対する気遣いとして使うことがあります。
- お忙しいところ恐れ入りますが、数分お時間いただいてもよろしいでしょうか
「お時間いただいてもよろしいでしょうか」だけで依頼するのではなく「お忙しいところ恐れ入りますが」を使うことで、印象が大きく変わります。
相手への感謝を示す時
「お忙しいところ恐れ入りますが」は、相手への気遣いだけでなく感謝を伝えるニュアンスでも使われます。
- お忙しいところお時間をいただき恐れ入ります
- お忙しいところお立ち寄りいただき恐れ入ります
「恐れ入ります」の部分を「ありがとうございます」に差し替えても問題はありませんが、上記のような文章では相手に依頼する申し訳なさではなく、感謝を表現したニュアンスになります。
「お忙しいところ恐れ入りますが」を使った例文
「お忙しいところ恐れ入りますが」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
業務を依頼する時の例文
相手に業務を依頼するケースの中でも、以下の3つを想定して「お忙しいところ恐れ入りますが」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
- 業務の追加を依頼する
- 資料の確認を依頼する
- メールや電話の折り返しを依頼する
相手に業務の追加を依頼する際は、以下のようなビジネスメールを作りましょう。
件名
〇〇の件
本文
株式会社〇〇 企画部 佐藤様
お世話になっております。
株式会社--の高橋です。
先日ミーティングを開催しました〇〇の件ですが、ミーティング内でお伝えした内容に加えて、以下の点を依頼したく存じます。
・〜
・〜
・〜
お忙しいところ恐れ入りますが、是非ともよろしくお願い申し上げます。
(署名)
相手に業務を依頼する際に使われる文章です。
「依頼したく存じます」の後が「よろしくお願いします」のみでは、メールを受け取った相手としては高圧的な印象を受けるでしょう。
「お忙しいところ恐れ入りますが」や「是非とも」のようなクッション言葉を使い、相手への敬意も感じさせる文面にしましょう。
件名
〇〇のに関する資料
本文
営業部 佐藤部長
お疲れ様です。営業部の高橋です。
先日お話をいただきました〇〇に関する資料をまとめましたので、添付いたします。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願い致します。
(署名)
社内の上司への送信をイメージした文章です。
取引先やお客様へ送信するメールと比較すると簡素な文章に感じるかもしれませんが、丁寧な表現を心がけるあまり、内容が遠回しになってしまうと本末転倒です。
「お忙しいところ恐れ入りますが」を上手に使い、簡潔な文章の中でもビジネスをする上での気遣いを表現しましょう。
件名
先ほどのお電話の件
本文
株式会社〇〇 企画部 佐藤様
お世話になっております。
株式会社--の高橋です。
先ほど〇〇の件でお電話差し上げましたが、外出されているとの事でしたので本メールにて概要をお伝えいたします。
・〜
・〜
お忙しいところ恐れ入りますが、内容をご確認いただき本日中に電話かメールにてお返事いただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
(署名)
メールや電話の催促をする場合は上記のような文面で「お忙しいところ恐れ入りますが」を使います。
ここまでにご紹介してきた例文を見ていただけるとわかるように、依頼の意味で「お忙しいところ恐れ入りますが」を使う場合は「よろしくお願いします」とセットになります。
「ご多忙のところ恐縮ですが〜」のように、使う相手によってフォーマル感を調整して文章を作成しましょう。
相手への感謝を示す時の例文
「お忙しいところ恐れ入ります。」と言い切ったフレーズにすることで、自分が依頼した内容を遂行していただいた際のお礼の意味を込めることができます。
また、自身が依頼していない業務だとしても相手から厚意を受け取った場合は「お忙しいところ恐れ入ります」を使い、感謝の気持ちを伝えるケースもあります。
- お忙しい中、資料まで作ってきていただいて恐れ入ります。
- 本日はお忙しいところ案内していただき恐縮です。
日本語は「すみません」という謝罪の意味を持つ言葉を感謝を伝えるフレーズとして使う文化があります。
「恐れ入ります」も「申し訳ありません」という意味が本来のニュアンスですが、上記のようなケースでは相手への感謝を表現するフレーズとして使われています。
「お忙しいところ恐れ入りますが」と自分が言われたら
自身が取引先などに「お忙しいところ恐れ入りますが」のフレーズを使われた際には、以下のような文章で相手の気遣いに返答しましょう。
- お気遣いいただきありがとうございます。
- こちらこそ、ご連絡いただき感謝申し上げます。
「お忙しいところ恐れ入りますが」というフレーズが使われているメールに対して、自分も同じ言葉を使って返信をしないように注意しましょう。
ビジネス用語は形式的に使われている側面もありますが、同じメールの中で重複した表現をしたり、フレーズをおうむ返ししたりすると嫌味に聞こえてしまうことがあります。
反射的に使ってしまうようなフレーズでも、あくまで相手との会話を成立させるために使うように心がけましょう。
「お忙しいところ恐れ入りますが」の言い換え表現
先述したように「お忙しいところ恐れ入りますが」は、相手との関係性などを考慮して若干フレーズを変えて使用することができます。
- ご多忙中、恐れ入りますが
- ご多用の中、恐れ入りますが
- お忙しい中、申し訳ありませんが
これらの表現は比較的ライトな印象の類義語になるので、長い付き合いがある取引先や、お互いのことをよくわかっている相手に使うことができます。
- ご多忙の折、大変恐縮ではございますが
- ご多忙の中とは存じますが、
上記のような表現は「お忙しいところ恐れ入りますが」よりもかしこまった印象の文章を作る際に使います。
「お忙しい」は「ご多忙」や「ご多用」に「恐れ入ります」は「恐縮です」にすることで、より丁寧で敬意のあるニュアンスになるでしょう。
「お忙しいところ恐れ入りますが」を英語で表現すると
「お忙しいところ恐れ入りますが」を英語で表現する場合は、以下のようになります。
- I Know you busy
- I understand that you are busy
どちらも「あなたが忙しいことは知っていますが」という意味になります。
下の例文の方が文語的なニュアンスで、メールで社外の方とコミュニケーションを取るようなケースで使われます。
ただし、英語圏ではメールのようなタイミングの主導権が相手にあるような媒体のコミュニケーションの場合、上記のような前置きをしないことが一般的です。
口語でもコミュニケーションでは上記のような前置きをすることはありますが、メールやチャットでは日本の文化以上にシンプルな文章でも問題ありません。
まとめ
「お忙しいところ恐れ入りますが」は取引先やお客様だけでなく、上司のような社内でのコミュニケーションでも使われるクッション言葉です。
主に相手に依頼をする際に「忙しいところ申し訳ありません」といったニュアンスで使われる言葉ですが、相手に感謝を伝えるケースで使われることもあります。
形式的に使われることがある言葉ではありますが、ビジネス関係にある相手に敬意を示すフレーズとしてはとても大事な役割があります。
「〜をしてください」とストレートに依頼をするのではなく、クッション言葉である「お忙しいところ恐れ入りますが」を枕詞にすることで印象を和らげることができます。
ビジネス用語を使ったコミュニケーションでは「お忙しいところ恐れ入りますが」以外のフレーズも、相手との距離感を考慮しながら使用しなければなりません。
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