メールの送受信を行う「SMTPサーバ」は、送信したメールを相手のメールボックスに届ける上で重要な役割を持っています。
プライベートの使用ではメールサーバの役割や構成について考える必要はありませんが、ビジネスで使用する場合はそうはいきません。
相手のメールボックスにメールを届けることができなくなると、お客様や取引先とのコミュニケーションに影響が出ることも想定されるでしょう。
そのため、メールの大量配信を行う場合や、お客様に向けて即時性の高いメールを配信している企業ではSMTPサーバの構築を自社で行っている場合があります。
この記事では、SMTPサーバに関する基礎的な知識と、具体的な構築方法について解説しています。
SMTPサーバを構築しようとお考えの方は、ぜひご覧ください。
目次
SMTPサーバとは
冒頭でもご紹介したように、SMTPサーバはメールの送受信を行うサーバです。
SMTPサーバに関する解説の中には「SMTPサーバは送信に使われる」というニュアンスが散見されますが、受信者側のメールサーバでもSMTPサーバが使われています。
また、メールが受信者のSMTPサーバに転送されるまでの過程で発生したミスを知らせるのも送信側のSMTPサーバの役割です。
SMTPサーバがメールを送受信する際は「SMTPポート」と呼ばれる通信ポートが使用されています。
SMTPポートを使用することで、通信を行うメールサーバ同士のアプリケーションやシステムを識別できるようになります。
「ポート」は通信ポート以外にもたくさんの種類がありますが、ポートの役割ごとに番号が割り振られています。
通信ポートの場合は「25」や「587」などの番号が割り振られています。
- 【25】メールの送信
- 【587】25番ポート以外でのメールの送信
SMTPサーバは上記のような通信ポートを使い、メールの送受信を行っています。
メールの送受信の仕組み
メールの送受信にはSMTPサーバをはじめ、いくつかのサーバが関わっています。
メールの送受信の仕組みと、各工程に関わるサーバは以下のようになります。
- メーラー(ウェブメール)から送信したメールが送信側のSMTPサーバに届く
- DNSサーバで受信先のIPアドレスを照会する
- 受信先のSMTPサーバにメールを転送する
- 受信先のSMTPサーバからPOPサーバかIMAPサーバがメールをダウンロードする
- POPサーバ(IMAPサーバ)から受信先のメーラーに転送する
それぞれのサーバについては次項で詳しく解説します。
SMTPサーバ以外のメールサーバ
メールの送受信に関わるサーバの具体的な役割を解説します。
POPサーバ
POPサーバは、受信側のSMTPサーバが受け取りメールボックスに格納したメールを、端末で使用しているメーラー(ウェブメール)にダウンロードするサーバです。
「メールボックス」というと、自身が使っているメーラーの受信ボックスをイメージする方もいるかもしれませんが、ここでのメールボックスはメールアドレスごとのメールの保存領域を指しています。
SMTPサーバによって受信されたメールは、受信ボックスに直接届くのではなく一時的にメールを保存しておく保管所のようなところに運ばれます。
これが「メールボックス」であり、ここから端末で使用しているメーラーにダウンロードをするのがPOPサーバです。
SMTPサーバは送信側だけでなく受信側にも使われるサーバですが、POPサーバは受信側でのみ使われているサーバです。
IMAPサーバ
IMAPサーバも受信側のメールサーバでのみ使われるメールサーバです。
POPサーバと同様に、メールボックスからメーラーにメールをダウンロードする役割を持つサーバですが、全く同じようにダウンロードをするわけではありません。
POPサーバがメールボックスからメールをダウンロードする際は、ボックス内にあるメールをそのままメーラーに移します。
そのため、ダウンロードされたメールはメールボックス内からは完全に無くなってしまいますが、メールをダウンロードしたメーラーがオフライン状態でも閲覧可能です。
一方のIMAPサーバは、メールボックスに保管されているメールを受信ボックスに移動することなく閲覧できるようにします。
オンラインでしか使用することはできませんが、メールボックスにアクセスされできれば様々な端末からメールを閲覧できます。
IMAPサーバの仕組みを活用しているのが「Gmail」などのウェブメールです。
DNSサーバ
DNSサーバはメールの送信時に使われるサーバで、ドメイン名をIPアドレスに変換し受信側のSMTPサーバを割り出す役割を担います。
ドメイン名とは、メールアドレスにおける「@」以降の部分を指す言葉です。
例えば「dns.server@mail.com」というメールアドレスであれば「@mail.com」がドメイン名に当たります。
一方のIPアドレスは、ウェブ上の住所に該当する数字の羅列をさします。
2024年現在、IPアドレスは「IPv4アドレス」と「IPv6アドレス」が使われており、前者の場合は32ビットを8つに区切った数字(例:134.167.10.1)が用いられています。
DNSサーバは「@mail.com」という人間にとって認識しやすい文字列を、134.167.10.1のようなウェブを構築するシステムが認識しやすい文字列に変換しています。
厳密にはDNSサーバはメールサーバではありませんが、送信したメールを宛先に正しく届けるためには不可欠なサーバです。
SMTPサーバを構築する方法
ここからは実際にSMTPサーバを構築する方法について解説します。
SMTPサーバの構築方法はいくつかありますが、今回はオープンソースとして提供されているMTA(メール転送エージェント)を使った方法を取り上げます。
MTAを決める
オープンソースとして公開されているMTAには、以下のようなものがあります。
- Postfix
- Sendmail
MTAは「Mail Transfar Agent」の頭文字をとった言葉で、メールを転送するシステムという意味を持っています。
冒頭で解説したように、SMTPサーバには送信側・受信側の両方で役割がありますが、MTAは送信側で働くプロトコルを使ったシステムです。
受信側ではMDA(Mail Delivery Agent)が使われており、MTAから転送されたメールをメールボックスに格納します。
上記の「Postfix」や「Sendmail」はMTAなので、SMTPサーバの中でも送信に特化したシステムです。
送信元のグローバルIPとSMTPホスト名の一致
DNSサーバの項で解説したように、ウェブサイトやメールサーバには固有のIPアドレスが振り分けられています。
メールの送受信においては、IPアドレスがあることで受信先や送信元を特定し、正確なメールのやりとりが可能になります。
SMTPサーバの構築時は「グローバルIP」と「SMTPホスト名」が一致することで、送信元の証明を行います。
つまり、ウェブ上に公開されているIPアドレスと、MTAに自身で定義するホスト名(IPアドレス)が一致している状態にする作業が必要になります。
構築するメールサーバの送信要件を明確にする
SMTPサーバをはじめとするメールサーバの構築過程には、構築後にどのような使い方を想定しているかが大きく影響します。
通信ポートに接続するだけで良いのか、大量配信をしたいのか、構築したSMTPサーバを使ってどのようなメール配信をするのか明確にしましょう。
特にメールマーケティングのような「正確かつ迅速に大量配信をしたい」場合は、SMTPサーバのスペックやハードウェア・ソフトウェアの容量を検討しなければなりません。
紹介したオープンソースのMTAを使用することで、一からSMTPサーバを構築する手間が省けますが、スペックや容量には制限があるため注意が必要です。
セキュリティ要件を明確にする
メールの送受信には多くのセキュリティ要件が関わっています。
近年は、Gmailが「送信者ガイドライン」の改訂に乗り出したこともあり、メールの送受信を取り巻くセキュリティには強い関心が寄せられています。
関連記事:【解決策】2024年2月よりGmailガイドラインが変更!1日5000件以上の配信は対応必須!
特に機密事項を扱うビジネスで使用するメールサーバは、万が一の事態に備えたセキュリティ環境の整備が求められます。
SMTPサーバの構築時に求められるセキュリティ要件には以下のようなものがあります。
- SSL/TLS
- SMTP認証(SPF・DKIM署名)
上記の2点は、先述の「送信者ガイドライン」において送信者に求められるセキュリティとして明文化されています。
構築したSMTPサーバのテストとデバッグ
SMTPサーバに限らず、構築したシステムは運用前にテストとデバッグが必要です。
構築したSMTPサーバとその他のシステムが問題なく動作するか確認し、エラーが返ってきた場合はデバックを行いましょう。
SMTPサーバの構築時に発生するエラーには以下のようなものがあります。
- 【016-781】SMTPサーバに接続できない状態
- 【451】処理中のサーバエラー
- 【500〜504】コマンドエラー
- 【553】サーバにメールアドレスが送信認証されていない
エラーが発生した場合は、エラーコードから原因を調査し対応しましょう。
SMTPサーバを構築する際のポイント
SMTPサーバを構築する際に注意すべきポイントを解説します。
自社のニーズを調査する
先述の通り、SMTPサーバは構築することではなく自社のニーズに合わせて運用することが目的です。
そのため、どのような目的でメール配信を行うのかを明確にしましょう。
ランニングコストを計算する
サーバの維持・管理にはランニングコストが発生します。
メールサーバを自社で内製した場合、レピュテーションスコアのチェックやトラブルへの対応といった人的コストと、サーバコストやセキュリティ対策のような金銭的コストが発生します。
人的コストとして発生する要件は外注することもできますが、その場合は金銭的なコストがさらに膨らむことになります。
上記のようなランニングコストを、社内リソースでどこまでカバーできるのかを計算した上でSMTPサーバの構築に着手しましょう。
SMTPサーバを構築するメリット
ここからはSMTPサーバを自社で構築した場合のメリットを解説します。
自社のニーズに合わせてカスタマイズできる
自社のメール配信状況に合わせて細かなチューニングが可能です。
ただし、オープンソースのMTAを活用しSMTPサーバを構築する場合は、スペックや容量に制限があることを忘れてはいけません。
完璧に自社のニーズにマッチさせるには、他社が提供するMTAではなく一からSMTPサーバ(MTAとMDA)を構築する必要があります。
メールの到達率をチェックできる
自社で構築したSMTPサーバには、メールの配信に関わるデータが蓄積されます。
このようなデータはメールマーケティングをする上で重要な役割を果たします。
メールマーケティングでは、より高い集客効果を出すためにコンテンツを絶えず更新しなければなりません。
SMTPサーバを内製することで、コンテンツを改善する際に注目する指標の1つとして活用される「迷惑メール率」を監視することができます。
SMTPサーバを構築するデメリット
SMTPサーバを構築する際に発生するデメリットを解説します。
コストがかかる
ランニングコストについて解説している項でも触れていますが、SMTPサーバの構築と運用には、人的・金銭的なコストが発生します。
特に大量配信を可能にするSMTPサーバを対象とする場合、発生するコストが自社のリソースを大きく上回ることもあります。
トラブル対応が難しいケースがある
SMTPサーバをはじめとするメールサーバは構築したものを永続的に使用できるわけではありません。
先述の通り、メールの到達率低下を招くIPレピュテーションの管理や、セキュリティのアップデートを絶えず行う必要があります。
また、トラブルが発生した場合はメール配信業務が遅れてしまい、お客様や取引先とのトラブルに発展するケースもあります。
そのため、SMTPサーバのトラブルを迅速に解決する人材を社内で確保しなければなりません。
トラブルシューティングをサービスとしている企業もありますが、構築から携わっている方でも無い限り、問題の解決までには一定の時間が必要になるかもしれません。
まとめ
SMTPサーバは、メールの送受信に関わるメールサーバです。
SMTPサーバを自社で構築することで、配信状況に合わせたチューニングができるでしょう。
しかし、SMTPサーバの構築や運用には人的・金銭的なコストが発生します。
場合によっては自社のリソースを上回る可能性もあるため、大量配信を可能にするSMTPサーバを構築したいが現実的ではない、というケースもあるでしょう。
それでもメールの大量配信や迷惑メール率を下げた配信がしたい場合は、大量配信用に構築されたSMTPサーバの連携を提供しているサービスの活用がおすすめです。
SMTPサーバを提供しているサービスはいくつかありますが、初めてSMTPサーバの連携をする企業には「ブラストエンジン」がおすすめです。
約24,000社に導入され官公庁でも活用されている「ブラストメール」の配信基盤を使いSMTPサーバを構築しているブラストエンジンは、国内であれば99%の到達率を誇ります。
月額3,000円から利用できるブラストエンジンですが、無料トライアルに申し込むことでコストをかけることなくSMTPサーバを自社のメールシステムに連携できます。
無料トライアルから自動で有料プランに移行することなく利用できる上に、電話やメールでブラストエンジンのスタッフに自社の状況をヒアリングしてもらうことも可能です。
SMTPサーバの内製を検討している方は、構築に取り掛かる前に試してみてはいかがでしょう。