リモートワークの推進により近年、急速に普及したのが「ビジネスチャット」です。メールや電話よりも気軽にやり取りできるため、「社内の会話はほとんどビジネスチャット上で行っている」という企業も多いでしょう。
ビジネスチャットをこれから導入する企業にとって問題なのが、「一体どのサービスを選べば良いのか?」という点です。ビジネスチャットには40以上ものサービスが存在し、特徴も費用感もそれぞれ異なるため、サービスの比較には一苦労かかります。
本記事では、ビジネスチャットのおすすめ10社を選定し、中でも「まずはこの中から選ぶべき」という定番3社の比較・紹介をしていきます。ぜひ参考にしてください。
目次
ビジネスチャットとは?
ビジネスチャットとは、簡易的なタスク管理やグループウェアとの連携といった、ビジネス向けの機能を備えたチャットサービスのことです。グループ作成や連絡先管理など、一般的なチャットサービスに含まれる機能も、もちろん含まれます。
テキストベースのコミュニケーションツールとしてメールが挙げられますが、ビジネスチャットはメールよりも口頭で話す感覚に近い点が特徴的です。そのためやりとりの瞬発力が上がる、表現できる感情の幅が広がる、といったメリットもあります。
ビジネスチャットの比較ポイント
ビジネスチャットの比較ポイントは、主に下記の4点です。
- 社外との連携の取りやすさ
- 社内SNSとしても利用可能か
- 外部ツールとの連携機能
- 費用
社外との連携の取りやすさ
ビジネスチャットはサービスによって社外対応の得意・不得意が分かれます。場合によっては社外とのやり取りが前提となっていないこともあるため、ビジネスチャットで社外との連携を兼ねたい場合は十分注意しましょう。
なお、ユーザー数が群を抜いて多いビジネスチャットの定番3社(詳細は後述)は、いずれも社外とのやり取りが可能な仕組みとなっています。
定番3社の中からビジネスチャットを選んでおけば、自社・相手ともにユーザー登録や使い方の習熟といった手間を省きやすいため、おすすめです。
社内SNSとしても利用可能か
コミュニケーションの質の向上や、社内ヘルプデスクの負担軽減など、社内に関する課題解決をビジネスチャットに対して期待する場合、社内SNSとしても利用可能かどうかを比較ポイントとして持っておきましょう。
例えばFacebookが提供するビジネスチャット「Workplace」は、FacebookのようなUIになっており、まるでSNSのような感覚でやり取りできます。
外部ツールとの連携機能
ビジネスチャットの中にはグループウェアやCRMなど、様々な外部ツールと連携が可能なサービスが存在します。特定グループ内の発言をタスク化したり、在庫状況を通知するチャットボットを作成したりなど、業務の効率化をより高いレベルで実現可能です。
サービス側ですでに外部ツールと接続済みの場合、難しい設定は不要ですが、APIが公開されているだけの場合は、社内に技術者がいないと連携するのに手間がかかります。
外部ツールとの連携を重視する場合は、すでに外部ツールと接続済みなのか、APIが公開されているだけなのか、といった点を考慮しましょう。
費用
ビジネスチャットの料金体系は、ユーザー数に応じて月ごと、もしくは年ごとに課金される仕組みであることがほとんどです。例えばChatworkの月額500円のプランと、Slackの850円のプランを比較すると下記のようになります。
Chatwork | Slack | |
月額 | 500円 | 850円 |
年間費用(ユーザー数は100人) | 600,000円 | 1,020,000円 |
このように、価格表上では数百円しか差が無くとも、実際にかかる金額としては大きく差が出る場合があるため、費用感には十分気を配りましょう。
なお、ビジネスチャットの定番「Microsoft Teams」は、クラウドサービス「Microsoft 365」に含まれる形で提供されています。そのため、すでに「Microsoft 365」を導入済みであれば追加費用ゼロ円でビジネスチャットを導入可能です。
ビジネスチャットの定番3社を比較
ビジネスチャットといえば、以下の3社が定番どころとして挙げられます。
- Microsoft Teams(チームス)
- Slack
- Chatwork
いずれのサービスもビジネスチャットの基本機能が一通り揃っており、ユーザー数が圧倒的に多いため、社外との連携も円滑に行えます。ビジネスチャットを初めて導入するなら、定番3社の中から検討するのがおすすめです。
それでは、ビジネスチャット定番3社の特徴をそれぞれ紹介していきます。
Microsoft Teams(チームス)
(引用:Microsoft Teams公式サイト)
ベンダー | Microsoft |
公式サイト | Microsoft Teams |
料金(1ユーザーあたりの月額) | Microsoft Teams:無料
Microsoft 365 Business Basic:540円 Microsoft 365 Business Standard:1,360円 ※ 決済は年ごと |
無料体験 | 1か月間(Microsoft 365) |
特徴 | ワードやエクセルが利用できる定番のオフィススイート「Microsoft 365」に同梱されている。また、機能は制限されているものの、期間の指定がない無料版も利用可能 |
Microsoft Teams(チームス)は、Microsoft社が提供するクラウドサービス「Microsoft 365」に含まれるビジネスチャットです。自社にMicrosoft 365がすでに導入されているなら、Microsoft Teamsを追加費用ゼロ円で利用できます。
また、ビジネスチャット単体で提供される無料のプランもあります。無料プランはビデオ会議の長さが60分までに制限される、クラウドストレージ容量は10GBまでといくつか制限はありますが、有料プランと大きな機能差はありません。
Slack
(引用:Slack公式サイト)
ベンダー | Slack |
公式サイト | Slack |
料金(1ユーザーあたりの月額) | フリー:無料
プロ:850円から ビジネスプラス:1,600円から エンタープライズ:要問い合わせ |
無料体験 | 無料プランあり |
特徴 | 世界シェアNo.1のビジネスチャット。多くの外部ツールと連携できるのが強み。開発、営業、マーケティングなど部門を超えた情報共有がより容易になる |
Slackは世界シェアNo.1を誇る定番のビジネスチャットです。Google カレンダーやGoogle Driveなど、様々な外部ツールと連携できるカスタマイズ性の高さが魅力で、部門や業種を問わず、あらゆる組織のコミュニケーション・情報共有の効率を高められます。
「/(スラッシュ)」から始まるコマンドを使うことで、リマインダーやメッセージ検索といった各機能をダイレクトに利用できるのも、Slackならではのメリットです。
有料プランは月額850円からと他のビジネスチャットと比べて高価ですが、機能をフル活用できれば、Slackでしか得られないチームワークが発揮できるでしょう。
Chatwork
(引用:Chatwork公式サイト)
ベンダー | Chatwork株式会社 |
公式サイト | Chatwork |
料金(1ユーザーあたりの月額) | フリー:無料
プロ:500円から エンタープライズ:800円から |
無料体験 | 1か月間 |
特徴 | 使い方やUIが分かりやすいため、パソコンが苦手なメンバーが多くても導入しやすい。また、社外との連携も比較的容易に行える |
ビジネスチャット定番3社の中で唯一、国内ベンダーによって提供されているのがChatworkです。パソコン操作に不慣れな人でも直感的に理解できるUIと、使いやすさで一定の評価を得ています。ユーザーが多いため、社外との連携も行いやすいビジネスチャットです。
また、チャットに返信をするとき自動で「さん付け」をしてくれるため、いちいち自分で「さん」と入力する手間を省けます。細かいながら配慮を感じるポイントです。
基本的にはシンプルなビジネスチャットですが、APIが公開されているため、外部ツールと連携してより高度な使い方をすることも可能です。
その他のビジネスチャット7選
ここからは、定番3社にはない特徴を持つビジネスチャットを7社紹介します。
- Talknote
- LINE WORKS
- Google Chat
- Workplace
- elgana(エルガナ)
- Webex
- InCircle
現在使っているビジネスチャットに不満がある、より安価に導入したいといった場合は、これらの中から検討してみましょう。
Talknote
(引用:Talknote公式サイト)
ベンダー | Talknote株式会社 |
公式サイト | Talknote |
料金 | 初期費用+月額費用。詳細は要問い合わせ |
無料体験 | 14日間 |
特徴 | 社員のエンゲージメント管理が強みのビジネスチャット。チャットへのアクセス時間や投稿頻度といった利用データを元に、様々な分析が可能 |
Talknoteは、ユーザーの利用データを組織のパフォーマンスやモチベーション向上に役立てられるビジネスチャットです。具体的にはアクションリズム(アクセス時間や投稿頻度など)の解析や、オーバーワークの検知などといった機能があります。
LINE WORKS
(引用:LINE WORKS公式サイト)
ベンダー | ワークスモバイルジャパン株式会社 |
公式サイト | LINE WORKS |
料金(1ユーザーあたりの月額) | フリー:無料
ライト:300円 ベーシック:500円 プレミアム:1,000円 |
無料体験 | 無料プランあり |
特徴 | LINEの使い勝手や見た目はそのままに、タスク管理やクラウドストレージといったビジネスチャットの機能を付加したサービス |
LINE WORKSは、日本人の生活に欠かせないチャットアプリ「LINE」のビジネス版です。LINEと全く同じ見た目・使い勝手が特徴的ですが、1TBのクラウドストレージやBot機能など、ビジネス向けの機能が多く備わっています。
また、LINEならではの機能として、社外メンバーとのやり取りがLINE連携によって実現できる点も魅力です。
Google Chat
(引用:Google Chat公式サイト)
ベンダー | |
公式サイト | Google Chat |
料金(1ユーザーあたりの月額) | Business Starter:680円
Business Standard:1,360円 Business Plus:2,040円 Enterprise:要問い合わせ |
無料体験 | 14日間 |
特徴 | Google Workspaceに含まれるアプリケーションのひとつ。Google カレンダーやスプレッドシートなど、Google Workspaceにある他の機能を活用しやすいのが強み |
Google Chatは、Googleの法人向けクラウドサービス「Google Workspace」に含まれるビジネスチャットです。チャットからGmailまでメッセージを横断的に検索できる、SalesforceやJiraといった外部ツールと連携ができるなど、様々な機能が備わっています。
Workplace
(引用:Workplace公式サイト)
ベンダー | |
公式サイト | Workplace |
料金(1ユーザーあたりの月額) | アドバンス:4 USD
エンタープライズ:8 USD |
無料体験 | 30日間 |
特徴 | Facebookらしくニュースフィードを表示する機能を備えている。また、ナレッジ管理機能も充実。チャットだけでなく社内SNSや社内Wikiとしても利用可能 |
Workplaceは、ユーザー数28億人超を誇るSNS「Facebook」社が提供するビジネスチャットです。FacebookのようなUIと使い勝手が特徴的で、各投稿にコメントや「いいね!」を残せたり、ニュースフィードで社内の共有事項を時系列でチェックできたりします。
elgana(エルガナ)
(引用:elgana公式サイト)
ベンダー | NTTビジネスソリューションズ株式会社 |
公式サイト | elgana(エルガナ) |
料金(1ユーザーあたりの月額) | フリー:無料
ベース:330円 |
無料体験 | 無料プランあり |
特徴 | グループ作成やタスク管理といった基本的なビジネスチャット機能の他、スケジュール調整や既読表示のON/OFFなど、独自機能がある |
elganaはNTTビジネスソリューションズ株式会社による国産ビジネスチャットです。シンプルな見た目と使いやすさが特徴となります。既読表示のON/OFFをグループごとで設定できたり、チャット上でスケジュール調整ができたりなど、独自機能も豊富です。
Webex
(引用:Webex公式サイト)
ベンダー | シスコシステムズ合同会社 |
公式サイト | Webex |
料金(1ユーザーあたりの月額) | フリー:無料
スターター:1,700円 ビジネス:3,400円 エンタープライズ:要問い合わせ |
無料体験 | 無料プランあり |
特徴 | ビジネスチャットだけでなく、クリアな音声、安定的な接続、ホワイトボード機能などビデオ会議の品質の高さが魅力。他社ツールとの連携も容易 |
Webexはビジネスチャットやビデオ会議といった機能を備える、オンラインコラボレーションツールです。高品質なビデオ会議・通話が可能で、ビジネスチャット以外でも効率の高いコミュニケーションを実現します。
InCircle
(引用:InCircle公式サイト)
ベンダー | 株式会社DXクラウド |
公式サイト | InCircle |
料金(1ユーザーあたりの月額) | トライアル:無料
ベーシック:180円 オンプレミス:要問い合わせ |
無料体験 | 30日間 |
特徴 | 他社サービスと比べて低価格でビジネスチャットを導入可能。また、クラウドだけでなくオンプレミス運用のプランも提供されている |
InCircleは2021年6月から提供が開始された、比較的あたらしいビジネスチャットです。月額180円からと低価格で導入できます。また、ビジネスチャットとしては珍しく、オンプレミス運用(100ユーザーから、料金要問い合わせ)のプランが用意されています。
ビジネスチャットのトラブル対策には「Discord」がおすすめ
(引用:Discord公式サイト)
ビジネスチャットにありがちなのが、「ベンダー側のトラブルで一時的に使えなくなる場合がある」という問題です。
ビジネスチャットは非常に便利な分、たった数十分使えないだけでも、多少の機会損失を生んでしまいます。特にリモートワーク化によってコミュニケーションの大半がビジネスチャット上で行われるという場合ほど、損失は大きくなるでしょう。
そうしたことを防ぐバックアップツールとしておすすめしたいのが、無料で使えるチャットツール「Discord」です。
Discordではユーザーのオンライン状況チェックやアクセス権の設定、チャンネルの作成、そして高品質なビデオ会議など、ビジネス向きの機能を多く備えています。
ビジネスチャットのバックアップにLINEを利用する企業は少なくないかと思いますが、「仕事の連絡がLINEで来るのはイヤ」という声があることは否めません。こうした声に応える意味でも、やはりDiscordはおすすめです。
ビジネスチャットの比較まとめ
最後に本記事で紹介したビジネスチャット10社の料金や特徴を表にまとめておきます。
無料プラン | 費用 | 特徴 | |
Microsoft Teams(チームス) | あり | 月額540円から | 「Microsoft 365」に同梱されている。また、機能は制限されているものの、期間の指定がない無料版も利用可能 |
Slack | あり | 月額850円から | 世界シェアNo.1のビジネスチャット。多くの外部ツールと連携できるのが強み。部門を超えた情報共有が容易になる |
Chatwork | あり | 月額500円から | 使いやすさが特徴で、パソコンが苦手なメンバーが多くても導入しやすい。また、社外との連携も比較的容易に行える |
Talknote | なし。14日間の無料トライアルあり | 初期費用+月額費用。詳細は要問い合わせ | 社員のエンゲージメント管理が強みのビジネスチャット。チャットへのアクセス時間や投稿頻度といった利用データを元に、様々な分析が可能 |
LINE WORKS | あり | 月額300円から | LINEの使い勝手や見た目はそのままに、タスク管理やクラウドストレージといったビジネスチャットの機能を付加したサービス |
Google Chat | なし。14日間の無料トライアルあり | 月額680円から | Google Workspaceに含まれるアプリケーションのひとつ。Google カレンダーやスプレッドシートなど、Google Workspaceにある他の機能を活用しやすいのが強み |
Workplace | なし。30日間の無料トライアルあり | 月額4 USDから | Facebookのような使い勝手のビジネスチャット。また、ナレッジ管理機能も充実。チャットだけでなく社内SNSや社内Wikiとしても利用可能 |
elgana(エルガナ) | あり | 月額330円から | グループ作成やタスク管理といった基本的なビジネスチャット機能の他、スケジュール調整や既読表示のON/OFFなど、独自機能がある |
Webex | あり | 月額1,700円から | ビジネスチャットだけでなく、クリアな音声、安定的な接続、ホワイトボード機能などビデオ会議の品質の高さが魅力。他社ツールとの連携も容易 |
InCircle | あり | 月額180円から | 他社サービスと比べて低価格でビジネスチャットを導入可能。また、クラウドだけでなくオンプレミス運用のプランも提供されている |
ビジネスチャットは需要が上がるにつれて、独自のメリットや機能を持つサービスも増えてきています。選択肢の多さに圧倒されないためには、まず定番3社の中から検討し、条件が合わなければその他のサービスを見る、という流れで選定を進めましょう。
なお、ビジネスチャットのバックアップツールとしては、無料で使えるチャットツール「Discord」がおすすめです。Discordは一時的なコミュニケーション手段として必要十分な機能を備えており、しかもLINEと違って仕事とプライベートの切り分けが容易に実現できます。