
「追伸」とは、手紙やメールなどで本題に追加して伝えたいことがある場合に文末に使う言葉です。
主にプライベートなやり取りで使われることが多い言葉ですが、マナーを遵守した上で使うことができれば普段とは一味違ったビジネスメールを作ることもできるでしょう。この記事では「追伸」の意味やビジネスシーンでの使い方について解説をしています。
詳しくは後述していますが、ビジネスシーンのコミュニケーションで「追伸」を使ってしまうと、相手によっては失礼な印象を抱いてしまう可能性があります。ビジネス上の関わりがある方に「追伸」を使う場合は、この記事で解説している注意点をよく読んでから記載するようにしましょう。
目次
「追伸」とは
「追伸」はメールや手紙の中で、本題とは関係がない話題について言及する際に文末に記載する言葉です。子供の頃に、親しい友人との手紙交換などで使ったことがある方が多いかもしれません。
文章の作成終了後に記載したい内容を思いついた場合は「追伸」を使うことで、文章全体の構成を考え直さずにその内容を記載することができます。「追伸」は英語文化でも使われており「Post Script」を省略した「P.S.」や「ps」などで表記されています。日本語も英語も「本文に書き添えるまでもない内容」を記載する際に記載するのが、本来の使い方です。
相手との関係性にもよりますが「追伸」を使って記載してもマナー違反にならない文章は、
以下のようなものがあります。
- 食事の誘いに関する文章
- 自身や相手の変化についての文章
- 相手の体調を気遣う文章
文章のコミュニケーションだからこそ、誤解を与えないように相手との距離感を考えて「追伸」を使いましょう。
「追伸」を使った例文
実際にメールで「追伸」を使った例文をケース別にご紹介します。
同窓会のお誘い
同窓会の開催時に送信するメールで「追伸」を使った例文です。
件名
同窓会のお誘い
本文
ご無沙汰しております。
〇〇中学校、3年A組でクラスメイトだった佐藤です。
この度、久しぶりに同窓会を開くこととなりましたので、お誘いのメールです。
開催日:
会場:
会費:
お忙しい中とは思いますが、◯月◯日までに本メールの返信にて参加・不参加のご連絡をお願いいたします。
追伸:先日〇〇君と食事をした際に、高橋さんの活躍をお聞きしました。ぜひ同窓会ではお話を聞かせてください。
例文のように、本題とは関係がない内容を記載する時のように使うのが「追伸」の記載です。
本題である同窓会の出席に関する情報に加えて、受信者とのプライベートな内容を追伸として記載しています。
出欠の連絡に加えてこのような追伸があることで、文章に暖かみが感じられるようになり、受信者との円滑なコミュニケーションに役立つでしょう。
暑中見舞い
ビジネスなどでも送付されることがある時候の挨拶で「追伸」を使った例文です。
件名
暑中見舞い
本文
〇〇様
梅雨も明け、夏の厳しい日差しが感じられる時間が長くなって参りましたが、〇〇先生におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
先生にご紹介いただいた職場も、早いものでもう勤続して3年が過ぎました。
ついていくのがやっとだった1年目の頃と比較し、少しずつではありますが、仕事を任せていただけるようになりました。
まだまだ暑い日が続くかと思いますが、〇〇先生におかれましてはご自愛の程、お祈り申し上げます。
追伸:今年の正月は1年ぶりに帰省をする予定です。お忙しい中とは存じますが、妻と共にご挨拶に伺えますと幸いです。
お世話になっていた先生への暑中見舞いに追伸を使った例文です。
例文では、時候の挨拶を定期的に行う先生へのメールを想定しているため、比較的フランクな文体になっています。
フォーマルな言葉が並びやすい時候の挨拶でも、敬語・謙譲語の使い方や追伸の内容を工夫することで、親近感を感じられる文章を作ることができるでしょう。
「追伸」を使う際の注意点
冒頭でも解説したように「追伸」は、TPOを考慮した上で使用しなければなりません。
手紙やメールに「追伸」を記載する際の注意点を解説します。
重要なことは記載しない
追伸はあくまでも「本文に書くまでもない内容」を記載するためのものです。
このルールを守らないと、メインとなるテーマが分かりづらくなるだけでなく、相手に失礼な印象を与えてしまう可能性もあります。
以下の例文は、追伸の誤用です。
件名
同窓会のお誘い
本文
ご無沙汰しております。
〇〇中学校、3年A組でクラスメイトだった佐藤です。
この度、久しぶりに同窓会を開くこととなりましたので、お誘いのメールです
お忙しい中とは思いますが、◯月◯日までに本メールの返信にて参加・不参加のご連絡をお願いいたします。
追伸:開催の日程は以下の通りです。
開催日:
会場:
会費:
上記メールでは、開催の日程を追伸に記載していることで、日程を記載していないにも関わらずメールの返信を催促するような文章構成になってしまっています。
重要な内容は追伸には記載してはいけません。
手紙で重要な連絡を追加する際は本文を書き直し、メールの場合は文章を練り直すか、新しくメールを作成しましょう。
感謝や謝罪を記載しない
あくまで本題とは関係がない内容を記載する追伸では、相手への感謝や謝罪は記載してはいけません。
いくら本心で気持ちを伝えようと思っていても、追伸に感謝や謝罪の言葉を記載してしまうと相手から受ける印象はよくありません。
自分の思いを伝えなければならない文章では、追伸を使うことは避けましょう。
基本的に目上の方には使わない
例文にあるような距離感が近い方は例外ですが、目上の方には追伸を使用しないのがマナーです。
追伸は新しく文章を作り直すよりも手軽に内容を追加することができる一方で、手間を簡略化しているため礼節にかけている印象を与えるリスクがあるためです。
そのため、基本的には友人・家族や、お互いのことをよく知っている方にのみ使うようにしましょう。
ただし、内容によっては目上の方やお客様にも、追伸を使った文章が受け入れられることもあります。
件名
会計サービス〇〇のご案内
本文
株式会社〇〇 経理部 佐藤様
突然のご連絡、大変申し訳ございません。
〇〇株式会社 営業部 高橋〇〇と申します。
先日、御社主催のセミナーに参加させていただき佐藤様のお話を拝聴する中で、弊社のサービスがお役に立てる場面があるのではないかと思い連絡を差し上げました。
本メールにて資料を添付いたしました「(商品名)」は、以下のような機能を提供しているサービスになります。
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添付資料には、各機能の詳細や料金体系について記載しておりますので、ぜひお目通しいただけますと幸いです。
ご質問等がございましたら、メールかお電話にて承っておりますので、お気軽にお問合せください。
追伸:セミナーで佐藤様の出生についてのお話がありましたが、偶然ながら私も〇〇市の出身です。突然のご連絡をしている身で恐縮ですが、お近づきになれましたら幸いです。
(署名)
上記の例文は、初めてコミュニケーションをとる相手に向けたメールですが、主題とは別に追伸があることで、ひととなりが分かるようなメールに仕上がっています。
目上の方に追伸を使用する場合の具体的な条件を設定するのは難しいですが、以下の点は意識しておきましょう。
- 重要な連絡事項ではない
- 相手も関係する内容である
- 冗長的な文章になっていない
ビジネスメールで「追伸」は使える?
ビジネスシーンで「追伸」を使うことはマナー違反になるのでしょうか。結論から述べると、ビジネスメールの中に「追伸」を使うのは避けた方が良いでしょう。理由はこれまでに解説してきたものに加えて、プライベートのメール以上にビジネスメールで冗長的な文章は受け入れられづらいからです。
業務時間内に目を通すメールは、できるだけ簡潔に分かりやすく文章を記載するのが基本的なマナーです。そのため、相手に主題とは違う情報を伝える「追伸」を使う必要性は希薄になります。
また「追伸」はプライベートなコミュニケーションでも使われていることから、相手にフランクな印象を与えてしまう可能性があることも覚えておきましょう。ビジネスシーンでも先述した例文のように、「追伸」を使用することで親しみやすい文章を作成し、相手に好印象を与えられることもありますが、例外的なケースと言えます。
上記のような理由から、基本的にはビジネスメールでは「追伸」は使わずに文章を構成することをオススメします。
「追伸」の言い換え表現
追伸の言い換え言葉として使われているのが「末筆ながら」や「最後になりますが」という言葉です。
追伸よりもビジネスのシーンで使われる頻度が多く、メールだけでなくフォーマルな場でのスピーチなどでも使用されています。
件名
暑中見舞い申し上げます
本文
株式会社〇〇 営業部 佐藤様
平素は格別のお引き立てにあずかり、誠に感謝申し上げます。
連日の残暑ではございますが、佐藤様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
また、先日のイベント開催に際し、佐藤様はじめ株式会社〇〇の皆様のご協力を改めて御礼申し上げます。
12月には例年の「(イベント名)」の開催を予定しております。
ご協力くださる社員様の選考等はあるかと存じますが、また佐藤様と業務にあたれることを心よりお祈りしております。
末筆ながら、皆様のご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
(署名)
「末筆ながら」は追伸と同様にメールや手紙の最後に、言葉を添えたい時に使われます。追伸と同様に「末筆ながら」も本文とは直接関係ない内容を記載しても、日本語的な間違いはありません。
しかし、基本的には「末筆ながら」の後に繋げる言葉は大体決まっており、本文と関係ない内容を記載するケースは多くはありません。「末筆ながら」からはじまるフレーズは、追伸の例文としてご紹介したようなプライベートな内容を記載するのではなく、相手の健康や幸せを祈る言葉が使われます。
- 末筆ながら、くれぐれもお体をお労りください。
- 末筆ながら、〇〇様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
- 最後にはなりますが、お二人のこれからの前途を心よりお祈りし、私からのお祝いの言葉といたします。
また、追伸は本題と関係のない話題について記載する時に使う言葉ですが「末筆ながら」は、コミュニケーションをまとめる際に使われています。
追伸を書く正しい「位置」はどこ?署名の前か後か
ビジネスメールにおいて、「追伸」を挿入する場所に絶対的な決まりはありませんが、相手への配慮と視認性を考慮した「マナーとしての正解」は存在します。
多くの人が迷う「署名(会社名や連絡先などのフッター情報)」の前に入れるべきか、後ろに入れるべきかについて解説します。
基本は「署名」の直前に入れる
ビジネスメールにおいては、「結びの挨拶」の後、かつ「署名」の直前に配置するのが基本マナーです。具体的な構成としては以下の流れが最も自然で、読み落とされにくい配置となります。
- 本文(用件)
- 結びの挨拶(よろしくお願いいたします。)
- 追伸(P.S. 〇〇の件ですが〜)
- 署名(---------------- 株式会社〇〇など)
メールにおける署名は手紙でいう「封筒の閉じ目」や「終了線」のような役割を果たします。そのため、署名より下に重要な情報を書いてしまうと、相手が「ここでメールは終わりだ」と判断してスクロールを止めてしまい追伸に気づかないリスクが高まります。
確実に読んでもらうためにも、署名という「区切り線」の内側に収めるのが鉄則です。
親しい間柄なら署名の後でもOK?
手紙文化においては署名(名前)のあとに追伸(P.S.)を書くのが正式な手順でした。その名残から、親しい間柄や個人的なメールであれば、署名の後に追伸を書いてもマナー違反とまでは言えません。しかし、電子メールの仕様上、署名部分はグレー文字で表示されたり、メーラーの設定で自動的に折り畳まれたりすることがあります。
ビジネスシーン、特に重要な連絡においてはリスクを避けるためにも署名の前に配置することをおすすめします。
実は一番読まれる?「追伸」のマーケティング効果
「追伸」は単なる書き忘れの補足やおまけではありません。実は心理学的にもマーケティング的にも、本文以上に読まれやすいという強力な効果を持っています。ダイレクトレスポンスマーケティングの世界では、「ヘッドライン(件名)の次に読まれるのは追伸である」と言われるほどです。
「P.S.効果」でクリック率を高めるテクニック
人は長い文章の塊(本文)を見ると無意識に流し読みをしてしまいますが、文章の最後にある短いメッセージ(追伸)には、「何が書いてあるんだろう?」と自然に目が留まる習性があります。これを活かし、ビジネスメールでも戦略的に追伸を使うことで相手の行動を促すことができます。
- 本文: 論理的に用件を伝える(硬めの内容)。
- 追伸: 個人的な感情や、相手への人間味のあるメッセージを伝える(柔らかい内容)。
このように役割を分けることで、事務的なメールに「温かみ」が生まれ、相手との心理的な距離を縮めることができます。
セミナー案内やキャンペーンの「最後の一押し」に使う
営業メールやメルマガにおいては、最もクリックさせたいURLをあえて追伸に配置するテクニックが有効です。本文中で商品の魅力を説明しきった後、最後のダメ押しとして以下のような使い方ができます。
- 行数: 2行〜3行程度に収める。
- 内容: 1つのトピックに絞る。
- 改行: 適度に空白行を入れる。
もし伝えたいことが長文になってしまう場合は無理に追伸に押し込まず、本文に項目を設けるか、あるいは別のメールとして件名を改めて送る方が親切です。
SlackやChatworkで「追伸」は必要?
Slack、Chatwork、Teamsなどのビジネスチャットツールにおいては基本的に「追伸」という形式を使う必要はありません。
チャットツールは「会話」に近いスピード感が重視されるため、書き忘れたことがあればすぐに新しいメッセージとして送信すれば良いからです。また、多くのツールには「送信後の編集機能」がついているため、前のメッセージを修正することも可能です。
チャットで「P.S.」と改まって書くと、かえって堅苦しく、ツールの特性に合わない印象を与えてしまいます。ツールに合わせて以下のように使い分けましょう。
まとめ
「追伸」とは、手紙やメールのような文語でのコミュニケーションで、本題とは関係のない内容を追記する際に使われている言葉です。手書きの媒体では、追伸を使うことで文章を消さずに内容を追加することができます。
しかし、メールを使ったビジネスに関するコミュニケーションをする際は、そもそも本題からそれた内容を記載するべきではないので、基本的には「追伸」は使われません。仲の良い友人や家族に対しての使用は問題ありませんが、ビジネスシーンや目上の方とのコミュニケーションでは、追伸を使わずに伝えたい言葉を表現しましょう。
「追伸」の言い換えとして「末筆ながら」がありますが、こちらはフォーマルな場で使用してもマナー違反には当たりません。ただし「末筆ながら」は、その後に続くフレーズがある程度決まっており、相手の健康や幸せを祈り文章をまとめることが入るケースが殆どです。
「追伸」に限らず、フォーマルな場で使われる日本語の中には、TPOや用法を考慮せずに使ってしまうと、自身が意図していないニュアンスで伝わってしまうものがあります。以下のURLからは、正しいビジネス用語の使い方を解説した「ビジネスメール例文集」を無料でダウンロードしていただくことができます。
ビジネスメールのマナーを遵守し、正しい言葉遣いや表現を心がけて相手とのコミュニケーションを取りましょう。

